みなし再入国許可は、有効な在留カードを持つ外国人が日本から出国する際に、通常の再入国許可を取得しなくても再入国できる制度です。2012年の入管法改正で導入されたこの制度により、短期間の海外渡航がより簡便になりました。しかし、有効期限や対象者の制限を正しく理解していないと、再入国できなくなる重大なリスクがあります。この記事では、みなし再入国許可の仕組み、対象者、有効期限、そして出国前に確認すべきポイントを実務の視点から詳しく解説します。
目次
みなし再入国許可は出国から1年以内の再入国を簡易に認める制度
みなし再入国許可とは、有効な旅券(パスポート)と在留カードを所持する外国人が、出国後1年以内に再入国する場合に、事前の再入国許可申請を不要とする制度です。2012年7月の新しい在留管理制度の施行に伴い導入されました。
この制度が導入される以前は、外国人が日本から一時的に出国する場合、出国前に必ず地方出入国在留管理局で再入国許可を取得する必要がありました。再入国許可を取得せずに出国すると、在留資格が消滅してしまうため、短期間の海外旅行や一時帰国であっても手続きが必要でした。
みなし再入国許可の導入により、出国時に空港の入国審査官に「みなし再入国許可による出国である」旨を伝えるだけで、手続きが完了するようになりました。手数料も不要です。
みなし再入国許可と通常の再入国許可の違い
| 比較項目 | みなし再入国許可 | 通常の再入国許可 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 不要(出国時に意思表示のみ) | 必要(入管に申請) |
| 手数料 | 無料 | 1回限り3,000円、数次6,000円 |
| 有効期限 | 出国から1年(在留期限が先に来る場合はその日まで) | 最長5年(在留期限の範囲内) |
| 延長の可否 | 海外での延長不可 | 海外での延長不可(やむを得ない場合を除く) |
| 対象者 | 有効な在留カードを持つ中長期在留者 | 在留資格を有するすべての外国人 |
みなし再入国許可の対象者
みなし再入国許可の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす外国人です。
- 有効な旅券(パスポート)を所持していること
- 有効な在留カードを所持していること
- 出国後1年以内に再入国する意思があること
- 在留期間の満了日が出国から1年以内に到来しないこと(到来する場合は在留期限までが有効期間)
みなし再入国許可を利用できない方
以下のケースでは、みなし再入国許可を利用できません。
- 在留資格「短期滞在」で在留している方。短期滞在は在留カードが交付されないため対象外
- 在留カードの有効期限が切れている方。在留カードの更新手続きを済ませてから出国する必要がある
- 在留資格の取消手続き中の方は入管から在留資格の取消しに関する通知を受けている場合
- 退去強制手続き中の方は退去強制令書が発付されている場合や、収容されている場合
- 出国確認の留保がされている方は刑事事件等で出国を制限されている場合
(特別永住者については、みなし再入国許可の有効期間が2年間とされています。特別永住者は在留カードではなく特別永住者証明書を所持しており、一般の中長期在留者とは取扱いが異なります)
みなし再入国許可の有効期限と注意点
みなし再入国許可の有効期限に関する理解は、再入国できなくなるリスクを回避するために極めて重要です。
有効期限は出国日から1年間(ただし在留期限を超えない)
みなし再入国許可の有効期間は、出国の日から1年間です。ただし、在留期間の満了日が1年未満の場合は、在留期間の満了日が有効期限となります。
具体例を見てみましょう。
| ケース | 出国日 | 在留期限 | みなし再入国許可の有効期限 |
|---|---|---|---|
| ケース1 | 2026年4月10日 | 2028年3月31日 | 2027年4月10日(出国から1年後) |
| ケース2 | 2026年4月10日 | 2026年9月30日 | 2026年9月30日(在留期限が先に到来) |
| ケース3 | 2026年4月10日 | 2026年5月15日 | 2026年5月15日(在留期限が先に到来) |
ケース3のように、在留期限が迫っている状態で出国すると、みなし再入国許可の有効期間が非常に短くなります。この場合、海外に滞在できる期間が極端に限られるため、在留期間の更新を済ませてから出国するか、通常の再入国許可を取得することを検討すべきです。
有効期限の延長は原則不可
みなし再入国許可の有効期間は、海外にいる間に延長することができません。これは通常の再入国許可と大きく異なる点です。病気やけがなど「やむを得ない事情」がある場合でも、みなし再入国許可の有効期間の延長は認められないのが原則です。
ただし、通常の再入国許可については、やむを得ない事情がある場合に限り、在外日本公館で最長1年の延長が認められる場合があります。長期間の海外滞在が見込まれる場合は、出国前に通常の再入国許可を取得しておくことを強く推奨します。
有効期限を過ぎると在留資格が消滅する
みなし再入国許可の有効期限を過ぎてしまった場合、在留資格は消滅します。在留資格が消滅すると、日本に戻るためには改めて在留資格認定証明書(COE)の交付申請から手続きをやり直す必要があります。
これは非常に深刻な事態です。たとえば、永住者の方がみなし再入国許可の有効期限を過ぎてしまった場合、長年かけて取得した永住権が消滅してしまいます。再度永住許可を取得するには、改めて要件を満たした上で申請し直す必要があり、必ずしも許可が得られるとは限りません。
出国前に確認すべきポイント
みなし再入国許可を利用して出国する前に、以下のポイントを必ず確認してください。
在留期間の残余期間
在留カードに記載されている在留期間の満了日を確認し、出国から帰国までの期間が在留期限内に収まるかを確認してください。在留期限が近い場合は、在留期間の更新許可申請を済ませてから出国するのが安全です。
パスポートの有効期限
パスポートの有効期限が、帰国予定日より十分に先であることを確認してください。渡航先の国によっては、入国時にパスポートの残存有効期間が6か月以上必要な場合があります。パスポートの有効期限が切れてしまうと、みなし再入国許可も効力を失います。
在留カードの携帯
出国時に在留カードを必ず携帯してください。みなし再入国許可は、有効な在留カードの所持が前提です。在留カードを紛失している場合は、出国前に再交付の申請を行う必要があります。
出国時の手続き
空港の出国審査時に、再入国出国用EDカード(出国記録カード)の「みなし再入国許可による出国を希望する」欄にチェックを入れて提出します。このチェックを忘れると、みなし再入国許可の意思表示がなされなかったものとして扱われるリスクがあるため、注意が必要です。
帰国後の在留期間更新のスケジュール
海外渡航中に在留期間の更新時期が到来する場合は、帰国後速やかに更新申請を行える準備を整えておくことが重要です。在留期間の更新は満了日の3か月前から申請可能ですので、出国前に更新申請を済ませておくのが理想的です。
みなし再入国許可ではなく通常の再入国許可を取得すべきケース
以下のケースでは、みなし再入国許可ではなく、出国前に通常の再入国許可を取得しておくことを強くお勧めします。
- 海外滞在が1年を超える可能性がある場合。長期出張、留学、家族の介護など
- 在留期限が出国から1年以内に到来する場合。みなし再入国の有効期間が短くなる
- 不測の事態で帰国が遅れるリスクがある場合。渡航先の政情不安、健康上の問題など
- 永住者や定住者など、在留資格の消滅が重大な影響を及ぼす場合。再取得が困難な在留資格
通常の再入国許可は、最長5年間(特別永住者は6年間)の有効期間を設定できます。手数料は1回限りが3,000円、数次(有効期間中何度でも出入国可能)が6,000円です。みなし再入国許可の利便性に比べて手間と費用はかかりますが、在留資格の消滅リスクを大幅に軽減できます。
通常の再入国許可の申請方法
通常の再入国許可は、管轄の地方出入国在留管理局で申請します。必要書類は以下のとおりです。
- 再入国許可申請書
- パスポート
- 在留カード
- 手数料(収入印紙で納付)
申請は原則として即日処理され、その場で再入国許可がパスポートに記載されます。出国直前の空港でも手続き可能な場合がありますが、混雑状況によっては対応できないこともあるため、余裕を持って申請することをお勧めします。
最後に
みなし再入国許可は、短期間の海外渡航を簡便にする便利な制度ですが、有効期限を過ぎると在留資格が消滅するという重大なリスクがあります。要点をまとめます。
- みなし再入国許可の有効期間は出国から1年間(在留期限が先に来る場合はその日まで)
- 有効期間の延長は原則不可(海外での延長はできない)
- 有効期限を過ぎると在留資格が消滅する
- 出国時に再入国出国用EDカードのチェックを忘れないこと
- 長期の海外滞在には通常の再入国許可(最長5年)を取得すべき
- 永住者は在留資格消滅の影響が特に大きいため、慎重な判断が必要
在留資格の消滅は取り返しのつかない事態につながりかねません。出国前に有効期限を確認し、不安がある場合は通常の再入国許可の取得を検討してください。当事務所では、再入国許可に関するご相談を随時受け付けております。


