特定技能「介護」の要件・受入れ可能施設・訪問介護の対応状況を解説

この記事で解決できるお悩み
  • 介護分野で特定技能外国人を受け入れる要件は?
  • 訪問介護でも特定技能を使えるか知りたい
  • 介護分野の特定技能試験の内容を確認したい

特定技能「介護」は、深刻な人手不足に直面する介護業界にとって、外国人材を確保するための最も現実的な制度です。介護分野は特定技能16分野の中でも受入れ人数が最多であり、制度の利用は年々加速しています。一方で、介護分野には他の分野にはない固有の試験要件や受入れ施設の制限があり、正確な理解なしに申請を進めると不許可やトラブルにつながります。この記事では、介護分野の特定技能について、要件・対象施設・訪問介護の解禁状況・キャリアパスまで、実務で必要な情報を網羅的に解説します。

特定技能「介護」は受入れ人数が最も多い主要分野

特定技能制度は2019年4月に創設されましたが、その中でも介護分野は受入れ人数が全16分野中トップです。出入国在留管理庁の統計によると、2024年6月末時点で介護分野の特定技能在留外国人数は約3万6,000人に達しており、飲食料品製造業や建設分野を上回っています(出典 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」)。

介護分野の受入れ見込数(上限数)は、2024年の閣議決定で2024年度からの5年間で13万5,000人と設定されました。これは全分野の中でも最大規模の枠であり、国としても介護人材の確保を最重要課題と位置付けていることがわかります。送出し国別ではベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーからの受入れが多く、特にベトナム国籍の特定技能外国人が全体の過半数を占めています。

(申請の現場では、介護施設からの相談件数がここ2年で急増している実感があります。特に地方の特別養護老人ホームや老健施設では、日本人の応募がほぼゼロという状況も珍しくなく、特定技能が「最後の頼みの綱」になっているケースを多く見てきました)

介護分野の特定技能外国人に求められる要件は技能試験と日本語試験の合格

特定技能1号「介護」で在留資格を取得するためには、以下の試験に合格する必要があります。

試験の種類 試験名 実施主体 合格基準
技能試験 介護技能評価試験 厚生労働省(プロメトリック社が実施) 総得点の60%以上
日本語試験(共通) 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)またはJLPT N4以上 国際交流基金 / 日本国際教育支援協会 JFT-Basic 200点以上 / JLPT N4以上
日本語試験(介護固有) 介護日本語評価試験 厚生労働省(プロメトリック社が実施) 総得点の60%以上

介護分野は他の分野と異なり、共通の日本語試験に加えて介護固有の日本語試験も合格が必要です。この点を見落として申請準備を進めてしまう事業者は少なくありません。

介護分野固有の日本語試験(介護日本語評価試験)も必須

介護日本語評価試験は、介護の現場で必要な日本語コミュニケーション能力を測る試験です。具体的には、介護の専門用語の理解、利用者やスタッフとの声かけ表現、介護記録の読み書きなどが出題範囲に含まれます。

実務上、この試験の存在は合理的だと感じています。介護の現場では「体位変換」「清拭」「嚥下」といった日常会話では使わない専門用語が飛び交います。利用者の体調変化を正確に報告できなければ、事故やトラブルにつながるリスクがあるため、一般的な日本語能力だけでは介護現場で即戦力にはなれないのが実情です。

試験は海外(フィリピン、インドネシア、ベトナム、ネパール、カンボジアなど)でも受験可能であり、日本国内でもCBT方式で随時受験できます(出典 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」)。

EPA介護福祉士候補者・技能実習修了者は試験免除の対象

以下に該当する方は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。

  • 介護分野の技能実習2号を良好に修了した者
  • EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者として4年間の在留を満了した者
  • 介護福祉士養成施設を修了した者

特に技能実習2号からの移行は、現在最も多いルートです。技能実習で3年間の経験を積んだ外国人が、同じ施設または別の施設で特定技能1号に移行し、さらに5年間就労するというパターンが定着しつつあります。

(技能実習からの移行の場合でも、在留資格変更許可申請は別途必要です。「試験が免除されるから手続きも簡単」と思い込んでいる事業者がいますが、申請書類の準備は通常の特定技能申請と同じボリュームが求められます)

受入れ可能な介護施設の範囲は特養・老健・デイサービスなど幅広い

特定技能「介護」で外国人を受け入れられる施設は、介護保険法に基づく幅広い事業所が対象です。主な対象施設は以下の通りです。

施設類型 具体例
入所系施設 特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、認知症対応型グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅 など
通所系施設 デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)
短期入所系施設 ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)
障害福祉サービス系 障害者支援施設、グループホーム(共同生活援助)、生活介護事業所 など

対象範囲が広いため、多くの介護事業者が特定技能の制度を利用できます。ただし、施設が介護保険法または障害者総合支援法に基づく指定を受けていることが前提条件となります。無届のサービス付き高齢者向け住宅や、いわゆる「住宅型」で介護サービスの指定を受けていない施設では受入れができません。

また、受入れ人数にも上限があります。事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を超えてはならないというルールです。たとえば常勤の日本人介護職員が10人の施設であれば、特定技能外国人の受入れ上限も10人となります。この上限は事業所ごとに判断されるため、複数の事業所を運営している法人は事業所単位で計算する必要があります。

訪問介護は2024年以降に段階的な解禁が進んでいる

特定技能「介護」では、制度創設当初から訪問系サービス(訪問介護、訪問入浴介護など)は対象外とされてきました。利用者の居宅で1対1のサービスを提供するため、日本語能力やコミュニケーション面での懸念、サービスの質の担保、利用者保護の観点から慎重な姿勢が取られていたためです。

しかし、訪問介護の人手不足は施設系以上に深刻であり、政府は2024年以降、段階的な解禁に向けた議論を進めています。厚生労働省の有識者検討会では、一定の条件(研修の実施、巡回訪問によるサポート体制の構築など)を満たすことを前提に、訪問介護への受入れを認める方向で検討が進められました。

2025年4月時点では、訪問介護への解禁に向けた具体的な要件整備が進行中です。受入れ事業所に対して追加の研修実施義務やサービス提供責任者による同行指導が求められる見込みであり、施設系と同じ感覚で即座に受入れができるわけではありません。

(訪問介護の事業者からは「いつから外国人を入れられるのか」という問い合わせが増えていますが、実務上は制度の詳細が確定するまで慎重に待つべきだと考えています。見切り発車で準備を進めても、要件が変わればやり直しになります)

介護分野の受入れの流れは他分野と共通だが事前ガイダンスの内容が異なる

特定技能「介護」の受入れの基本的な流れは、他の分野と大きく変わりません。

  • 外国人が技能試験・日本語試験に合格する(または試験免除の要件を満たす)
  • 受入れ機関(介護施設)と雇用契約を締結する
  • 1号特定技能外国人支援計画を策定する
  • 在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)または在留資格変更許可申請(国内から移行する場合)を行う
  • 入国後または変更後に就労を開始する

ただし、介護分野では事前ガイダンスの中で介護業務の内容や介護現場でのコミュニケーションに関する説明を行うことが求められています。単に生活支援の情報を伝えるだけでなく、身体介護の業務範囲、夜勤の有無、利用者との関わり方など、介護特有の就労環境について丁寧に説明しなければなりません。

また、受入れ機関は登録支援機関に支援を委託するか、自社で支援体制を構築するかを選択する必要があります。介護施設の規模や人事体制を踏まえると、中小規模の施設では登録支援機関への委託が現実的です。自社支援を選ぶ場合は、過去2年間に外国人の受入れ実績があること、支援責任者・支援担当者を選任できることなどが要件となります。

介護分野では、受入れ後の定期的な届出も重要です。受入れ機関は四半期ごとに出入国在留管理庁へ「受入れ状況に関する届出」を提出しなければなりません。届出が遅れたり未提出のまま放置すると、次回の受入れ時に不利に働く可能性があります。(届出を忘れている事業者は想像以上に多いです。特に初めて特定技能を受け入れた施設では、届出の存在自体を知らなかったというケースも珍しくありません)

介護分野特有の注意点は「人員配置基準」と「夜勤体制」

介護分野で特定技能外国人を受け入れる際、他の分野にはない注意点があります。

まず、特定技能外国人は受入れ開始から6か月を経過するまで、人員配置基準上の介護職員としてカウントできない場合があります。これは厚生労働省の運用方針によるもので、配置基準ギリギリで運営している施設が特定技能外国人を受け入れても、すぐに人員不足を解消できるわけではないことを意味します。

次に、夜勤体制です。特定技能外国人に夜勤をさせること自体は禁止されていませんが、就労開始直後から単独で夜勤に入れることは避けるべきです。介護分野の運用要領では、利用者の安全確保の観点から、十分な研修期間を経てから夜勤に従事させることが求められています。具体的には、日本人スタッフとの複数人体制で夜勤を経験させた上で、段階的に業務の幅を広げていくのが望ましい運用です。

人員配置基準を満たさない状態で介護報酬を請求すると、介護報酬の返還請求や行政処分の対象となります。特定技能外国人の受入れを人員配置基準の充足にカウントできるタイミングを正確に把握した上で、運営計画を立ててください。

健康診断は年1回の実施が義務付けられている

特定技能外国人に対しては、受入れ機関が年1回以上の健康診断を実施する義務があります。これは特定技能制度全体に共通するルールですが、介護分野では特に重要です。

介護業務は身体的な負荷が大きく、腰痛や感染症のリスクもあります。健康診断の項目は、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の項目(既往歴、身長・体重、視力・聴力、胸部X線、血液検査など)が基本です。

加えて、入国前の段階でも健康診断書の提出が求められます。在留資格の申請時に、本国の医療機関で受診した健康診断書を添付するのが一般的です。結核に関するスクリーニング検査も含まれるため、入国前の準備段階で漏れがないよう注意してください。

(実務上、健康診断の費用負担でトラブルになるケースを見かけます。受入れ機関が負担するのか、外国人本人が負担するのかを雇用契約や支援計画の段階で明確にしておくことが重要です。多くの場合、受入れ機関が費用を負担しています)

介護分野の特定技能から介護福祉士の国家資格取得へのキャリアパス

介護分野の特定技能には、他の分野にはない大きなメリットがあります。それは、介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更できるという点です。

在留資格「介護」は就労系の在留資格の一つで、特定技能1号のような通算5年の在留期間上限がありません。更新を続ける限り日本で働き続けることができ、家族帯同も認められます。つまり、特定技能「介護」は日本での長期的なキャリア形成の入口となり得るのです。

介護福祉士の国家試験を受験するためには、実務経験3年以上に加えて、介護福祉士実務者研修(450時間)の修了が必要です。特定技能1号の在留期間(通算5年)の中で受験要件を満たし、国家試験に合格するというスケジュール感になります。

ステップ 内容 時期の目安
特定技能1号で就労開始 介護施設で実務経験を積む 1年目〜
実務者研修を受講 介護福祉士実務者研修(450時間)を修了する 2年目〜3年目
国家試験を受験 介護福祉士国家試験に合格する(実務経験3年以上が受験要件) 4年目以降
在留資格を変更 特定技能1号から在留資格「介護」へ変更申請 合格後

(このキャリアパスがあることで、介護分野は他の特定技能分野と比べて外国人材にとっての魅力が高いと感じています。「5年で帰国しなければならない」のではなく、「努力次第で日本に永く住み続けられる」という見通しが立つため、モチベーションの高い人材が集まりやすい傾向があります)

なお、特定技能2号の介護分野への対象拡大については、在留資格「介護」が既に存在するため、現時点では対象外とされています。介護分野で在留期間の制限なく働くルートは、介護福祉士の国家資格取得が唯一の道です。受入れ機関としても、外国人材の長期定着を目指すのであれば、国家試験対策の学習時間確保や受験費用の補助など、介護福祉士取得を支援する体制づくりが求められます。実際に、介護福祉士取得支援に積極的な施設ほど人材の定着率が高い傾向があると感じています。

介護分野で不許可・トラブルになりやすいパターン

申請の現場で実際に目にする、介護分野特有の不許可理由やトラブル事例を整理します。

  • 介護日本語評価試験の合格を見落とし、共通の日本語試験だけで申請してしまう
  • 受入れ施設が介護保険法上の指定を受けていない(無届の高齢者住宅など)
  • 雇用契約書の業務内容に「介護業務」以外の業務(清掃のみ、調理のみなど)が主たる業務として記載されている
  • 報酬額が日本人の同等業務従事者と比較して著しく低い
  • 支援計画の内容が形式的で、介護分野特有のガイダンス内容が不足している

特に多いのが、業務内容の記載の問題です。特定技能「介護」で認められる業務は「身体介護等(入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)」とされています。清掃や洗濯、調理といった業務は「付随する業務」として認められますが、これらが主たる業務になっている場合は不許可となります。

また、報酬額に関しても注意が必要です。日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であることが要件です。「外国人だから安く雇える」という認識は完全に誤りであり、同じ施設で同じ業務に従事する日本人スタッフと同等以上の給与水準でなければ、在留資格の許可は下りません。入管は申請時に賃金台帳の提出を求め、既存の日本人職員との給与比較を行いますので、形式的に同額に設定しただけでは通りません。各種手当を含めた実質的な報酬水準が審査されます。

不許可になった場合、再申請には不許可理由の分析と対策が必要です。特に業務内容や報酬額に関する不許可は、雇用契約自体の見直しが求められるため、最初の申請段階で専門家に相談することを強く推奨します。


最後に

特定技能「介護」は、介護業界の人手不足を解消するための中核的な制度として定着しつつあります。受入れ人数は全分野中トップであり、今後も拡大が見込まれています。一方で、介護分野には固有の日本語試験要件、受入れ施設の制限、人員配置基準の扱い、訪問介護の解禁動向など、他の分野にはない論点が多く、正確な知識と準備が不可欠です。

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