特別永住者は、第二次世界大戦前から日本に居住していた旧植民地出身者とその子孫に認められた特別な法的地位です。一般の永住者とは異なる法律に基づく制度であり、歴史的な経緯を踏まえた特別な保護が与えられています。しかし、制度の成り立ちや適用範囲、一般の永住者との違いは意外と知られていません。この記事では、特別永住者制度の概要、対象者、何世まで適用されるのか、一般の永住者との違いまで、正確にわかりやすく解説します。
目次
特別永住者制度は歴史的経緯に基づく特別な法的地位
特別永住者とは、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)に基づいて、日本での永住が認められた外国人のことです。
この制度の歴史的背景を簡潔に説明します。1910年の韓国併合から1945年の終戦までの間、朝鮮半島や台湾の人々は日本国籍を有していました。しかし、1952年のサンフランシスコ平和条約の発効に伴い、これらの方々は日本国籍を離脱することとなりました。戦前から日本に居住し、日本社会に深く根づいていたにもかかわらず、条約の発効により突然「外国人」となった方々の法的地位を保障するために設けられたのが特別永住者制度です。
当初は「法126該当者」や「協定永住」「特例永住」など複数の在留資格に分かれていましたが、1991年の入管特例法の施行によって「特別永住者」として一本化されました。
特別永住者の対象者
特別永住者として認められる対象者は、以下のいずれかに該当する方です。
| 対象者 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 平和条約国籍離脱者 | 1952年のサンフランシスコ平和条約の発効により日本国籍を離脱した者で、1945年9月2日以前から引き続き日本に在留している者 |
| 平和条約国籍離脱者の子孫 | 上記の者の直系卑属として日本で出生し、その後も引き続き日本に在留している者 |
2026年現在、特別永住者の大多数は韓国・朝鮮籍の方です。台湾籍の方も対象に含まれますが、人数としては韓国・朝鮮籍の方が圧倒的に多数を占めています。
特別永住者の人数は年々減少傾向にあります。帰化(日本国籍の取得)を選択する方や、世代交代による自然減が主な要因です。
特別永住者は何世まで適用されるのか
特別永住者制度が何世まで適用されるかは、多くの方が疑問に思う点です。結論から言えば、入管特例法上、世代の制限は設けられていません。
入管特例法では、特別永住者の子として日本で出生した者は、出生後六十日以内に申請することにより特別永住の許可を受けることができると規定されています。この規定には世代の制限がないため、理論上は四世、五世、六世と何世代にわたっても特別永住者の地位を引き継ぐことが可能です。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 日本で出生していることは海外で出生した場合は特別永住者の地位を取得できない
- 出生後六十日以内に申請することは期限を過ぎると特別永住者の許可を受けられない
- 両親のいずれかが特別永住者であること。両親ともに特別永住者でなくても、片方が特別永住者であれば子は申請可能
海外で出生した場合はどうなるか
特別永住者の子であっても、海外で出生した場合は特別永住者の地位を取得できません。海外で出生した子が日本に入国する場合は、通常の在留資格(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」など)を取得する必要があります。
また、特別永住者が日本を出国して海外に長期間滞在した場合、再入国許可(またはみなし再入国許可)の期限内に日本に再入国しなければ特別永住者の地位を失うことがあります。みなし再入国許可の有効期限は二年間であり、この期間を超えて日本に再入国しなかった場合は、特別永住者の地位が消滅します。
(過去に、みなし再入国許可の期限が切れてしまい特別永住者の地位を失った方からのご相談を受けたことがあります。一度失った特別永住者の地位を回復することは制度上非常に困難です。長期の海外滞在を予定している場合は、通常の再入国許可を取得しておくことを強くお勧めします)
特別永住者と一般の永住者の違い
特別永住者と一般の永住者(在留資格「永住者」)は、名称は似ていますが法的根拠、取得方法、権利の範囲が大きく異なります。
| 比較項目 | 特別永住者 | 一般の永住者 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 入管特例法 | 入管法第22条 |
| 取得方法 | 歴史的経緯に基づく(申請による新規取得は不可。特別永住者の子として出生した場合のみ) | 永住許可申請による(十年以上の在留等の要件を満たした外国人が申請) |
| 在留期間 | 無期限 | 無期限 |
| 就労制限 | なし | なし |
| 所持する証明書 | 特別永住者証明書 | 在留カード |
| 証明書の携帯義務 | なし(提示義務はあるが常時携帯義務はない) | あり(常時携帯義務) |
| 退去強制事由 | 内乱罪、外患罪等の極めて限定的な事由のみ | 入管法に定める退去強制事由全般 |
| みなし再入国許可 | 二年以内 | 一年以内 |
| 指紋採取(入国審査時) | 免除 | 対象(入国時の指紋採取が必要) |
携帯義務の違い
一般の永住者は在留カードの常時携帯義務がありますが、特別永住者は特別永住者証明書の常時携帯義務がありません。入管特例法では、特別永住者証明書の「提示義務」は規定されていますが、常時携帯することまでは求められていません。これは、特別永住者が日本社会に深く定着していることを踏まえた特例的な扱いです。
退去強制の違い
一般の永住者は入管法に定める退去強制事由(不法残留、刑事処分など)に該当すれば退去強制の対象となり得ます。これに対し、特別永住者は退去強制事由が内乱罪、外患誘致罪、外患援助罪、またはこれらの未遂罪に限定されています。通常の刑事事件で有罪となっても退去強制の対象にはなりません。
特別永住者証明書の更新手続き
特別永住者は在留期間の更新は不要ですが、特別永住者証明書には有効期限があり、期限前に更新手続きが必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効期限 | 十六歳以上。交付日から七年間 十六歳未満。十六歳の誕生日まで |
| 更新申請の時期 | 有効期限の二か月前から |
| 申請先 | 住所地の市区町村役場 |
| 必要書類 | 申請書、写真、パスポート(所持している場合)、現在の特別永住者証明書 |
更新手続きは市区町村役場で行います。入管ではないことに注意してください。一般の永住者の在留カードの更新は入管で行いますが、特別永住者証明書の更新は住所地の市区町村が窓口です。
特別永住者の人数の推移と現状
特別永住者の人数は年々減少傾向にあります。ピーク時には約69万人を数えた特別永住者ですが、2026年現在は約28万人程度にまで減少しています。減少の主な要因は以下のとおりです。
- 帰化(日本国籍の取得)を選択する方の増加
- 高齢化による自然減
- 日本人との婚姻により子が日本国籍を取得するケース
- 海外移住により特別永住者の地位を喪失するケース
特別永住者は新たに「申請して取得する」ことができない制度であるため、既存の特別永住者の子として日本で出生する場合を除き、人数は今後も減少を続けると見込まれています。
特別永住者が帰化を検討する場合
特別永住者の中には、日本国籍の取得(帰化)を検討する方も少なくありません。特別永住者が帰化する場合、帰化条件の一部が緩和されます。
通常の帰化では「引き続き五年以上日本に住所を有すること」が要件ですが、特別永住者の場合は住所条件が大幅に緩和されています。特別永住者は日本で生まれ育っているケースがほとんどであり、住所条件は問題なく満たします。
特別永住者の帰化申請では、以下の書類が特に重要です。
- 韓国の家族関係登録簿の証明書(基本証明書、家族関係証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子入養関係証明書)
- 韓国の除籍謄本(2008年以前の身分関係の証明に必要)
- 日本の外国人登録原票(在留歴の証明)
- 帰化の動機書(自筆で帰化を希望する理由を記載)
特別永住者の帰化申請は、身分関係の立証に韓国側の書類を多数取得する必要があるため、書類の収集に時間と手間がかかることが多いです。特に古い除籍謄本は手書きで記載されており、読み取りや日本語翻訳が困難なケースもあります。
帰化を選択するかどうかは、本人のアイデンティティや将来設計に関わる極めて個人的な判断です。帰化すれば選挙権やパスポートの面で便利になりますが、母国の国籍を失うことを意味します。特別永住者としての地位のままでも日本での生活に大きな支障はないため、慎重に判断されることをお勧めします。
(帰化と特別永住者の地位維持のどちらを選ぶかは、非常に個人的な判断であり、どちらが「正しい」というものではありません。私が対応してきた案件でも、家族内で意見が分かれるケースは少なくありません。帰化を検討される場合は、ご家族でよく話し合った上で判断されることをお勧めします)
特別永住者に関するよくある質問
特別永住者の子が外国で出生した場合はどうなるか
特別永住者の子であっても、日本国外で出生した場合は特別永住者の地位を取得できません。日本に入国するためには通常の在留資格の取得が必要です。「定住者」ビザを取得して入国し、その後永住申請を行うのが一般的なルートです。
特別永住者が長期間海外に滞在する場合の注意点
特別永住者がみなし再入国許可で出国し、二年以内に再入国しなかった場合は特別永住者の地位を失います。長期の留学や海外赴任を予定している場合は、出国前に通常の再入国許可(有効期限最長六年)を取得しておくことが重要です。一度失った特別永住者の地位は原則として回復できないため、十分に注意してください。
特別永住者と一般の外国人の入国審査の違い
特別永住者は入国審査時の指紋採取と顔写真の撮影が免除されます。一般の外国人(永住者を含む)は入国時にバイオメトリクス情報の提供が義務づけられていますが、特別永住者はこの対象外です。
特別永住者は通称名を使用できるか
特別永住者を含む外国人は、住民票に通称名を登録することができます。通称名とは、日常生活で使用している日本式の氏名のことで、学校や職場などで広く使われているケースが多いです。通称名は住民票に記載され、一定の公的書類でも使用できます。ただし、パスポートには本名(国籍国での正式な氏名)が記載されるため、海外渡航時は本名を使用することになります。
特別永住者が犯罪を犯した場合はどうなるか
特別永住者の退去強制事由は極めて限定的であり、一般の刑事事件で有罪となっても退去強制の対象にはなりません。入管特例法では、退去強制事由を内乱罪、外患誘致罪、外患援助罪など国家の存立に関わる重大犯罪に限定しています。ただし、犯罪行為自体は日本の法律に基づいて処罰されるのは当然であり、退去強制されないことが免罪を意味するわけではありません。
最後に
特別永住者制度についてのご不明点や、帰化・永住に関するご相談は、在留資格センターまでお気軽にお問い合わせください。


