在留カードの在留資格欄に「特定活動」と記載されている場合、その外国人がどのような活動を許可されているかは在留カードだけでは判断できません。特定活動は、法務大臣が個別に活動内容を指定する在留資格であり、具体的な就労範囲はパスポートに貼付された「指定書」を確認する必要があります。この記事では、特定活動の仕組み、指定書の見方、代表的な類型、企業が雇用時に注意すべきポイントまで、実務に即して解説します。
目次
在留カードの「特定活動」は活動内容が個別に指定される在留資格
特定活動は、入管法別表第一の五に規定された在留資格です。技術・人文知識・国際業務や特定技能のように活動内容が法律で類型化されているわけではなく、法務大臣が一人ひとりに対して個別に活動内容を指定する点が他の在留資格と大きく異なります。
つまり、同じ「特定活動」の在留カードを持っていても、ある人はワーキングホリデーで来日している20代の若者であり、別の人は就職活動中の元留学生であり、さらに別の人はEPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者であるという状況が生じます。在留カードの「特定活動」という記載だけでは、その外国人に何が許可されているのか全くわかりません。
(申請の現場では、「特定活動の方を雇いたいが就労できるのか」という問い合わせが非常に多いです。回答は常に「指定書を見なければ判断できません」です)
就労範囲はパスポートに貼付された「指定書」で確認する
特定活動の在留資格を持つ外国人には、パスポートに「指定書」が貼付されています。指定書とは、法務大臣がその外国人に対して許可した具体的な活動内容を記載した書面です。A4サイズの紙がパスポートのページに貼り付けられており、許可された活動の内容、就労の可否、報酬に関する条件などが記載されています。
指定書に記載されている主な情報は以下の通りです。
- 許可された活動の具体的な内容
- 就労が認められるか否か
- 就労が認められる場合の業務範囲
- 報酬の受領に関する条件
- 活動に付随する条件(所属機関の指定など)
実務上は、指定書の原本を確認するためにパスポートの提示を求める必要があります。コピーではなく原本で確認することが望ましく、指定書が貼付されているページを写真撮影して記録に残しておくとよいでしょう。在留カードだけを見て雇用判断をするのは、特定活動の場合は極めて危険です。
在留カードの就労制限欄には「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載される
就労が認められる特定活動の場合、在留カード表面の「就労制限の有無」欄には「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されます。この文言は、「働けるが範囲は指定書次第」という意味です。
一方、就労が認められない特定活動(就職活動中の元留学生など)の場合は「就労不可」と記載されます。ただし、資格外活動許可を取得すれば週28時間以内のアルバイトは可能です。
指定書はパスポートに貼付されているため、パスポートの更新や切替時に指定書が失われるトラブルが稀に発生します。指定書が確認できない場合は、入管に問い合わせるか、行政書士に相談してください。
特定活動の代表的な類型は就労系・非就労系で大きく分かれる
特定活動には告示特定活動(法務大臣が告示で定めた類型)と告示外特定活動(告示には記載されていないが、個別判断で許可される類型)があります。告示特定活動は法務省告示で番号が付されており、「何号」という形で類型化されています。一方、告示外特定活動は告示に番号がなく、入管の裁量で個別に許可されるものです。代表的なものを就労系・非就労系に分けて整理します。
| 類型 | 号数・種別 | 就労の可否 | 概要 |
|---|---|---|---|
| ワーキングホリデー | 告示5号 | 就労可(制限なし) | 二国間協定に基づき休暇目的で入国し、付随的に就労可能 |
| EPA看護師・介護福祉士候補者 | 告示16号〜36号 | 就労可(指定活動のみ) | 経済連携協定に基づく看護・介護分野の候補者 |
| 大卒外国人の幅広い就労(46号) | 告示46号 | 就労可(日本語を用いた業務) | 日本の大学卒でN1相当の日本語力を持つ外国人が対象 |
| デジタルノマド | 告示53号 | 就労可(リモートワーク) | 海外企業からの報酬で日本に滞在しリモートワークを行う |
| 出国準備 | 告示外 | 就労不可 | 在留資格の変更・更新が不許可になった場合の出国準備期間 |
| 卒業後の就職活動 | 告示外 | 就労不可(資格外活動許可で週28時間可) | 留学生が卒業後に就職活動を継続するための在留 |
| 難民申請中の在留 | 告示外 | 場合による | 難民認定申請中の在留を認められた場合 |
このように、同じ「特定活動」でもフルタイムで就労できるものから就労が一切認められないものまで幅広く存在します。在留カードの記載だけで就労可否を判断できないのは、この多様性が理由です。
特定活動46号は大学卒業の外国人が幅広い業務に従事できる比較的新しい制度
特定活動46号は2019年に創設された類型で、日本の大学または大学院を卒業し、日本語能力試験N1(またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上)を有する外国人が対象です。技術・人文知識・国際業務では認められにくい現場業務にも従事できる点が最大の特徴です。在留期間は「1年」または「3年」が付与され、更新に回数制限はありません。家族の帯同も認められており、配偶者や子は「特定活動」(家族滞在に準ずる活動)の在留資格で在留できます。
具体的に従事できる業務の例は以下の通りです。
- 飲食店での接客業務(外国人客への通訳を兼ねるもの)
- 小売店での販売業務(外国人客対応を含むもの)
- ホテルや旅館でのフロント業務
- タクシー会社での外国人旅客への運送業務
- 介護施設での外国人利用者対応を含む介護業務
- 工場のラインで外国人従業員への指導を行いながらの作業
ただし、重要な条件があります。46号は「日本語を用いたコミュニケーションを要する業務」であることが前提です。単純作業のみに従事させることは認められておらず、日本語での接客、通訳、社内の橋渡し役など、日本語能力を活かす業務が含まれている必要があります。
(実務上は、「日本語を使う業務が業務全体のどの程度を占めていれば許可されるのか」という質問をよく受けます。明確な割合基準は公表されていませんが、申請書類では日本語を活用する業務内容を具体的に記載し、単純労働のみではないことを示す必要があります)
企業が特定活動の外国人を雇用する際は指定書の内容確認が必須
特定活動の在留資格を持つ外国人を雇用する場合、企業は以下の手順で確認を行う必要があります。
- 在留カード表面の在留資格が「特定活動」であることを確認
- 在留カードの就労制限欄の記載を確認
- パスポートに貼付された指定書の原本を確認
- 指定書に記載された活動内容と、自社で従事させる業務が合致しているか確認
- 指定書に特定の雇用先が指定されている場合、自社での雇用が可能か確認
特に注意すべきなのは、指定書に特定の所属機関(雇用先)が記載されているケースです。たとえばEPA看護師候補者の場合、指定書に受入れ機関が明記されており、別の機関で働くことはできません。転職を伴う場合は在留資格の変更手続きが必要です。また、指定書には有効期限が明示されていないことが多いですが、在留カードに記載された在留期間の満了日が実質的な期限となります。在留期間の更新を行う際に指定書の内容も改めて審査されるため、更新時に活動実態が指定書の内容と乖離していないかも重要なチェックポイントです。
指定書の活動範囲外の業務をさせると不法就労助長罪に該当する
指定書で許可されていない業務に外国人を従事させた場合、雇用主は不法就労助長罪(入管法第73条の2)に問われる可能性があります。罰則は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。
「在留カードに就労可と書いてあったから大丈夫だと思った」という弁解は通用しません。特定活動の場合、在留カードの記載だけでは就労範囲が特定できないことは法制度上明らかであり、指定書を確認しなかった企業側の過失が問われます。外国人本人だけでなく、雇用する企業の責任者が処罰対象となる点を認識しておく必要があります。
ワーキングホリデーの指定書を持つ外国人を正社員としてフルタイム雇用するケースがありますが、ワーキングホリデーはあくまで「休暇目的」の在留資格です。長期的な雇用を前提とする場合は、技術・人文知識・国際業務や特定技能など、適切な在留資格への変更を検討してください。
特定活動から他の在留資格への変更は可能だが条件がある
特定活動の在留資格から他の在留資格へ変更することは可能です。ただし、変更先の在留資格の要件を満たしていることが前提となります。実務上よくある変更パターンを整理します。
| 変更前(特定活動の類型) | 変更先 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 就職活動(元留学生) | 技術・人文知識・国際業務 | 就職先が決まり、業務内容が在留資格に合致すること |
| 就職活動(元留学生) | 特定活動46号 | 日本の大学卒+N1、日本語を活かす業務に従事すること |
| ワーキングホリデー | 技術・人文知識・国際業務 | 学歴・職歴要件を満たし、業務内容が合致すること |
| 特定活動46号 | 技術・人文知識・国際業務 | 転職先の業務が技人国の範囲に該当すること |
| 出国準備 | 他の在留資格 | 原則として変更は困難(個別事情による判断) |
注意が必要なのは、出国準備の特定活動から他の在留資格への変更です。出国準備は文字通り日本を離れるための期間として付与されるものであり、原則として他の在留資格への変更は認められません。ただし、日本人との婚姻など特別な事情が生じた場合は個別に判断されることがあります。
(「出国準備の特定活動中に就職先が見つかったから就労ビザに変更したい」という相談は少なくありませんが、認められるケースは非常に限られます。出国準備に至る前の段階で対策を講じることが重要です)
なお、変更申請の審査期間は通常1か月から3か月程度です。特定活動の在留期間が短い場合(たとえば就職活動の特定活動は6か月ごとの更新)、変更申請中に在留期間が満了することがあります。申請が期限内に受理されていれば、審査結果が出るまで(最長2か月)は適法に在留を続けられますが、スケジュールに余裕を持って申請することが実務上は鉄則です。
最後に
在留カードに「特定活動」と記載されている場合、就労の可否や活動範囲はパスポートの指定書を確認しなければ判断できません。企業が特定活動の外国人を雇用する際は、指定書の原本を必ず確認し、許可された活動内容と業務の整合性を検証してください。確認を怠れば不法就労助長罪のリスクを負うことになります。
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