日本の人手不足は、特定の業界において企業の存続を脅かすほど深刻な問題になっています。帝国データバンクの調査によると、人手不足を原因とする倒産件数は年々増加しており、2025年には過去最多を更新しました。「人が採れないから事業を続けられない」という事態は、もはや他人事ではありません。この記事では、人手不足が特に深刻な業界をランキング形式で整理し、各業界の状況を解説した上で、外国人材の活用による具体的な解決策と、倒産リスクを回避するための採用戦略を提示します。
目次
人手不足が深刻な業界ランキング
以下は、有効求人倍率や人手不足割合(正社員が不足していると回答した企業の割合)をもとに、2025年時点で人手不足が特に深刻な業界をランキング形式で整理したものです。
| 順位 | 業界 | 正社員不足割合 | 有効求人倍率(目安) | 特定技能の対象 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 建設業 | 約70% | 約5〜6倍 | 対象 |
| 2位 | 運輸・物流業 | 約68% | 約3〜4倍 | 対象 |
| 3位 | 介護・福祉業 | 約67% | 約3.5〜4倍 | 対象 |
| 4位 | IT・情報サービス業 | 約65% | 約3〜5倍 | 非対象(技人国で対応) |
| 5位 | 飲食・宿泊業 | 約63% | 約3〜4倍 | 対象(外食・宿泊) |
| 6位 | 製造業 | 約58% | 約2〜3倍 | 対象(一部分野) |
| 7位 | 農業 | 約55% | 約2〜3倍 | 対象 |
| 8位 | 医療業 | 約53% | 約2〜4倍 | 一部対象 |
(上記の数値は、帝国データバンクの人手不足に関する企業の動向調査、厚生労働省の職業安定業務統計等を参考にした目安です。調査時期や対象によって数値は変動しますが、これらの業界が慢性的な人手不足に直面していることは各種データが一致して示しています)
各業界の人手不足の状況と背景
第1位:建設業
建設業は、日本で最も人手不足が深刻な業界の一つです。高齢化による熟練工の大量退職が進む一方、若年層の入職者が減少しています。建設業就業者の約35パーセントが55歳以上であり、29歳以下はわずか約12パーセントにとどまっています。さらに、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」が現実化し、従来のような長時間労働で人手不足を補う手法が使えなくなりました。
建設業では特定技能制度を活用した外国人材の受け入れが急速に拡大しており、特定技能1号(建設分野)の在留者数は2025年時点で約9万人に達しています。
第2位:運輸・物流業
運輸・物流業は、トラックドライバーの高齢化と長時間労働の常態化が人手不足の主因です。EC市場の拡大に伴い宅配便の取扱個数は年々増加していますが、ドライバーの数は減少しています。2024年問題(ドライバーの時間外労働の上限規制)の影響で、1人あたりの運べる荷物量が減少し、さらに多くのドライバーが必要になっています。
2024年からは特定技能の対象に自動車運送業が追加され、外国人ドライバーの受け入れが可能になりました。ただし、日本の運転免許の取得や交通ルールの習得が前提となるため、受け入れには一定の準備期間が必要です。
第3位:介護・福祉業
介護業界の人手不足は前述のとおり深刻であり、2040年には約69万人の介護職員が不足すると推計されています。特定技能、技能実習(育成就労)、EPA、在留資格「介護」の4つの制度を通じた外国人材の受け入れが進んでおり、特に特定技能の増加が著しい状況です。
第4位:IT・情報サービス業
IT人材の不足は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い年々深刻化しています。経済産業省の推計では、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足するとされています。IT分野は特定技能の対象外ですが、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)を通じた外国人エンジニアの採用が活発に行われています。
第5位:飲食・宿泊業
コロナ禍からのインバウンド需要の回復に伴い、飲食・宿泊業の人手不足が再び深刻化しています。コロナ禍で離職した人材が他業界に流出し、需要が回復しても人材が戻らないという構造的な問題を抱えています。特定技能(外食業・宿泊業)を活用した外国人材の受け入れが拡大しており、特にインバウンド対応では多言語を話せる外国人材の需要が高まっています。
第6位以降:製造業・農業・医療業
製造業では、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業を中心に特定技能の活用が進んでいます。農業は季節性が高く、繁忙期の人材確保に技能実習生や特定技能外国人が不可欠な存在になっています。医療業では、看護師・医師の不足に加え、看護助手や医療事務の人材不足も課題です。
人手不足倒産の現状と増加傾向
人手不足が原因で事業を継続できなくなり、倒産に至るケースが急増しています。
人手不足倒産の件数推移
帝国データバンクの調査によると、人手不足倒産の件数は2023年に260件、2024年には342件、2025年には過去最多を更新する見通しとなっています。業種別では建設業と運輸業が突出して多く、この2業種で全体の約半数を占めています。
| 年 | 人手不足倒産件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2021年 | 104件 | – |
| 2022年 | 140件 | +35% |
| 2023年 | 260件 | +86% |
| 2024年 | 342件 | +32% |
人手不足倒産のパターン
人手不足倒産には、主に以下の3つのパターンがあります。
- 求人難型:募集をかけても応募がなく、受注に対応できない。売上はあるが人手が足りず事業を回せない
- 従業員退職型:中核社員の退職をきっかけに事業が回らなくなる。後任の採用もできず、連鎖的に退職が発生
- 人件費高騰型:人材を確保するために賃金を引き上げた結果、人件費が利益を圧迫し経営が立ち行かなくなる
(人手不足倒産は、売上がゼロになって倒産するケースではなく、「仕事はあるのに人がいなくて回せない」という状態で倒産するケースが大半です。つまり、事業自体には需要があるにもかかわらず、人材が確保できないことが直接の原因となって経営が破綻するのです。これは非常にもったいない倒産であり、人材確保の手段を広げることで防げるケースも少なくありません)
外国人材の活用で人手不足を解決する方法
人手不足に直面する企業が外国人材を活用するための具体的な方法を解説します。
特定技能制度の活用
特定技能制度は、人手不足が深刻な分野で即戦力となる外国人材を受け入れるための制度です。2024年に対象分野が拡大され、現在は以下の16分野が対象となっています。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
特定技能1号の在留期間は通算5年であり、特定技能2号に移行すれば在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能となります。2023年に特定技能2号の対象が大幅に拡大され、介護を除くほぼすべての分野で2号への移行が可能になりました。
技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)の活用
IT人材、通訳・翻訳、マーケティング、経理、設計など、専門的な知識を必要とする業務には、技人国ビザでの外国人採用が適しています。大学卒業(または同等の実務経験)が要件であり、業務内容と学歴・職歴の関連性が審査されます。
育成就労制度(2027年施行予定)の活用
技能実習制度に代わる育成就労制度は、「人材育成と確保」を正面から目的に掲げた新制度です。3年間の育成期間を経て特定技能1号に移行することを想定しており、未経験の外国人を受け入れて育成するルートとして位置づけられています。
外国人材の採用チャネル
外国人材を採用する方法は複数あります。
| 採用チャネル | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 人材紹介会社(国内) | 日本在住の外国人を紹介。即入社が可能 | 年収の20〜35% |
| 海外の送出機関 | 海外から人材を送り出す。技能実習・特定技能で利用 | 送出手数料あり(国・機関による) |
| 求人サイト(外国人特化型) | 外国人向けの求人プラットフォーム | 掲載費用+成功報酬 |
| 大学・日本語学校との連携 | 留学生の新卒採用。技人国ビザでの採用 | 比較的低コスト |
| 自社のネットワーク | 既存の外国人社員からの紹介 | 低コスト |
外国人材活用で倒産リスクを回避するための実践ポイント
外国人材の活用を成功させ、倒産リスクを回避するためのポイントを解説します。
ポイント1:早めに動く
外国人材の採用は、日本人の採用以上に時間がかかります。海外から呼び寄せる場合は、人材の選定からビザの申請、入国までに3か月から6か月程度かかるのが一般的です。人手不足が限界に達してから動き始めるのでは遅いため、中長期的な視点で計画的に進める必要があります。
ポイント2:受け入れ体制を整える
外国人材を受け入れる前に、社内の受け入れ体制を整備することが不可欠です。具体的には、外国人向けのマニュアルの整備、指導担当者の選定、住居の確保、日本語教育の支援体制の構築などが含まれます。受け入れ体制が不十分な状態で外国人を採用すると、早期離職やトラブルの原因になります。
ポイント3:定着に力を入れる
採用することがゴールではなく、定着させることがゴールです。外国人材が長く働き続けられる環境を作るために、定期的な面談、キャリアパスの提示、日本語学習の支援、文化的な配慮を継続的に行います。
ポイント4:ビザ手続きは専門家に任せる
外国人を採用する際のビザ申請手続きは、入管法の専門知識が求められます。申請書類の不備や記載内容の誤りによって不許可となった場合、採用計画が大幅に遅れるリスクがあります。ビザ申請は申請取次行政書士に依頼し、確実に許可を得ることが重要です。
ポイント5:複数の制度を組み合わせる
特定技能、技人国ビザ、育成就労など、複数の制度を組み合わせて活用することで、短期的な人材確保と中長期的な人材育成の両方に対応できます。例えば、即戦力は特定技能で確保しつつ、育成就労で将来の戦力を育てるという戦略が有効です。
最後に
人手不足は、建設、運輸、介護、IT、飲食など幅広い業界で深刻化しており、人手不足を原因とする倒産件数は過去最多水準に達しています。国内の労働力人口が減少し続ける中、外国人材の活用は企業の存続に関わる重要な経営課題です。特定技能制度の対象分野の拡大や育成就労制度の創設など、外国人材を受け入れるための制度は年々整備されています。早めの計画と適切な受け入れ体制の構築、そして専門家による確実なビザ申請が、倒産リスクを回避する鍵です。
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