経営管理ビザを取得して日本で事業を始めた外国人にとって、次の課題は「ビザの更新」と「将来的な永住権の取得」です。更新審査では新規申請時とは異なり、事業の実績と収益性が問われます。この記事では、更新審査のポイント、不許可パターン、在留期間を延ばす条件、永住権取得までの道筋を実務経験をもとに解説します。
目次
経営管理ビザの更新審査では事業の収益性と継続性が最重要
経営管理ビザの更新審査で入管が最も重視するのは、「事業が実際に継続しているか」と「安定した収益が上がっているか」の2点です。新規申請の段階では事業計画書をもとに「将来の見込み」が審査されますが、更新の段階では「実際の結果」が問われます。
更新審査で入管が確認する主な項目を整理します。
| 審査項目 | 確認される内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 事業の収益性 | 直近の決算書(損益計算書・貸借対照表)の内容 | 売上高・経常利益の推移が特に重要 |
| 事業の継続性 | 取引先との継続的な取引、従業員の雇用状況 | 事業活動の実態が乏しいと不許可リスクが高まる |
| 役員報酬 | 報酬額が生活を維持できる水準か、実際に支給されているか | 月額20万円以上が実務上の最低ライン |
| 納税・社会保険 | 法人税、住民税、社会保険料の納付状況 | 滞納があると更新に重大な影響 |
| 事業所の維持 | 独立した事業所が引き続き確保されているか | 契約期間切れや無断転居は不許可要因 |
実務上、更新で最も差がつくのは決算内容です。黒字決算で安定した売上があり、適正な役員報酬を支給している事業者は、更新審査でほぼ問題になりません。一方、赤字決算が続いている場合や役員報酬を受け取れていない場合は、事業の継続性に疑問を持たれ、追加書類の提出を求められたり、不許可になるリスクが生じます。
(会社員の就労ビザと違い、経営管理ビザの更新は「通って当たり前」ではありません。入管の審査官は決算書の数字をかなり細かく見ていますので、更新の時期が来てから慌てるのではなく、日頃から決算を意識した経営を心がけてください)
更新に必要な書類は決算書・確定申告書が中心
経営管理ビザの更新申請で必要となる書類は、事業の実績を客観的に証明するものが中心です。新規申請時のような事業計画書は不要ですが、決算に関する書類は確実に揃えなければなりません。
更新申請で必要となる主な書類は以下の通りです。
- 在留期間更新許可申請書
- パスポートおよび在留カード
- 直近年度の決算書(貸借対照表・損益計算書)の写し
- 法人税の確定申告書の控え(税務署の受付印あり)
- 法人税の納税証明書(その1、その2)
- 法人の住民税の納税証明書
- 役員報酬を証明する資料(源泉徴収票など)
- 社会保険料の納付を証明する資料
- 会社の登記事項証明書
上記に加えて、事業内容に変更がある場合や決算内容が不安定な場合は、追加で事業計画書や改善計画書の提出が求められることがあります。特に赤字決算の場合は、赤字の原因分析と今後の改善策を記載した書面を用意しておくのが実務上のセオリーです。
| 申請者の状況 | 追加で必要になり得る書類 |
|---|---|
| 赤字決算の場合 | 事業改善計画書、資金繰り表、今後の受注見込みを示す資料 |
| 事業内容を変更した場合 | 新事業の事業計画書、新規取引先との契約書 |
| 事業所を移転した場合 | 新事業所の賃貸借契約書、物件写真 |
| 従業員を解雇した場合 | 現在の従業員数と雇用契約書、事業規模の説明 |
(確定申告書は税理士に任せきりにしている方が多いですが、更新前に自分でも内容を確認してください。たとえば役員報酬を低く抑えて法人税を節税した結果、入管から「経営者として生活できる収入がない」と判断されることがあります。税務と入管審査は視点が異なるので、両方のバランスを意識することが大切です)
更新で不許可になりやすいのは「赤字決算」と「事業実態の希薄さ」
経営管理ビザの更新が不許可になるケースには一定のパターンがあります。最も多いのは「赤字決算の継続」と「事業実態の希薄さ」の2つです。
赤字決算が続くと事業の継続性を否定される
設立初年度の赤字は、事業の立ち上げ期として入管もある程度許容します。しかし、2期連続で赤字が続いた場合は「事業の安定性・継続性に疑義あり」と判断されるリスクが一気に高まります。特に深刻なのは、赤字に加えて債務超過(負債総額が資産総額を上回る状態)に陥っているケースです。
赤字の程度と入管の対応は概ね以下のように分かれます。
| 決算の状態 | 入管の対応傾向 | 実務上の対策 |
|---|---|---|
| 初年度のみ赤字(債務超過なし) | 事業計画に問題がなければ許可される可能性が高い | 2年目の黒字化見込みを説明する資料を添付 |
| 2期連続赤字(債務超過なし) | 追加書類を求められる可能性が高い | 事業改善計画書と具体的な受注見込みを提出 |
| 赤字かつ債務超過 | 不許可リスクが非常に高い | 増資や事業転換を含む抜本的な改善策の提示が必要 |
事業実態が伴わない「名ばかり経営者」は見抜かれる
会社は登記されているものの、実際にはほとんど事業活動を行っていないケースも不許可の典型パターンです。入管は決算書の数字だけでなく、事業の実態が本当にあるかどうかも審査しています。
以下のようなケースは事業実態を疑われます。
- 売上がほぼゼロ、または極端に少額
- 取引先との契約書や請求書がない
- 事業所に実際には出勤していない(別の場所で就労している疑い)
- 従業員がいない、または従業員が別の事業に従事している
- 経営者本人が単純労働に従事している(資格外活動の疑い)
経営管理ビザの更新が不許可になった場合、出国準備のための「特定活動」(30日または31日)への在留資格変更を指示されるのが通常です。不許可理由を入管で確認し、改善可能な場合は再申請も可能ですが、事業実態がないと判断された場合の再申請は極めて厳しくなります。更新が不安な場合は、申請前の段階で専門家に相談することを強くお勧めします。
経営管理ビザの在留期間を1年から3年・5年に延ばす条件
経営管理ビザの在留期間は5年、3年、1年、4か月、3か月の5種類がありますが、初回の更新では1年が付与されるのが一般的です。3年や5年の在留期間を取得するためには、一定の条件を満たす必要があります。
在留期間の決定に影響する要素を整理します。
| 在留期間 | 目安となる条件 |
|---|---|
| 5年 | 複数期の安定した黒字決算、十分な役員報酬、社会保険・税金の完全納付、一定以上の事業規模 |
| 3年 | 直近の決算が黒字、適正な役員報酬、納税義務の履行、事業の継続実績 |
| 1年 | 事業開始から間もない、決算内容に不安定な要素がある、過去に赤字歴がある |
実務上、3年の在留期間を取得するには、最低でも2期から3期の安定した決算実績が必要です。5年が付与されるケースはさらにハードルが上がり、事業規模が大きく、複数年にわたって安定した経営実績がある場合に限られます。
在留期間を延ばすために意識すべきポイントは以下の通りです。
- 黒字決算を継続する(最低でも2期連続)
- 役員報酬を安定して支給する(月額20万円以上が望ましい)
- 法人税、住民税、事業税を期限内に納付する
- 健康保険・厚生年金に適切に加入し、保険料を滞納しない
- 従業員を雇用し、事業規模を拡大する
- 事業所の賃貸借契約を安定的に維持する
(在留期間が1年のままだと、毎年更新手続きの手間と費用がかかるだけでなく、永住申請の際にも「3年以上の在留期間を有していること」という要件を満たせなくなります。将来的に永住権を目指すのであれば、早い段階で3年以上の在留期間を獲得することが重要です)
経営管理ビザから永住権を取得するには原則10年の在留実績が必要
経営管理ビザから永住権を取得するための基本要件は、引き続き10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は就労資格(経営管理ビザを含む)で在留していることです。留学ビザで来日し、その後経営管理ビザに変更した場合は、留学期間も通算した10年以上が必要になります(出典 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」)。
永住許可の審査で求められる主な要件は以下の通りです。
- 引き続き10年以上日本に在留していること(就労資格で5年以上)
- 現在の在留資格の在留期間が3年以上であること
- 素行が善良であること(刑事罰を受けていない、交通違反が軽微であること)
- 独立した生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- 納税義務を適正に履行していること(所得税、住民税、事業税、消費税の滞納がない)
- 公的年金および医療保険の保険料を適正に納付していること
- その者の永住が日本国の利益に合致すると認められること
経営管理ビザの保有者が永住申請する場合は、個人の納税状況に加えて法人の決算状況も審査の対象になります。個人の住民税を完璧に納めていても、法人が債務超過であれば「安定した生計基盤がある」とは認められません。会社経営と個人の税務管理の両方が問われる点が、他の就労ビザからの永住申請との違いです。
| 審査項目 | 経営管理ビザ保有者に求められる水準 |
|---|---|
| 年収 | 年収300万円以上が一つの目安(扶養家族がいる場合はさらに上乗せ) |
| 納税 | 直近5年分の所得税・住民税・事業税の完全納付 |
| 社会保険 | 直近2年分の健康保険・厚生年金保険料の納付を証明 |
| 法人の決算 | 直近数期の決算で安定した黒字を維持していること |
| 在留期間 | 現在3年以上の在留期間が付与されていること |
高度専門職ポイント70点以上なら在留3年で永住申請が可能
原則10年の在留要件には特例があります。高度専門職のポイント計算で70点以上に該当する場合は在留3年、80点以上であれば在留1年で永住申請が可能です。経営管理ビザの保有者は「高度専門職1号ハ(高度経営・管理活動)」の区分でポイント計算を行います(出典 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」)。
ポイント計算で加算されやすい項目は以下の通りです。
- 年収(経営者としての役員報酬が高いほどポイントが高い)
- 学歴(大学院修了で加点、MBA取得はさらに加点)
- 職歴(事業経営の年数に応じて加点)
- 年齢(若いほど加点が大きい)
- 日本語能力(N1取得で15点加算)
- 代表取締役としての地位(10点加算)
たとえば、30代で大学卒業、年収1,000万円以上、代表取締役として3年以上の経営実績、日本語能力試験N1取得であれば、70点を超える可能性は十分あります。高度専門職の永住特例を活用すれば、経営管理ビザの取得から最短3年で永住権を申請できるため、条件に該当するかどうかは早めに確認してください。
(高度専門職の永住特例は、必ずしも在留資格を「高度専門職」に変更する必要はありません。経営管理ビザのまま、永住申請時にポイント計算表を提出して70点以上であることを立証すれば適用されます。この点を誤解している方が多いので注意してください)
永住権取得に向けて更新時から意識すべきポイント
永住権の取得を最終的なゴールとするのであれば、経営管理ビザの更新手続きの段階から、永住審査を見据えた経営と生活の管理を始めるべきです。永住申請の直前に慌てて準備しても、過去の納税状況や決算実績は遡って改善できません。
更新時から意識すべき具体的なポイントを整理します。
- 黒字決算を維持し、安定した事業実績を積み上げる
- 役員報酬を年収300万円以上に設定し、継続的に受給する
- 法人税・住民税・事業税・消費税を期限内に納付する(1日でも滞納しない)
- 健康保険・厚生年金に加入し、保険料を滞納なく納付する
- 交通違反を含む法令違反に注意する(軽微な違反でも積み重なると影響する)
- 長期の海外渡航を控え、日本での継続在留実績を途切れさせない
- 高度専門職のポイント計算を定期的に行い、70点以上の達成を目指す
特に注意すべきは「長期の海外渡航」です。1回の出国で3か月以上、または年間合計で150日以上日本を離れると、「引き続き」日本に在留しているとは認められない可能性があります。経営管理ビザの保有者は海外出張が多くなる場合もありますが、永住を目指すのであれば、日本での滞在日数を意識的に管理する必要があります。
納税の「期限内納付」は永住審査で非常に重視されます。確定申告を期限内に行い、税額を期限内に納付していたかどうかが審査されます。納税証明書上は「滞納なし」と表示されていても、過去に期限後納付があった場合は入管に把握される可能性があります。税金の納付期限は年間スケジュールに組み込み、必ず期日までに納めてください。
(永住申請に向けた準備は「5年先を見据えて今から始める」のが正解です。経営管理ビザの方は法人と個人の両面で審査されるため、準備すべき範囲が広い。私の事務所では更新申請のご依頼をいただいた段階で、永住を視野に入れたアドバイスを行うようにしています)
最後に
経営管理ビザの更新は、事業の収益性と継続性が審査の中心です。赤字決算が続けば不許可のリスクがあり、黒字を維持できれば在留期間の延長や永住権取得への道が開けます。更新の積み重ねが永住審査での実績として評価されるため、1回ごとの更新を疎かにすることはできません。
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