外国人を初めて雇用する企業にとって、在留資格の確認、雇用契約、届出手続きなど、やるべきことが多く戸惑うことが少なくありません。手続きの漏れや確認不足は、企業自身が不法就労助長罪に問われるリスクにもつながります。この記事では、外国人雇用に必要な手続きを採用前の確認事項から雇用後の届出まで、時系列に沿って網羅的に解説します。2026年時点の最新制度に基づき、実務で注意すべきポイントを押さえてください。
目次
外国人雇用の全体像と手続きの流れ
外国人を雇用する際の手続きは、大きく分けて「採用前の確認」「在留資格の手続き」「雇用契約の締結」「届出手続き」「雇用後の管理」の五つのフェーズに分かれます。全体の流れを把握してから個別の手続きに入ることで、漏れや遅れを防ぐことができます。
| フェーズ | 主な手続き | 担当窓口 |
|---|---|---|
| 1. 採用前の確認 | 在留カードの確認、在留資格と業務内容の適合性確認 | 企業(人事担当) |
| 2. 在留資格の手続き | 在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、就労資格証明書の取得 | 出入国在留管理庁 |
| 3. 雇用契約の締結 | 労働条件通知書の交付、雇用契約書の締結 | 企業(人事担当) |
| 4. 届出手続き | 外国人雇用状況届出、社会保険・雇用保険の手続き | ハローワーク、年金事務所、健康保険組合 |
| 5. 雇用後の管理 | 在留期間の更新管理、所属機関の届出 | 企業(人事担当)、出入国在留管理庁 |
それぞれのフェーズを順番に見ていきましょう。
採用前に確認すべき三つのポイント
外国人の採用を検討する段階で、必ず確認しなければならないのは「在留カード」「在留資格と業務内容の適合性」「在留期間の残り」の三つです。この確認を怠ると、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
在留カードの確認方法
まず、採用候補者の在留カードが有効であることを確認します。在留カードは、中長期在留者に対して交付される身分証明書で、顔写真、氏名、在留資格、在留期間、就労制限の有無などが記載されています。
確認時のチェックポイントは以下のとおりです。
- 在留カードの表面に記載された在留資格を確認する
- 在留期間の満了日を確認し、期限が切れていないことを確かめる
- 「就労制限の有無」欄を確認する(「就労制限なし」「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」など)
- 裏面の「資格外活動許可」欄を確認する(留学生のアルバイトなどの場合)
- 在留カードの偽造を防ぐため、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」で有効性を確認する
在留カードの原本を確認することが重要です。コピーだけでは偽造の判別が困難です。また、出入国在留管理庁のウェブサイトで在留カード番号の有効性をオンラインで確認できますので、必ず活用してください。
在留資格と業務内容の適合性
外国人が日本で働くためには、従事する業務内容に合った在留資格を持っている必要があります。在留資格の種類によって認められる活動範囲が異なるため、採用しようとする職種・業務内容がその在留資格で許可されている活動に該当するかどうかを確認しなければなりません。
| 在留資格 | 認められる業務の例 | 認められない業務の例 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | ITエンジニア、経理、翻訳・通訳、マーケティング | 工場の単純作業、飲食店のホール、清掃 |
| 特定技能1号 | 指定された16分野での現場業務 | 指定分野以外の業務 |
| 技能 | 外国料理の調理師、宝石加工、パイロット | 事務職、営業職 |
| 留学(資格外活動許可あり) | 週28時間以内のアルバイト | 週28時間超の就労、風俗営業 |
| 永住者・日本人の配偶者等 | 就労制限なし(あらゆる業務に従事可能) | なし |
在留資格と業務内容が合っていない場合は、在留資格の変更許可申請が必要です。変更が認められなければ、その外国人をその業務で雇用することはできません。
在留期間の残りと更新のタイミング
在留期間の残りが少ない場合は、採用後すぐに在留期間更新許可申請が必要になる可能性があります。在留期間の更新申請は、在留期間の満了日の三か月前から可能です。雇用開始日と在留期間満了日の関係を考慮して、採用スケジュールを組みましょう。
在留期間が満了してしまうと不法滞在となり、当然ながら就労もできなくなります。企業としても、在留期間の管理は重要な責任です。
在留資格に関する手続き
採用する外国人の状況に応じて、必要な在留資格の手続きが異なります。主なパターンを整理します。
海外から新たに外国人を呼び寄せる場合
海外に住んでいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。これは企業が代理人として出入国在留管理庁に申請し、認定証明書が交付されたら、外国人本人がそれを持って在外日本大使館・領事館でビザ(査証)を申請するという流れです。
- 企業が必要書類を準備し、管轄の出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請を行う
- 審査(通常一〜三か月程度)を経て、在留資格認定証明書が交付される
- 認定証明書を外国人本人に送付する
- 外国人本人が在外日本大使館・領事館でビザを申請・取得する
- 外国人が日本に入国し、空港で在留カードを受け取る
認定証明書の有効期限は交付日から三か月間です。この期間内に入国しなければ失効しますので、スケジュール管理に注意してください。
すでに日本にいる外国人を雇用する場合(在留資格の変更)
日本国内にいる外国人が、現在の在留資格とは異なる活動を行うために就職する場合は、「在留資格変更許可申請」が必要です。典型的なのは、留学生が卒業後に就職するケースです。
留学生の場合は「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格への変更が一般的です。変更許可が下りるまでの間は、原則として新しい在留資格での活動はできません。
転職者を雇用する場合(就労資格証明書)
すでに就労系の在留資格を持っている外国人が転職する場合、在留資格の変更は不要なことが多いですが、新しい業務内容が現在の在留資格の範囲内であるかを確認する必要があります。
この確認のために、「就労資格証明書」の交付申請を行うことをおすすめします。就労資格証明書は、その外国人が新しい勤務先で行う業務が在留資格の範囲内であることを入管が証明するもので、取得は任意ですが、次回の在留期間更新時にスムーズに審査が進むメリットがあります。
雇用契約と労働条件の注意点
外国人労働者との雇用契約においては、日本人を雇用する場合と基本的に同じ労働法規が適用されます。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などは、国籍にかかわらずすべての労働者に適用されます。
労働条件通知書の交付
労働基準法第十五条に基づき、労働条件の明示が義務付けられています。外国人労働者に対しては、労働条件通知書を母国語または本人が理解できる言語で作成することが望ましいとされています。厚生労働省は、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語などの多言語の労働条件通知書のモデル様式を公開しています。
労働条件通知書に記載すべき主な項目は以下のとおりです。
- 労働契約の期間
- 就業の場所と従事すべき業務の内容
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
- 社会保険の加入状況
同一労働同一賃金の原則
外国人であることを理由に、日本人より低い賃金を設定することは違法です。労働基準法第三条は、国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁止しています。在留資格の審査においても、日本人と同等以上の報酬が支払われることが許可の条件とされています。
届出手続き(外国人雇用状況届出・社会保険等)
外国人を雇い入れた場合、企業にはいくつかの届出義務があります。届出を怠ると罰則が適用される場合がありますので、確実に行いましょう。
外国人雇用状況届出
すべての事業主は、外国人労働者の雇入れ・離職時に、ハローワークへの届出が義務付けられています(雇用対策法第二十八条)。届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合は、三十万円以下の罰金が科される可能性があります。
| 届出の種類 | 届出先 | 届出期限 | 届出方法 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者となる場合 | 管轄のハローワーク | 雇入れ:翌月10日まで、離職:翌日から起算して10日以内 | 雇用保険の資格取得届・喪失届に外国人情報を記載 |
| 雇用保険の被保険者とならない場合 | 管轄のハローワーク | 雇入れ・離職ともに翌月末日まで | 「外国人雇用状況届出書」を提出 |
届出には、外国人の氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、在留カード番号などの情報が必要です。在留カードの情報を正確に転記してください。
社会保険・雇用保険の手続き
外国人労働者も、日本人と同様に社会保険(健康保険・厚生年金保険)および雇用保険への加入義務があります。加入要件を満たす場合は、国籍にかかわらず加入させなければなりません。
- 健康保険・厚生年金保険:常時使用される従業員(週の所定労働時間が正社員の四分の三以上など)が対象
- 雇用保険:週の所定労働時間が二十時間以上で、三十一日以上の雇用見込みがある場合に加入
- 労災保険:雇用形態にかかわらず、すべての労働者が対象
所属機関に関する届出
就労系の在留資格を持つ外国人が転職した場合、外国人本人が出入国在留管理庁に「所属(契約)機関に関する届出」を行う義務があります(入管法第十九条の十六)。届出期限は事由が生じた日から十四日以内です。
これは外国人本人の義務ですが、企業側としても本人に届出の必要性を伝え、手続きをサポートすることが望ましいです。届出を怠った場合、次回の在留期間更新に悪影響を及ぼす可能性があります。
雇用後の管理と企業の責任
外国人を雇用した後も、企業には継続的な管理義務があります。特に重要なのは、在留期間の更新管理と就労内容の適正管理です。
在留期間の更新管理
在留期間には満了日があり、更新手続きを怠ると不法滞在(オーバーステイ)となります。企業としても在留期間の満了日を把握し、更新時期が近づいたら本人に通知する体制を整えましょう。
- 在留期間の満了日を従業員管理システムに登録し、三か月前にアラートが出るようにする
- 在留期間更新許可申請に必要な企業側の書類(在職証明書、課税証明書など)を速やかに準備する
- 更新申請中は「特例期間」として在留期間満了日から二か月間は適法に在留できるが、速やかに申請することが重要
就労内容の変更に注意
雇用後に配置転換や業務内容の変更を行う場合は、変更後の業務が在留資格の範囲内であるかを確認する必要があります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で翻訳業務に従事していた外国人を、工場のライン作業に異動させることは在留資格の範囲外となり、不法就労に該当します。
退職時の手続き
外国人が退職する場合も、ハローワークへの外国人雇用状況届出(離職の届出)が必要です。また、退職後に外国人が帰国する場合は、厚生年金の脱退一時金の制度があることを伝えてあげるとよいでしょう。
退職後に在留資格が「就労」系のまま三か月以上正当な理由なく活動を行わない場合は、在留資格の取消事由に該当する可能性があります。企業の責任ではありませんが、退職する外国人に対して今後の在留資格について助言することは、円満な雇用関係の終了に資するものです。
知らずに法律違反しないための注意点
外国人雇用に関連して企業が知らずに犯しやすい法律違反を整理します。
| 違反内容 | 関連法規 | 罰則 |
|---|---|---|
| 在留資格の確認を怠り、就労が認められない外国人を雇用した | 入管法第七十三条の二(不法就労助長罪) | 三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金、またはその両方 |
| 外国人雇用状況届出を怠った | 雇用対策法第四十条 | 三十万円以下の罰金 |
| 外国人であることを理由に賃金を差別した | 労働基準法第三条 | 六か月以下の懲役または三十万円以下の罰金 |
| 社会保険に加入させなかった | 健康保険法、厚生年金保険法 | 六か月以下の懲役または五十万円以下の罰金 |
| 資格外活動の範囲を超えて留学生を働かせた | 入管法第七十三条の二(不法就労助長罪) | 三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金、またはその両方 |
特に注意が必要なのは不法就労助長罪です。「知らなかった」では済まされず、在留カードの確認を怠っただけでも「過失」として処罰される可能性があります。2026年の入管法改正を受け、不法就労助長罪の適用は厳格化の傾向にあります。
(外国人雇用の手続きは、初めてだと複雑に感じるかもしれません。しかし、一つひとつのステップは明確です。不安がある場合は、行政書士などの専門家にご相談いただくことで、法令遵守を確保しながらスムーズに採用を進めることができます。当事務所「在留資格センター」でも、外国人雇用に関する各種手続きの代行・サポートを行っています)
