配偶者ビザは「日本人と結婚していれば当然に許可される在留資格」ではありません。婚姻届が受理され、戸籍に配偶者の名前が載っていても、入管が「この婚姻には実体がある」「日本で安定した生活を送れる」と判断できなければ不許可になります。私が相談を受ける案件でも、自力で申請して不許可になった方からの駆け込みは非常に多く、その大半は「書類は出したが、立証になっていなかった」というパターンです。この記事では、配偶者ビザが不許可になる7つの理由を実務の視点で分解し、不許可通知が届いた後の動き方、再申請で許可を得るための立証資料の組み立て方まで解説します。
目次
配偶者ビザの不許可は婚姻の真実性か生活の安定性のどちらかを立証できていないことが原因
配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)の不許可理由は、細かく分ければいくつもありますが、突き詰めると二つに集約されます。一つは「この婚姻は在留資格を得るための形式的なものではないか」という婚姻の真実性への疑い、もう一つは「この夫婦は日本で生活を維持できるのか」という生活の安定性への疑いです。書類の不足や記載の矛盾も、結局はこの二つのどちらかを立証しきれていない状態を作り出しているにすぎません。
逆に言えば、この二つを客観的な資料で埋められれば、交際期間が短くても、年齢差が大きくても、収入が高額でなくても許可は出ます。実務では「珍しい事情があるから不許可になる」のではなく、「珍しい事情に対して説明と証拠を用意していないから不許可になる」と考えたほうが正確です。申請の全体像や必要書類については配偶者ビザ(日本人の配偶者等)の申請方法の記事で詳しく整理していますので、あわせて確認してください。
審査基準は公表されておらず判断は法務大臣の広い裁量に委ねられている
まず前提として押さえておくべきなのは、配偶者ビザの審査に「年収◯万円以上なら許可」「交際期間◯年以上なら許可」といった公表された数値基準は存在しないという点です。出入国在留管理庁が公開しているガイドラインでも、在留資格の変更や在留期間の更新は法務大臣が「適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に限って許可されるとされ、その判断は法務大臣の裁量に委ねられていると明記されています。
ガイドラインが挙げている考慮要素は、在留資格該当性、上陸許可基準への適合、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと、素行が不良でないこと、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること、雇用・労働条件が適正であること、納税義務等を履行していること、入管法に定める届出等の義務を履行していることの8項目です(出典 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」)。
この8項目のうち、配偶者ビザで実務上の争点になるのは「素行」「独立の生計」「納税義務」「届出義務」の4つです。学歴や日本語能力は配偶者ビザの審査ではほぼ問われません。ネット上には「日本語ができないと不許可になる」といった情報が流れていますが、これは正確ではなく、問題になるのは日本語力そのものではなく夫婦間に意思疎通の手段があるかどうかです。
(審査基準が非公表であることを不安に感じる方は多いのですが、逆に言えば数値の足切りがないということでもあります。年収が低いから門前払いということはなく、事情の説明次第で判断が変わる余地は常に残されています)
不許可通知書には具体的な理由がほとんど書かれない
不許可になると、入管から「在留資格変更許可申請不許可通知書」または在留資格認定証明書の「不交付通知書」が届きます。ここで多くの方が戸惑うのが、通知書に書かれている理由が「入管法別表第一に定める在留資格に該当しない」「在留を認めるに足りる相当の理由があるとは認められない」といった、ほぼ定型文の一文だけであるという点です。
つまり、通知書だけを見ても「収入が足りなかったのか」「交際の証拠が薄かったのか」「質問書の矛盾を突かれたのか」は一切わかりません。ここを推測で埋めて再申請してしまうと、同じ理由でもう一度不許可になります。実務上、不許可後にまずやるべきことは再申請の準備ではなく、不許可理由の特定です。この手順は後半で詳しく解説します。
不許可通知書と、それに同封される案内文は必ず原本を保管してください。再申請時に前回の申請番号や受付日を求められることがあり、また不許可理由を入管窓口で聞き取る際にも提示を求められます。
配偶者ビザが不許可になる7つの理由
ここからは、実務で繰り返し目にする不許可理由を7つに整理します。複数の理由が重なって不許可になるケースが大半で、単独の理由だけで落とされることは実はそれほど多くありません。自分のケースにいくつ当てはまるかを確認しながら読み進めてください。
| 不許可理由 | 入管が疑っていること | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 婚姻の信ぴょう性の立証不足 | 形式的な婚姻ではないか | 交際経緯の時系列化と客観資料の紐づけ |
| 収入・世帯の安定性の不足 | 生活が破綻しないか | 世帯全体の収入と資産を可視化 |
| 交際期間の短さ・年齢差など | 不自然な結婚ではないか | 疑問点を先回りして説明 |
| 質問書・理由書の矛盾 | 虚偽の申告ではないか | 夫婦で事実関係をすり合わせる |
| 過去の在留状況の問題 | 再び違反しないか | 経緯の説明と改善の立証 |
| 必要書類の不足・説明不足 | 判断材料が足りない | チェックシートに沿った網羅的提出 |
| 日本人配偶者側の事情 | 招へい側に問題はないか | 過去の経緯を正直に説明 |
婚姻の信ぴょう性を裏付ける客観的資料が足りない
最も多い不許可理由がこれです。入管は「夫婦だと本人たちが言っていること」ではなく「第三者が見て夫婦だと判断できる客観的な資料」を求めています。婚姻届の受理証明書や戸籍謄本は、法律上の婚姻が成立したことの証明にはなりますが、婚姻の実体があることの証明にはなりません。
入管が求めている書類のうち、婚姻の実体を示すものはスナップ写真と質問書です。出入国在留管理庁の必要書類一覧でも、スナップ写真は「お二人で写っており、容姿がはっきりと確認できるもの」を2葉から3葉と指定されています(出典 出入国在留管理庁「在留資格『日本人の配偶者等』(外国人(申請人)の方が日本人の配偶者(夫又は妻)である場合)」)。
ただし、この2葉から3葉というのは最低ラインです。実務では以下のような資料を追加で提出します。
- 交際開始から現在までを時系列でまとめた交際経緯書(A4で2枚から4枚程度)
- 交際期間中のスナップ写真を年ごとに整理したもの(各年2枚から5枚、撮影日と場所を注記)
- 双方の親族と一緒に写った写真、結婚式や顔合わせの写真
- メッセージアプリや通話履歴のスクリーンショット(頻度がわかるように月ごとに抜粋)
- 渡航歴を示すパスポートの出入国スタンプページの写し、航空券やホテルの予約控え
- 同居を示す住民票、賃貸借契約書の写し、二人の名義が確認できる公共料金の請求書
逆効果になりやすいのが、写真を大量に印刷して束で出すやり方です。写真は枚数ではなく、交際経緯書の記述と一枚ずつ対応していることが重要です。「2023年5月、ベトナムのホーチミンで相手方の両親と面会」という記述に対して、その時の写真とパスポートのスタンプが並んでいれば、審査官は数秒で事実を確認できます。整理されていない写真100枚より、紐づけられた写真20枚のほうが強い立証になります。
(メッセージのやり取りを提出する際、内容がすべて外国語の場合は要旨の日本語訳を添えてください。訳がないまま数十ページ出しても、審査官は読み飛ばします。全訳は不要で、いつ・どんな内容のやり取りが・どの程度の頻度で行われていたかがわかれば十分です)
世帯の収入が不安定で日本での生活を維持できると判断されない
二番目に多いのが収入面での不許可です。ガイドラインの「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」に対応する部分で、入管は世帯として生活保護に頼らずに生活できるかを見ています。
ここで誤解が多いのは、収入の絶対額だけを見ているわけではないという点です。実務で問題になるのは、金額そのものより次のような「安定性への疑い」です。
- 日本人配偶者が無職または求職中で、当面の収入見込みを示す資料がない
- 転職直後で在職期間が数か月しかなく、課税証明書に前職の低い所得しか反映されていない
- 収入が日払い・週払いの不安定な就労形態で、雇用契約書が存在しない
- 住民税が未納で、納税証明書に滞納額が記載されている
- 世帯の預貯金がほとんどなく、収入減少時の備えが示せない
特に見落とされがちなのが住民税の滞納です。必要書類として直近1年分の住民税の課税証明書と納税証明書が求められますが、納税証明書に未納が記載されていると、ガイドラインの「納税義務等を履行していること」に真正面から抵触します。滞納がある場合は、申請前に完納し、完納後の納税証明書を取り直してください。分割納付中であれば、市区町村が発行する納付計画書と直近の領収書を添付します。
生活保護を受給している世帯の場合、配偶者ビザの申請は極めて厳しくなります。受給中でも申請自体は可能ですが、独立の生計を営む見込みを別途立証する必要があります。世帯の状況によっては、就労開始後に申請時期をずらす判断も現実的です。
交際期間の短さ・年齢差・共通言語の不在など入管が慎重に見る事情がある
入管が経験則として慎重に見る事情がいくつかあります。これらはそれ自体が不許可理由になるわけではありませんが、説明がないまま申請すると審査官の疑問が解消されず、結果として不許可の引き金になります。
| 入管が慎重に見る事情 | 実務上の目安 | 用意すべき説明 |
|---|---|---|
| 交際期間が短い | 出会いから婚姻まで6か月未満 | 短期間で結婚を決めた合理的な理由と、その間の交流密度 |
| 年齢差が大きい | おおむね20歳以上 | 年齢差を前提に交際が続いてきた経緯と共通の生活基盤 |
| 共通言語がない | 互いの母語も英語も通じない | 翻訳アプリを含む実際の意思疎通の方法と、その記録 |
| 対面回数が少ない | 婚姻前の対面が1回から2回 | 渡航記録と、オンラインでの交流頻度の裏づけ |
| 紹介所やアプリでの出会い | 成婚まで数か月 | 出会いの経緯を正直に記載し、その後の交流を厚く立証 |
| 再婚同士で前婚の離婚から短期間 | 離婚から婚姻まで数か月 | 前婚の破綻時期と現在の交際開始時期の整理 |
実務でよく起きるのが、こうした事情を「触れないほうがいい」と考えて隠してしまうパターンです。入管は戸籍と出入国記録を持っているため、離婚歴も渡航歴も最初から把握しています。隠すことに意味はなく、隠したという事実だけが心証を悪くします。年齢差が25歳あるなら、それを前提にした交際経緯を堂々と書くほうが結果は良くなります。
(結婚相談所やマッチングアプリでの出会いを「友人の紹介」と書き換える方が一定数いますが、これは最も避けるべき対応です。後の電話確認で夫婦の説明が食い違い、婚姻全体の信ぴょう性が崩れます。国際結婚の手続きそのものの流れは国際結婚の手続きガイドで解説しています)
質問書と理由書の記載に矛盾がある
質問書は入管所定の様式で、出会った時期と場所、結婚に至った経緯、夫婦の会話に使う言語、親族への紹介状況、過去の退去強制歴などを記入します。この質問書と、任意で提出する理由書、さらに審査中の電話確認での回答、この三つに食い違いがあると一気に不許可に近づきます。
典型的な矛盾のパターンは次のとおりです。
- 出会った時期が質問書と理由書で数か月ずれている
- 夫婦の会話言語を「日本語」と書いているのに、提出したメッセージ履歴が英語だけ
- 同居開始日が住民票の転入日と一致しない
- 質問書では「相手の両親に会った」と書いているのに、写真も渡航記録もない
- 夫婦それぞれが記入した欄で、プロポーズの場所や時期が異なっている
矛盾の多くは、嘘をついた結果ではなく、夫婦が別々に記憶を頼りに書いた結果として生まれます。質問書は必ず二人で同じ場に座って、カレンダーやメッセージ履歴を見ながら記入してください。記入欄が足りない場合は別紙を添付して構いません。むしろ別紙で交際経緯を補足するのが実務の標準です。
理由書の構成や書き方の考え方は入管への申請理由書の書き方で詳しく解説しています。配偶者ビザの理由書は、法律論を書く場所ではなく、審査官が抱く疑問に先回りして答える場所だと考えてください。
過去の在留状況に問題を抱えている
ガイドラインの「素行が不良でないこと」「現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと」に関わる部分です。過去の在留状況の問題は、婚姻の真実性が十分に立証できていても不許可の決定打になりうる、重い要素です。
実務で問題になるのは主に次の四類型です。
- オーバーステイ(不法残留)歴や、退去強制・出国命令を受けた履歴がある
- 留学や家族滞在の在留資格で、資格外活動許可の週28時間の上限を超えて就労していた
- 留学の在留資格を持ちながら、学校を除籍・退学になった後も在留を継続していた
- 住居地変更届や所属機関の届出を怠っていた
週28時間超えの就労は、本人が「アルバイトを掛け持ちしていただけ」と軽く考えていることが多いのですが、入管は課税証明書の所得額から容易に見抜きます。留学生の在留資格で年収200万円を超える課税証明書が出てくれば、それだけで資格外活動違反が推認されます。この場合、事実を認めた上で、超過に至った経緯と現在は違反状態が解消されていることを説明するほかありません。不法就労のリスクと処分の重さは不法就労・不法滞在のリスクと罰則で整理しています。
退去強制歴がある場合は、上陸拒否期間(原則5年、退去強制歴が複数回なら10年)が経過しているかが前提条件になります。期間内であっても、日本人配偶者との婚姻という事情を踏まえた上陸特別許可や在留特別許可の余地はありますが、これは通常の申請とは難易度がまったく異なる領域です。自力での申請は現実的ではありません。
必要書類の不足と説明不足で審査官が判断できない
入管の審査は徹底した書類主義です。「窓口で口頭説明したから伝わっているはず」は通用しません。審査するのは窓口の職員ではなく、後日書類だけを見る審査官だからです。
不足しやすい書類には傾向があります。
- 外国機関発行の結婚証明書の日本語訳(訳者の氏名・住所の記載がないものは不備扱い)
- 身元保証書の記入漏れ(保証人の職業欄や年収欄の空欄が多い)
- 配偶者の世帯全員の記載のある住民票(続柄や本籍の省略がないもの)
- 直近1年分の課税証明書と納税証明書の両方(片方だけの提出が非常に多い)
- 転職直後の場合の在職証明書と直近3か月分の給与明細
入管は在留資格ごとに必要書類のチェックシートを公開しています。再申請の際は、必ずこのチェックシートを印刷して一項目ずつ潰し、提出書類一覧を自作して表紙に付けてください。審査官の手間を減らす資料の作り方は、それだけで審査のスムーズさに直結します。(実務上は、書類の並び順を一覧表と一致させるだけでも追加資料要求が減ります)
日本人配偶者側に審査上のマイナス事情がある
見落とされやすいのが、招へい人・扶養者である日本人配偶者側の事情です。配偶者ビザの審査は外国人本人だけを見ているわけではありません。
| 日本人配偶者側の事情 | 審査への影響 |
|---|---|
| 過去に外国人との婚姻・離婚を短期間で繰り返している | 偽装結婚への関与を疑われ、審査が大幅に厳格化する |
| 過去に配偶者ビザの招へい人となった履歴が複数ある | 入管が過去の申請記録と照合し、経緯の説明を求める |
| 住民税の未申告・未納がある | 課税証明書が発行できず、収入の立証自体が不可能になる |
| 不法就労助長など入管法違反での処分歴がある | 素行要素として重く見られる |
| 単身赴任や施設入所などで同居できていない | 同居の実態がないと判断されるおそれがある |
日本人配偶者に過去の婚姻歴が複数ある場合、それ自体は違法でも何でもありません。ただし入管は戸籍で経緯を確認するため、それぞれの婚姻がなぜ終わり、今回の婚姻がどう違うのかを理由書で説明しておく必要があります。説明がないまま出すと、審査官は最も疑わしい解釈で受け取ります。
また、住民税を申告していない自営業者やフリーランスの日本人配偶者は意外と多く、この場合は課税証明書そのものが発行されません。市区町村で住民税の申告を行い、課税証明書が出る状態にしてから申請するのが正しい順序です。
入管が偽装結婚を疑うのは出会いの経緯・同居実態・意思疎通の3点
偽装結婚を疑われるポイントを整理しておきます。入管が確認しているのは、突き詰めれば「二人はどうやって出会ったのか」「本当に一緒に暮らしているのか」「そもそも会話が成立しているのか」の3点です。
出会いの経緯については、第三者を介した紹介の場合に「誰が」「どういう立場で」紹介したのかが問われます。国際結婚の仲介業者を利用した場合は、業者名と手数料の有無まで質問書に記載が求められることがあります。ここを曖昧にすると疑いは深まります。
同居実態については、住民票の同一世帯記載が出発点ですが、それだけでは足りません。実務では、賃貸借契約書の契約者名と入居者名、公共料金や携帯電話の契約状況、二人が写った自宅内での写真などを組み合わせて立証します。住民票だけ同じで、実際の生活の痕跡が何も出てこないケースは、入管が最も警戒するパターンです。
意思疎通については、共通言語がなくても不許可になるわけではありません。翻訳アプリを使って日常会話をしている夫婦は現実に多く存在します。問題は、「日本語で会話している」と質問書に書きながら、実際の審査官からの電話に外国人配偶者がまったく応答できないような食い違いです。事実をそのまま書けば足ります。
審査の過程では、審査官から自宅や勤務先に電話がかかってくることがあります。近隣への聞き込みや実態調査が行われるケースもあります。(調査が入ること自体は不許可のサインではありません。むしろ判断を保留せずに事実確認をしようとしている段階なので、正直に応対すれば問題ありません)
質問書は第三者が検証できる具体性で書くと通りやすくなる
質問書の書き方は、配偶者ビザの申請で最も差が出る部分です。結論から言えば、「感情」ではなく「事実と日付」を書いてください。「深く愛し合っています」という記述には証明力がなく、「2023年4月15日に大阪市内の飲食店で共通の友人◯◯を介して知り合いました」という記述には証明力があります。
実務で意識しているのは次の点です。
- 出来事はすべて年月まで(可能なら日まで)特定して書く
- 場所は市区町村レベルまで具体的に書く
- 記載した出来事には、対応する写真・渡航記録・メッセージのいずれかを必ず添える
- 連絡頻度は「毎日」ではなく「1日平均10往復程度、通話は週2回」のように定量化する
- 空白期間(半年間連絡が途絶えたなど)がある場合は、隠さず理由を書く
- 結婚を決めた時期と、その意思決定の場面を具体的に描写する
記入欄に収まらない場合は、質問書の該当欄に「別紙のとおり」と記載し、別紙で詳細に書きます。別紙は多くて構いませんが、A4で5枚を超えると読まれにくくなるため、2枚から4枚に収めるのが実務的です。
(質問書は夫婦それぞれが記入する欄があります。ここを片方がまとめて書いて、もう一方が署名だけするのは避けてください。筆跡や文体が明らかに同一だと、それ自体が不自然と受け取られます)
配偶者ビザに年収の絶対基準はないが世帯年収200万円台が実務上の分水嶺
「配偶者ビザは年収いくら必要か」という質問は最も多く受けるものの一つです。公表された基準がない以上、正確な答えは「金額だけでは決まらない」です。ただし、実務の傾向として説明できることはあります。
私が扱ってきた案件の感覚では、世帯年収が300万円を超えていれば収入面が争点になることはほとんどありません。200万円台になると、他の要素と合わせて総合判断される領域に入ります。100万円台以下、あるいは無収入の場合は、預貯金や親族の支援など収入以外の生計基盤を積極的に立証しないと厳しくなります。ただしこれは絶対的な基準ではなく、扶養家族の人数、居住地の家賃水準、預貯金額によって判断は大きく変わります。
世帯年収は日本人配偶者の収入だけで見るわけではない
審査は世帯単位で行われます。日本人配偶者の収入が低くても、すでに日本にいる外国人配偶者が就労系の在留資格で働いていて収入がある場合、その収入も世帯の生計基盤として評価されます。国内での変更申請の場合は、外国人配偶者本人の課税証明書や在職証明書も積極的に提出してください。
また、日本人配偶者の親と同居しており、住居費がかからない、あるいは親からの経済的支援があるという場合も、それを立証すれば評価されます。同居する親の課税証明書と、支援の意思を記載した書面を添付するのが実務の定石です。
無職・転職直後の場合は将来の収入見込みを示す
課税証明書は前年の所得を反映するため、転職直後や就職直後の方は「証明書上は低所得だが実際は違う」という状態になります。この場合は、在職証明書、雇用契約書または労働条件通知書、直近3か月分の給与明細を提出し、現在の月収から年収見込みを算出した書面を添えます。
日本人配偶者が求職中の場合は、内定通知書があればそれを提出します。内定もない状態であれば、預貯金残高証明書で当面の生活費が確保できていることを示した上で、就職活動の状況を説明します。(無職のまま申請して許可が出た案件も実際にありますが、その多くは預貯金が数百万円単位で確保されていたケースです)
預貯金は残高証明書ではなく通帳の写しが有効な場面がある
預貯金を立証する際、残高証明書は「その日時点の残高」しか示しません。申請直前に一時的にお金を集めたのではないかと疑われる余地を残さないためには、直近6か月から1年分の通帳の写しを出すほうが説得力があります。給与の入金と生活費の出金が継続的に記録された通帳は、収入の安定性そのものの証拠になります。
不許可通知が届いたら在留期限の確認と不許可理由の聞き取りを最優先で行う
不許可通知を受け取ったら、感情的になる前にやるべきことが3つあります。在留期限の確認、不許可理由の聞き取り、そして再申請の可否判断です。
国内での変更申請が不許可になった場合、それまでの在留資格の期限が残っていればその期限まで在留できます。期限が切れている、または申請期間中の特例期間(従前の在留期間満了後2か月)で在留していた場合は、不許可時に「出国準備期間」として在留資格「特定活動」の31日または30日が付与されるのが一般的です。この期間内に出国するか、次の手を打つ必要があります。
不許可理由の聞き取りは申請人本人か申請取次者が入管窓口で行う
最も早く不許可理由を知る方法は、入管の窓口で直接説明を求めることです。不許可通知書を持参し、申請人本人または申請取次資格を持つ行政書士・弁護士が窓口に出向くと、審査官が不許可の要点を口頭で説明してくれます。日本人配偶者だけが行っても、原則として説明は受けられません。
この聞き取りで得られる情報の粒度は審査官によって差がありますが、「交際の実体を示す資料が不十分だった」「世帯収入の安定性に疑義があった」といった方向性は示されます。この場で必ず確認すべきは「どの点を補強すれば再申請の余地があるか」です。ここを聞き出せるかどうかで、再申請の成否は大きく変わります。
(窓口では審査官がメモを取らせてくれることが多いので、その場で書き取ってください。後から「たしか収入のことを言われた気がする」という曖昧な記憶で準備を始めると、また同じ失敗を繰り返します)
保有個人情報の開示請求で審査記録を取り寄せる
口頭説明で納得できない場合や、より詳細な審査経過を確認したい場合は、保有個人情報の開示請求という手段があります。地方出入国在留管理官署が保有する自己の個人情報について、本人または代理人が開示を請求できる制度で、手数料は1件あたり300円分の収入印紙です。開示決定は法律上、請求があった日から30日以内に行うこととされています(出典 出入国在留管理庁「地方出入国在留管理官署が保有する個人情報の開示請求について」)。
開示請求で取り寄せられるのは、申請時に提出した書類のほか、審査の過程で作成された記録の一部です。すべてが開示されるわけではなく、審査に支障を及ぼす部分は不開示となりますが、審査官が何を問題視したかの手がかりが得られるケースは実際にあります。
ただし、開示までに1か月前後かかるため、在留期限が迫っている案件では現実的な手段になりません。時間的余裕がある案件(COE不交付で、外国人配偶者が海外にいる場合など)で有効な方法だと考えてください。
再申請は不許可理由を潰し立証資料を入れ替えてから出す
配偶者ビザの再申請に回数制限はありません。ただし、前回と同じ書類で再申請しても結果は変わりません。同じ審査官が同じ資料を見るだけだからです。再申請で結果を変えるには、前回との違いを審査官に明確に示す必要があります。
再申請の準備期間は1か月から3か月を見込む
再申請のタイミングに法律上の制約はなく、翌日に出しても構いません。しかし実務では、不許可理由を特定し、不足していた立証資料を集め直すのに最低でも1か月、婚姻の実体を新たに積み上げる必要がある場合は3か月から6か月を見込みます。
たとえば「同居実態の立証不足」が理由であれば、同居を開始して数か月分の生活実績を作ってから申請したほうが確実です。「収入の安定性」が理由であれば、転職直後なら在職6か月を待つ、あるいは新しい課税証明書が発行される時期(毎年6月ごろ)を待つという判断もあります。
在留期限が迫っている状況では、悠長に準備している時間はありません。出国準備期間が付与された場合、その期間内に再申請しても、出国準備期間中の申請は原則として受理されません。期限が近い場合の対応は次の見出しで解説します。
再申請では前回提出していない証拠を必ず追加する
再申請の書類一式には、次の要素を必ず盛り込みます。
- 前回の不許可を踏まえた再申請であることを明記した理由書
- 不許可理由に直接対応する新しい客観資料(前回未提出のもの)
- 交際経緯書の改訂版(前回より具体的な日付・場所・出来事を追加)
- 不許可後に積み上げた新しい事実(同居開始、転職、収入増、渡航など)の証拠
- 収入面が理由なら、最新の課税証明書・納税証明書・在職証明書・預貯金通帳の写し
- 質問書の再作成版(前回との記載の食い違いが生じないよう前回の写しと照合)
理由書には、前回の不許可を隠さず書きます。「前回の申請では◯◯の資料が不足していたため、今回は△△を追加して提出します」と正面から書くほうが、審査官の理解は得られます。前回の不許可に触れずに新規申請のような顔をして出すと、審査官は必ず過去の記録を参照するため、かえって不誠実に見えます。
手続的には、国内での変更申請の場合、標準処理期間は1か月から2か月、手数料は6,000円(オンライン申請は5,500円)です(出典 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」)。変更申請の手続き全般は在留資格変更許可申請の手続きガイドで解説しています。
在留期限が迫っている場合は出国準備期間の使い方で結果が変わる
不許可時に最も対応が難しいのが、在留期限が切れている、または残りわずかというケースです。ここでの判断ミスはオーバーステイに直結し、その後の申請を根本的に困難にします。
不許可と同時に出国準備期間として在留資格「特定活動」の31日または30日が付与された場合、選択肢は次のとおりです。
| 状況 | 取りうる対応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 不許可理由が軽微で短期間に補強可能 | 出国準備期間中に入管へ相談し、追加資料の提出可否を確認する | 受理されるかは入管の判断による |
| 元の在留資格の期限がまだ残っている | 元の在留資格のまま在留を継続し、準備を整えて再申請 | 元の在留資格の活動を実際に行っている必要がある |
| 補強に数か月かかる | 一度出国し、海外からCOE(在留資格認定証明書)を申請する | COEの標準処理期間は1か月から3か月 |
| 就労可能な資格に該当する | 就労系の在留資格への変更を検討し、生活基盤を作ってから配偶者ビザへ | 学歴・職歴要件を満たす必要がある |
実務で最も安全なのは、一度出国してCOE申請に切り替える方法です。国内にいる状態で期限に追われながら不十分な再申請を繰り返すより、海外から腰を据えて立証資料を整えたほうが結果は良くなります。COE申請は日本人配偶者が代理人として国内の入管に申請できるため、外国人配偶者が海外にいても手続きは進められます。
絶対に避けるべきは、出国準備期間を過ぎてもそのまま日本に留まることです。オーバーステイの状態になると、その事実が今後の全ての申請で素行要素として参照され続けます。数か月の遠回りを嫌って不法残留を選ぶのは、数年単位の遠回りを招く選択です。
なお、無事に許可が出た後も気を抜かないでください。初回は在留期間1年が付与されるのが一般的で、更新のたびに婚姻の継続性が再び審査されます。更新時の実務は配偶者ビザの更新手続きで解説しています。
最後に
配偶者ビザの不許可は、婚姻の真実性か生活の安定性のいずれかを、入管が納得できる形で立証できていないことが原因です。交際期間の短さや年齢差、収入の低さといった事情そのものが不許可を決めるのではなく、それらの事情に対する説明と客観的な証拠が用意されていないことが不許可を決めます。不許可通知を受け取ったら、まず在留期限を確認し、窓口で不許可理由を聞き取り、その理由に正面から応える資料を揃えてから再申請してください。前回と同じ書類で出し直すことだけは避けてください。
在留資格センターでは、配偶者ビザの新規申請から不許可後の再申請まで、ご相談を承っています。3万円からの業界最安値水準で、許可率100%の実績を持つ専門スタッフがオンラインで全国対応いたします。24時間以内にご返信しますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。


