外国人労働者の雇用にあたっては、活用できる助成金や補助金が複数あります。ただし、「外国人だから」という理由で支給される助成金は基本的に存在せず、雇用管理の改善や人材育成といった目的に沿った制度を外国人雇用にも適用する形になります。この記事では、2026年時点で外国人雇用に関連して活用できる主な助成金・補助金を一覧で整理し、対象条件、金額、申請方法をわかりやすく解説します。
目次
外国人雇用で活用できる助成金の全体像
外国人を雇用する企業が活用できる助成金は、主に厚生労働省が所管する雇用関連助成金です。「外国人専用」の助成金は原則としてありませんが、外国人労働者も日本人と同じく労働者として助成金の対象に含まれます。
外国人雇用に関連して特に活用しやすい助成金の主な分類は以下のとおりです。
| 分類 | 主な助成金 | 外国人雇用との関連 |
|---|---|---|
| 雇用管理の改善 | 人材確保等支援助成金 | 外国人労働者の雇用管理改善に取り組む事業主が対象 |
| 人材育成・研修 | 人材開発支援助成金 | 外国人労働者への日本語研修や技能研修に活用可能 |
| キャリアアップ | キャリアアップ助成金 | 有期雇用の外国人を正社員化する場合に活用可能 |
| 特定求職者の雇用 | 特定求職者雇用開発助成金 | ハローワーク経由で外国人を雇用した場合に一部対象 |
| トライアル雇用 | トライアル雇用助成金 | 外国人を試行的に雇用する場合に活用可能 |
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人雇用に最も直接的に関連する助成金が、人材確保等支援助成金の「外国人労働者就労環境整備助成コース」です。外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行う事業主に対して、費用の一部を助成する制度です。
対象となる取組み
以下のうち、必須の取組みに加え、いずれか一つ以上の選択的取組みを実施する必要があります。
【必須の取組み】
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則等の社内規程の多言語化
【選択的取組み(一つ以上を選択)】
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国のための休暇制度の整備
- 社内マニュアル・標識類等の多言語化
助成金額
| 区分 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 賃金要件を満たす場合 | 支給対象経費の3分の2 | 72万円 |
| 賃金要件を満たさない場合 | 支給対象経費の2分の1 | 57万円 |
賃金要件とは、対象となる外国人労働者の賃金を、計画期間中に一定以上引き上げることを指します。
申請の流れ
- 外国人労働者就労環境整備計画を作成し、管轄の都道府県労働局に提出する
- 計画の認定を受ける
- 計画に基づき取組みを実施する(計画期間は一年間)
- 計画期間終了後、支給申請書類を提出する
- 審査を経て助成金が支給される
計画の提出は取組みを開始する前に行う必要があります。取組みを開始した後に計画を提出しても受理されませんので、必ず事前に申請してください。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、従業員に対して職業訓練を実施する事業主に助成金を支給する制度です。外国人労働者への日本語研修や技能研修にも活用できます。
外国人雇用で特に活用しやすいコース
| コース名 | 内容 | 外国人雇用への活用 |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース | 職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練に対する助成 | 外国人労働者へのOJT・OFF-JT研修に活用 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 事業展開に伴い必要な新たな知識・技能を習得させるための訓練に対する助成 | 外国人労働者の新規業務への配置転換時に活用 |
助成金額の目安
- OFF-JT(座学等の研修):経費助成として対象経費の30〜75%(企業規模や訓練内容により異なる)
- OFF-JT中の賃金助成:一人一時間あたり760円(中小企業の場合)
- OJT(実地訓練):一人一時間あたり665円(中小企業の場合)
外国人労働者向けの日本語研修は、業務に必要な日本語能力の向上を目的とした研修であれば、職業訓練として助成対象になり得ます。ただし、一般的な日本語学校への通学費用は対象外となる場合があるため、事前に管轄の労働局に確認することをおすすめします。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期雇用労働者を正社員に転換した場合に支給される助成金です。外国人労働者も対象となります。
対象要件
- 有期雇用労働者(契約社員、パート等)を正規雇用労働者(正社員)に転換すること
- 転換後六か月以上継続して雇用し、転換後の賃金が転換前より三パーセント以上増額していること
- キャリアアップ計画を事前に作成し、管轄の労働局に提出していること
助成金額
| 転換パターン | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 有期雇用→正規雇用 | 80万円(40万円×2期) | 60万円(30万円×2期) |
さらに、特定の加算要件を満たす場合は金額が加算されます。たとえば、派遣労働者を直接雇用に転換した場合は追加の加算が受けられます。
外国人雇用における注意点
外国人労働者に正社員化コースを適用する場合、在留資格との関係に注意が必要です。
- 有期雇用から正社員への転換に伴い、業務内容が変わる場合は在留資格の変更が必要になることがある
- 在留期間が短い場合、正社員化しても在留期間更新が認められなければ継続雇用ができない
- 特定技能の在留資格の場合、雇用契約の変更にあたり入管への届出が必要
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験や技能等の面で安定的な就職が困難な求職者を試行的に雇用する事業主に対して支給されます。ハローワークの紹介を受けて雇用することが条件です。
対象要件と金額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | ハローワークの紹介により雇い入れた求職者で、トライアル雇用の対象者要件を満たす方 |
| トライアル期間 | 原則三か月 |
| 助成金額 | 一人あたり月額最大四万円(最大三か月で十二万円) |
| 届出期限 | トライアル雇用開始日から二週間以内に実施計画書を提出 |
外国人もハローワークに求職登録している場合は対象になり得ますが、在留資格上就労が認められている必要があります。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者、母子家庭の母等の就職が特に困難な方を雇用する事業主に対して支給される助成金です。外国人が直接的な対象類型として挙げられているわけではありませんが、他の要件に該当する外国人であれば対象になります。
たとえば、外国人で六十歳以上の高年齢者、あるいは障害を持つ外国人をハローワークの紹介で雇用する場合は、この助成金の対象となり得ます。
助成金申請の一般的な注意点
助成金の申請にあたっては、以下の点に注意してください。
共通する注意事項
- 計画の事前提出が必要:ほとんどの助成金は、取組みを開始する前に計画書を提出し、認定を受ける必要がある
- 不正受給は厳しく処罰される:不正受給が発覚した場合、助成金の返還に加え、事業所名の公表や刑事告発の対象になる
- 労働関係法令を遵守していることが前提:社会保険の未加入、残業代の未払い、最低賃金の違反などがあると助成金は受給できない
- 申請期限を厳守する:支給申請には厳格な期限があり、一日でも過ぎると受理されない
- 書類の保管期間:支給決定日から五年間は関連書類を保管する義務がある
外国人雇用特有の注意点
- 在留資格の適法性:助成金の対象となる外国人は、適法な在留資格を持って就労している必要がある。不法就労者を雇用している企業は助成金を受給できない
- 在留期間との関係:助成金の支給対象期間中に在留期間が満了する場合、更新が認められなければ助成金が満額受給できない可能性がある
- 技能実習生への適用:技能実習生は労働者であるが、技能実習制度独自の規制があるため、助成金の対象となるかどうかは個別に確認が必要
助成金以外の支援制度
助成金のほかにも、外国人雇用を支援する制度があります。
外国人雇用管理アドバイザー制度
ハローワークでは、外国人雇用管理アドバイザーによる無料の相談サービスを提供しています。外国人の雇用管理に関する悩みや助成金の活用方法について、専門家のアドバイスを受けることができます。
自治体独自の補助金・支援制度
都道府県や市区町村が独自に外国人雇用に関する補助金や支援制度を設けている場合があります。多文化共生の推進や地域の人手不足対策として、外国人の日本語研修費用の補助、住居確保の支援、通訳サービスの提供などが行われています。自治体の窓口やウェブサイトで確認してください。
(助成金の制度は毎年のように内容が改訂されます。申請を検討される際は、最新の要件を管轄の労働局やハローワークに確認されることをおすすめします。当事務所「在留資格センター」では、在留資格の手続きと併せて、助成金の活用に関するアドバイスも行っています)
