技能実習生の給料は、法律上「最低賃金以上」が義務づけられています。にもかかわらず、実際の給与水準や手取り額、天引きの内訳について正確に把握している企業担当者は多くありません。技能実習生の賃金をめぐるトラブルは後を絶たず、不透明な控除や最低賃金割れが監理団体や技能実習機構の調査で指摘される事例も増えています。この記事では、技能実習生の給料の相場、手取り額の目安、業種・地域ごとの違い、そして企業が待遇面で注意すべきポイントまで、実務の視点から解説します。
目次
技能実習生の給料は最低賃金以上が法律上の義務
技能実習生には、日本人の労働者と同様に労働基準法と最低賃金法が全面的に適用されます。つまり、技能実習生の給与は各都道府県の最低賃金を下回ってはならず、時間外労働には割増賃金の支払いも必要です。
「技能実習は労働ではなく研修だ」という認識を持つ企業が未だに存在しますが、これは明確に誤りです。技能実習生は労働者であり、労働関係法令の保護を受けます。最低賃金法違反は刑事罰の対象にもなり得る重大な法令違反です(出典 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)。
実務上は、最低賃金ぎりぎりで雇用契約を結んでいる企業が大半です。技能実習計画の認定申請時にも賃金額が審査対象となるため、最低賃金を下回る設定ではそもそも計画が認定されません。また、毎年10月頃に最低賃金が改定されるため、改定後に賃金が最低賃金を下回っていないか毎年確認する作業が欠かせません。
(実習実施者から「昨年の最低賃金改定を見落としていた」という相談を受けることがありますが、改定額との差額を遡って支払う対応が必要になります。改定時期を社内カレンダーに組み込んでおくことを強く勧めます)
技能実習生の平均月収は約十七万円から二十万円で手取りは十三万円から十六万円程度
技能実習生の月収は、勤務地域や業種によって幅がありますが、総支給額で月十七万円から二十万円程度が相場です。時給換算では各地域の最低賃金からプラス数十円程度という水準が多く、残業代を含めた総支給額がこの範囲に収まるケースが一般的です。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、技能実習生の平均賃金は日本人の一般労働者と比べて低い水準にとどまっています。ただし、近年の最低賃金の大幅引上げに伴い、技能実習生の賃金水準も上昇傾向にあります(出典 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。
一方で手取り額は、各種控除を差し引いた結果、月十三万円から十六万円程度になるのが実態です。総支給額と手取り額の差が大きいことが、技能実習生にとって不満の原因になりやすいポイントでもあります。
天引き項目は社会保険料・税金・寮費・光熱費
技能実習生の給与から控除される主な項目は以下の通りです。
| 控除項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| 健康保険料 | 約八千円から一万二千円 |
| 厚生年金保険料 | 約一万五千円から一万八千円 |
| 雇用保険料 | 約千円から二千円 |
| 所得税 | 約二千円から五千円 |
| 住民税(二年目以降) | 約五千円から八千円 |
| 寮費 | 約二万円から三万円 |
| 光熱費・水道代 | 約五千円から一万円 |
法定控除(社会保険料・税金)は法律上の義務であり、日本人と同じ基準で天引きされます。一方、寮費や光熱費などの法定外控除については、労使協定の締結と賃金控除に関する同意が必要です。この手続きを踏んでいないまま天引きしている企業は少なくなく、技能実習機構の実地検査で指摘されるケースが多発しています。
(技能実習生の手取りが少ないと感じる原因の一つに厚生年金保険料があります。帰国後に脱退一時金を請求できる制度がありますが、この制度の存在を知らない実習生も多いです。受入れ企業や監理団体から事前に説明しておくと、実習生の納得感が高まります)
業種・地域による給料の違いは大きい
技能実習生の給与水準は、業種と勤務地域によって大きな差があります。最低賃金が地域ごとに異なることに加え、業種ごとの労働市場の需給バランスや残業時間の多さが給与に影響するためです。
| 業種 | 月収の目安(総支給額) | 特徴 |
|---|---|---|
| 建設 | 約十八万円から二十三万円 | 残業・休日出勤が多く総支給額は高めだが体力的に厳しい |
| 食品製造 | 約十六万円から十九万円 | 受入れ人数が最も多い分野で求人競争が激しい |
| 農業 | 約十五万円から十八万円 | 繁忙期と閑散期の差が大きく月収にばらつきがある |
| 介護 | 約十七万円から二十万円 | 処遇改善加算の対象となり他業種より賃金が安定しやすい |
地域別に見ると、東京都や神奈川県など最低賃金が高い都市部では総支給額も高くなりますが、寮費や生活費も高くなるため、手取りベースで見ると地方との差はそれほど大きくないのが実態です。
ベトナム人技能実習生を例にとると、送出し前に来日費用として数十万円の借金を背負って来日するケースが多く、手取りから母国への仕送りを差し引くと手元に残る金額はさらに少なくなります。この経済的なプレッシャーが、より賃金の高い職場への失踪につながるケースも報告されており、受入れ企業としては適正な賃金水準の確保が人材定着の面でも重要です。
なお、同じ業種でも都市部と地方で月収に二万円から三万円程度の差がつくことがあります。ただし前述の通り、都市部は家賃や物価も高いため、実習生の可処分所得としてはそこまで大きな差にならないのが実情です。企業が人材確保の観点から賃金設定を考える場合は、同地域・同業種の相場を把握した上で、生活費の実態も加味して判断することが必要です。
技能実習生の給料に関する違反で多いのは「控除の不透明さ」
技能実習機構の実地検査や監理団体の監査で指摘される賃金関連の違反は、最低賃金割れよりも「控除の不透明さ」が圧倒的に多いのが実態です。
具体的に多い違反パターンは以下の通りです。
- 労使協定を締結しないまま寮費や食費を給与から天引きしている
- 寮費が実費を大幅に超える金額に設定されている
- 控除の内訳を実習生が理解できる言語で説明していない
- 給与明細の交付が遅れている、または交付していない
- 残業代の計算が不正確で割増率が法定基準を下回っている
特に問題となりやすいのが寮費の設定です。技能実習機構は、寮費は実費相当額であるべきとの立場をとっており、自社所有の寮であっても建物の減価償却費や管理費用を基に合理的な金額を算出する必要があります。「一部屋三万円」のように根拠が不明な金額を設定していると、改善指導の対象になります(出典 外国人技能実習機構)。
技能実習生の賃金に関する違反が発覚した場合、改善命令や技能実習計画の取消しだけでなく、企業名の公表や新規受入れの停止といった重い措置が講じられる可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、賃金台帳や控除根拠の書類は常に整備しておく必要があります。
(実務上の印象として、意図的に不正を行っている企業よりも、「ルールを知らなかった」「前任者のやり方をそのまま引き継いでいた」というケースの方が多いです。監理団体が適切に指導していれば防げる問題も多く、監理団体の質が企業のコンプライアンスを左右している面があります)
特定技能への移行で給料アップが期待できる
技能実習二号を良好に修了した実習生は、特定技能一号への移行が可能です。そして、特定技能に移行すると多くの場合で給与水準が上がります。
その理由はいくつかあります。
- 特定技能は「日本人と同等以上の報酬」が明確な要件であり、最低賃金ぎりぎりの設定では許可が下りにくい
- 技能実習で培った三年間の経験が評価され、未経験者より高い賃金設定が妥当とされる
- 特定技能では転職が認められるため、企業間の賃金競争が働きやすい
- 建設分野では特定技能外国人の月額報酬の下限が設定されている
実務上、技能実習時の月収が十七万円前後だった実習生が、特定技能移行後に月収二十万円から二十二万円程度に上がるケースは珍しくありません。手取りベースでも月に二万円から四万円程度の増加が見込めるため、実習生にとって特定技能への移行は大きなモチベーションになっています。
ただし、特定技能は同一分野内で転職が可能であるため、賃金水準を低く抑えたままだと他の企業に人材が流出するリスクがあります。受入れ企業としては、移行後の待遇を含めたキャリアパスを事前に示すことが、長期的な人材確保につながります。また、特定技能二号への移行が実現すれば在留期間の制限がなくなり、さらなる待遇改善の余地が広がるため、優秀な人材の囲い込みにはキャリアの将来像を提示することが有効です。
(「特定技能に移行されると人件費が上がるから技能実習のままにしておきたい」という声を聞くことがありますが、制度の趣旨に反するだけでなく、結果的に人材流出を招くリスクがあります。適正な待遇は経営コストではなく、人材確保のための投資と考えるべきです)
企業が技能実習生の待遇で注意すべきポイント
技能実習生の待遇に関して、受入れ企業が押さえておくべき実務上のポイントを整理します。
- 賃金台帳は日本人と同様に作成・保存し、実地検査にいつでも対応できる状態にしておく
- 給与明細は日本語だけでなく母国語の補足資料を用意し、控除内容を説明する
- 寮費の設定根拠を書面で残し、実費相当であることを証明できるようにする
- 最低賃金の改定時期に合わせて賃金額を見直す仕組みをつくる
- 残業時間の管理はタイムカード等で客観的に記録し、未払い残業代が発生しない体制を整える
- 技能実習生の賃金は必ず本人名義の口座に振り込み、現金払いは避ける
加えて、待遇面での配慮は金銭面だけに限りません。生活環境の整備や相談体制の構築も広い意味での待遇です。寮の居住環境が劣悪であったり、相談窓口がなく孤立しやすい状況であったりすると、失踪や労使トラブルの原因になります。
外国人技能実習機構は不定期に実地検査を行っており、賃金関連の帳簿類だけでなく寮の状況や実習生へのヒアリングも実施されます。検査では、賃金台帳、雇用条件書、労使協定、控除の根拠資料などの提示を求められることが一般的です。日頃から適正な運用を心がけ、書類を整備しておけば、検査対応に慌てる必要はありません。
技能実習生から労働基準監督署や技能実習機構に直接相談が寄せられるケースも増えています。SNSを通じて他の実習生と情報交換し、自社の待遇が相場より低いと気づくことも珍しくありません。「外国人だから文句を言わないだろう」という姿勢は、現在の制度環境では通用しないと認識してください。
最後に
技能実習生の給料は最低賃金以上が法律上の義務であり、控除の透明性や寮費の適正性も含めて、企業には厳格な運用が求められます。賃金に関するトラブルは、実習生との信頼関係を損なうだけでなく、技能実習計画の取消しや企業名の公表といった深刻な結果を招きかねません。適正な待遇の確保は、法令遵守であると同時に、優秀な人材を確保し続けるための経営戦略でもあります。
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