高度専門職とは、学歴・職歴・年収などをポイント制で評価し、一定以上のスコアを獲得した外国人に対して優遇措置を与える在留資格です。永住権の早期取得、配偶者の就労許可、親の帯同など、他の就労ビザでは得られないメリットが多く、高度な専門知識を持つ外国人材にとって最も有利な在留資格といえます。この記事では、高度専門職の要件・ポイント計算・類型の違い・申請手続き・永住権への最短ルートまで、実務に必要な情報を網羅的に解説します。
目次
高度専門職は高度な専門知識を持つ外国人に優遇措置を与える在留資格
高度専門職は、2012年に導入された「高度人材ポイント制」に基づく在留資格です。日本が国際競争力の強化を目的として、優秀な外国人材を積極的に受け入れるために創設されました。2015年には入管法の改正により正式な在留資格として位置づけられ、それ以降は申請件数が年々増加しています。
一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)との最大の違いは、ポイント制による客観的な評価と、合格者に対する入管法上の優遇措置にあります。学歴、職歴、年収、年齢、研究実績、日本語能力などの項目ごとにポイントが付与され、合計が70点以上であれば「高度人材」として認定されます。80点以上を獲得すると、さらに手厚い優遇(永住申請に必要な在留期間の短縮)が受けられるため、ポイントが高いほど有利です。
(「高度人材」と「高度専門職」は混同されやすいですが、厳密には「高度人材」はポイント制で評価される人材の総称、「高度専門職」は在留資格の名称です。実務上はほぼ同じ意味で使われています)
高度専門職の在留資格は、一般の就労ビザと比較して審査が優先的に処理される傾向があります。出入国在留管理庁も「高度人材の受入れを促進するため、出入国在留管理上の優遇措置を講じています」と明示しており、国として積極的に推進している制度です(出典 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」)。
高度専門職の最大のメリットは永住権の早期取得と幅広い活動許可
高度専門職が他の就労ビザと決定的に異なるのは、入管法上の優遇措置が法律で明確に保障されている点です。以下に主な優遇措置をまとめます。
| 優遇措置 | 内容 | 一般の就労ビザとの比較 |
|---|---|---|
| 複合的な在留活動の許可 | 本来の業務に加え、関連する事業の経営など複数の活動が可能 | 一般の就労ビザは許可された1つの活動のみ |
| 在留期間「5年」の付与 | 高度専門職1号は一律で5年の在留期間が付与される | 一般の就労ビザは審査状況により1年や3年になることも |
| 永住許可要件の緩和 | 70点以上で3年、80点以上で1年の在留実績で永住申請が可能 | 原則10年以上の在留が必要 |
| 配偶者の就労許可 | 配偶者が学歴・職歴の要件を満たさなくても就労活動が可能 | 家族滞在では原則就労不可(資格外活動許可で週28時間まで) |
| 親の帯同 | 一定条件の下、本国の親を日本に呼び寄せ可能 | 一般の就労ビザでは親の帯同は認められない |
| 家事使用人の帯同 | 一定条件の下、外国人の家事使用人を帯同可能 | 一般の就労ビザでは認められない |
| 入国・在留手続きの優先処理 | 申請の審査が優先的に処理される | 通常の審査順序で処理 |
実務上、最も大きなメリットは永住許可要件の緩和です。通常の就労ビザでは原則10年以上の在留が必要な永住権が、高度専門職なら最短1年で申請可能になります。また、配偶者が自由に就労できる点は、外国人本人だけでなく家族にとっても大きなメリットです。
(親の帯同が認められるのは高度専門職だけの特権です。「子どもが生まれたので母国の親に手伝いに来てもらいたい」という相談は非常に多いですが、一般の就労ビザではどうやっても実現できません。高度専門職であれば、世帯年収800万円以上などの条件を満たせば可能になります)
複合的な在留活動の許可も見逃せないメリットです。たとえば、高度専門職1号ロ(企業のエンジニア)として在留しながら、副業として関連分野のコンサルティング事業を経営するといった活動が可能になります。一般の就労ビザでは許可された一つの活動しかできないため、副業や兼業を希望する外国人にとって高度専門職は大きな魅力です。
高度専門職の要件はポイント制で七十点以上が必要
高度専門職の取得には、出入国在留管理庁が定めるポイント計算表に基づき、合計70点以上を獲得する必要があります。ポイントは「学歴」「職歴」「年収」「年齢」「ボーナス加点」の各項目で計算され、活動類型(1号イ・ロ・ハ)によって配点が若干異なります。
ポイント計算の主な項目と配点の目安
以下は、最も利用者の多い高度専門職1号ロ(自然科学・人文科学の知識を要する業務)の配点の目安です。
| 評価項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 学歴 | 博士号 | 30点 |
| 学歴 | 修士号(専門職学位を含む) | 20点 |
| 学歴 | 大学卒業(学士) | 10点 |
| 職歴 | 10年以上 | 20点 |
| 職歴 | 7年以上 | 15点 |
| 職歴 | 5年以上 | 10点 |
| 職歴 | 3年以上 | 5点 |
| 年収 | 1,000万円以上 | 40点 |
| 年収 | 900万円以上 | 35点 |
| 年収 | 800万円以上 | 30点 |
| 年収 | 700万円以上 | 25点 |
| 年収 | 600万円以上 | 20点 |
| 年収 | 500万円以上 | 15点 |
| 年収 | 400万円以上 | 10点 |
| 年齢 | 29歳以下 | 15点 |
| 年齢 | 30〜34歳 | 10点 |
| 年齢 | 35〜39歳 | 5点 |
| ボーナス | 日本語能力試験N1合格またはBJT480点以上 | 15点 |
| ボーナス | 日本語能力試験N2合格またはBJT400点以上 | 10点 |
| ボーナス | 日本の大学を卒業 | 10点 |
| ボーナス | イノベーション促進支援措置を受けている企業に就職 | 10点 |
(ポイント計算で意外と見落とされがちなのがボーナス加点です。日本語能力試験N1を持っているだけで15点、日本の大学を卒業していれば更に10点加算されます。学歴と年収だけでは70点に届かなくても、ボーナス加点を組み合わせることでクリアできるケースは実務上かなり多いです)
なお、年収には通勤手当、扶養手当、住宅手当などの実費弁償的な手当は含まれませんが、賞与は含まれます。年収300万円未満の場合は、ポイントの合計にかかわらず高度専門職の認定を受けることができません。
高度専門職には一号イ・一号ロ・一号ハ・二号の四類型がある
高度専門職は活動内容に応じて四つの類型に分かれます。自分がどの類型に該当するかによって、ポイント計算の配点基準や認められる活動範囲が異なります。
| 類型 | 対象となる活動 | 具体例 | 在留期間 |
|---|---|---|---|
| 1号イ | 高度学術研究活動 | 大学教授、研究者など | 5年 |
| 1号ロ | 高度専門・技術活動 | ITエンジニア、設計者、企業の専門職など | 5年 |
| 1号ハ | 高度経営・管理活動 | 企業の経営者、役員など | 5年 |
| 2号 | 1号の活動を3年以上行った者 | 1号で3年以上活動した高度人材 | 無期限 |
実務上、最も申請件数が多いのは1号ロ(高度専門・技術活動)です。IT企業のエンジニアやメーカーの技術者が「技術・人文知識・国際業務」から高度専門職1号ロに変更するパターンが典型的です。私が対応してきた案件でも、IT系の企業に勤務する外国人エンジニアが高度専門職1号ロを取得し、永住権への最短ルートを目指すケースが圧倒的に多い印象です。
1号ハ(高度経営・管理活動)は経営・管理ビザからの変更が中心ですが、年収要件が高いため申請数は1号ロと比べると少なめです。1号イ(高度学術研究活動)は大学や研究機関に所属する研究者が対象であり、一般企業ではあまり関係しません。
高度専門職2号は、1号で3年以上活動した実績がある場合に申請できる上位の在留資格です。2号になると在留期間が無期限になり、ほぼ全ての就労活動に従事できるようになります。永住権と似ていますが、あくまで在留資格の一つであり、永住者とは法的な位置づけが異なります。2号の大きな利点は、所属機関の指定がなくなるため、転職の際に在留資格変更の手続きが不要になることです。また、2号は在留期間が無期限であるため、更新手続き自体が不要という点でも利便性が高いといえます。
高度専門職1号は指定された所属機関(勤務先)での活動が前提です。転職すると在留資格の変更手続きが必要になるため、転職の自由度は一般の就労ビザよりも制約がある点に注意してください。
高度専門職の申請の流れと必要書類
高度専門職の申請は、大きく分けて「新規に高度専門職で入国する場合」と「他の在留資格から高度専門職に変更する場合」の二つのパターンがあります。
海外から新規入国する場合の流れは以下の通りです。
- ポイント計算表で70点以上に達するか確認する
- 在留資格認定証明書交付申請を入管に提出する
- 認定証明書が交付されたら本人に送付する
- 本人が現地の日本大使館・領事館でビザを申請する
- 入国後に在留カードを受け取る
国内で在留資格を変更する場合の流れは以下の通りです。
- ポイント計算表で70点以上に達するか確認する
- 在留資格変更許可申請を入管に提出する
- 許可後に新しい在留カードを受け取る
必要書類は類型によって若干異なりますが、共通して必要なものは以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- ポイント計算表(該当する類型のもの)
- ポイントを立証する資料(卒業証明書、職歴証明書、年収証明書、資格証明書など)
- 所属機関に関する資料(会社の登記事項証明書、決算書類など)
- 雇用契約書または採用内定通知書
- パスポートおよび在留カードの写し(変更申請の場合)
(ポイントの立証資料が不十分で審査が長引くケースは実務上非常に多いです。特に職歴証明書は、海外の前職から取得するのに時間がかかることがあるため、早めの準備をおすすめします。ポイント計算表に記載した点数を全て裏付ける資料が揃っていなければ、その項目のポイントは認められません)
審査期間の目安としては、認定申請(海外からの新規入国)で約1〜3か月、変更申請(国内での切替え)で約2週間〜1か月程度です。ただし、高度専門職は審査が優先処理されるため、一般の就労ビザよりも早く結果が出る傾向があります。認定申請の場合は在留資格認定証明書の有効期限(交付日から3か月)にも注意が必要です。交付後に入国手続きが遅れると証明書が失効するため、スケジュールに余裕を持って準備することが重要です。
高度専門職から永住権への最短ルートは八十点以上で在留一年
高度専門職の最大の魅力の一つが、永住許可申請の要件緩和です。通常、永住権を取得するには原則10年以上の在留実績が必要ですが、高度専門職であれば大幅に短縮されます。
| ポイント | 永住申請に必要な在留期間 | 通常の就労ビザとの比較 |
|---|---|---|
| 80点以上 | 1年 | 9年短縮 |
| 70点以上80点未満 | 3年 | 7年短縮 |
ここで重要なのは、永住申請時点でも70点または80点以上を維持している必要があるという点です。高度専門職を取得した時点で80点あっても、永住申請時に年齢が上がってポイントが下がり、80点を切っていれば「1年ルート」は使えません。
永住申請の流れは以下の通りです。
- 高度専門職としての在留期間が1年(80点以上)または3年(70点以上)を経過する
- 申請時点でのポイント計算表を作成し、基準を維持していることを確認する
- 永住許可申請書、ポイント計算表、身元保証書、課税証明書などを準備する
- 住所地を管轄する入管に永住許可申請を提出する
(「高度専門職で入国して1年経ったから永住申請できる」と思い込んでいる方がいますが、永住申請には他にも素行善良要件、独立生計要件、国益適合要件などがあります。高度専門職であっても、税金や社会保険料の未納がある場合は不許可になるリスクがあります。在留期間の短縮はあくまで在留実績の要件に関するものです)
なお、高度専門職の在留資格を持っていなくても、過去にポイント計算で70点以上(または80点以上)を満たしていた期間があれば、永住申請時にその実績を主張できます。たとえば「技術・人文知識・国際業務」で在留していた期間でも、その時点でポイント要件を満たしていたことを立証できれば、在留期間の短縮が認められます。この仕組みを知らない方は非常に多く、「もっと早く知っていれば永住申請を前倒しできた」という声をよく聞きます。該当する可能性がある方は、過去の在留期間についてもポイント計算を行ってみることをおすすめします。
また、永住申請においては本人の年収だけでなく、納税状況や年金・健康保険の加入状況も厳しく審査されます。高度専門職であっても、住民税の滞納や国民健康保険料の未納があれば不許可になるリスクがあります。永住を見据えて高度専門職を取得する場合は、税金と社会保険の支払い状況を入国当初から適切に管理しておくことが不可欠です。
高度専門職の注意点は「転職時の手続き」と「ポイント維持」
高度専門職は優遇措置が大きい反面、他の就労ビザにはない制約もあります。特に注意すべき点は以下の二つです。
転職時は在留資格変更許可申請が必要です。高度専門職1号は、在留資格に所属機関(勤務先)が紐づいています。そのため、転職する場合は「高度専門職1号(旧勤務先)」から「高度専門職1号(新勤務先)」への在留資格変更許可申請が必要です。一般の技術・人文知識・国際業務であれば、転職時は届出だけで済むケースが多いのに対し、高度専門職では変更申請が求められる点は大きな違いです。
(転職先が決まってから変更申請を出し、許可が下りるまでの間はどうするのかという質問をよく受けます。申請中は従前の在留資格で在留を継続できますが、新しい勤務先で働き始めるタイミングには注意が必要です。実務上は、変更申請の結果が出る前に新勤務先で就労を開始すると問題になる可能性があるため、スケジュールの調整が重要です)
ポイントの維持にも継続的な注意が必要です。高度専門職の優遇措置はポイント制に基づいているため、転職による年収の変動、年齢の上昇などでポイントが70点を下回ると、次回の更新時や永住申請時に問題が生じる可能性があります。特に年齢の加点は見落としがちで、40歳を超えると加点がゼロになるため、年齢加点に依存してギリギリ70点を超えていた方は要注意です。
- 転職で年収が下がるとポイントが不足する場合がある
- 年齢が上がるとポイントが減少する(40歳以上は年齢加点がゼロ)
- 日本語能力試験の合格証明書など、ボーナス加点の根拠資料は保管しておく
- 永住申請を視野に入れている場合は、申請時点でのポイントを事前に確認する
高度専門職2号に変更できれば、所属機関の制約がなくなり転職の自由度が大幅に向上します。ただし、2号への変更には1号での3年以上の活動実績が必要です。長期的なキャリア設計の中で、1号から2号への移行、あるいは永住権の取得を計画的に進めることをおすすめします。
最後に
高度専門職は、ポイント制で一定の基準を満たした外国人材に対して、永住権の早期取得や配偶者の就労許可など、他の就労ビザにはない優遇措置を提供する在留資格です。70点以上で取得可能、80点以上であれば在留1年で永住申請が可能になるため、該当する方にとっては最も有利な選択肢といえます。一方で、転職時の手続きやポイント維持など、高度専門職特有の注意点もあるため、制度を正しく理解したうえで活用することが重要です。
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