特定技能「外食・飲食料品製造業」の要件と受入れの流れ

この記事で解決できるお悩み
  • 外食業で特定技能外国人を雇いたいが要件は?
  • 飲食料品製造業の対象業務の範囲を知りたい
  • 外食分野の受入れまでの流れを把握したい

特定技能の中でも外食業と飲食料品製造業は、受入れ人数・企業からの問い合わせともに上位に位置する分野です。飲食店の人手不足は全国的に深刻であり、食品工場も同様の状況にあります。しかし、外食と飲食料品製造業は制度上「別の分野」として区分されており、試験も業務範囲も異なります。この記事では、両分野の違い・試験・業務範囲・受入れの実務上の注意点まで、申請に必要な情報を整理して解説します。

外食業と飲食料品製造業は特定技能の中でも受入れ需要が高い分野

特定技能制度の全16分野の中で、飲食料品製造業は在留外国人数が最も多い分野の一つです。出入国在留管理庁の統計によると、2024年6月末時点で飲食料品製造業の特定技能在留外国人数は約5万8,000人に達しており、全分野の中でもトップクラスの規模です(出典 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」)。外食業も約1万2,000人と着実に増加しています。

2024年の閣議決定では、2024年度からの5年間の受入れ見込数として飲食料品製造業が8万7,000人、外食業が5万3,000人と設定されました。いずれも大幅な拡大枠であり、政府としても食関連産業の人材確保を重要課題と位置付けていることがわかります。

(実務上、飲食業界からの相談は「とにかく人がいない、明日にでも欲しい」という切迫感が強いです。特に地方の食品加工工場やチェーン展開する飲食店では、日本人のアルバイトすら確保が難しく、特定技能が実質的に唯一の安定した人材確保手段になっている現場を何度も見てきました)

外食と飲食料品製造業は別分野として試験・業務範囲が区分されている

外食業と飲食料品製造業は、日常的には「飲食系」とひとまとめにされがちですが、特定技能制度上は完全に別の分野です。試験も異なり、従事できる業務範囲も異なります。この区分を正確に理解しないまま申請を進めると、不許可や在留資格取消しのリスクがあります。

項目 外食業 飲食料品製造業
所管省庁 農林水産省 農林水産省
技能試験 外食業技能測定試験 飲食料品製造業技能測定試験
主な業務 調理、接客、店舗管理 食品の製造・加工、安全衛生管理
対象事業所 飲食店、テイクアウト専門店、仕出し・弁当屋、給食センター等 食品製造工場、水産加工場、菓子製造所、惣菜工場等
特定技能2号 対象 対象
技能実習からの移行 対象となる技能実習の職種が限定的 多くの食品関連の技能実習職種から移行可能

(よくある誤解として「外食の試験に受かればコンビニの食品工場でも働ける」というものがありますが、これは間違いです。コンビニ弁当の製造工場で働くなら飲食料品製造業の試験合格が必要ですし、逆に飲食料品製造業の試験に受かっていても飲食店のホールで接客はできません。分野をまたいだ就労は認められない点を、受入れ企業には必ず説明しています)

両分野の技能試験は一般社団法人外国人食品産業技能評価機構が実施している

外食業技能測定試験と飲食料品製造業技能測定試験は、いずれも一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施しています(出典 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構「OTAFFウェブサイト」)。農林水産省の委託を受けた試験実施機関であり、試験の申込み・合格証明書の発行もOTAFFが行います。

試験はCBT方式(コンピューター上での受験)で実施され、日本国内に加えて海外でも受験可能です。試験言語は日本語のほか、英語、ベトナム語、インドネシア語、ミャンマー語、タイ語、中国語など複数言語から選択できます。試験時間はいずれも学科と実技(図やイラストを用いた判断問題)を合わせて概ね80分程度で、合格基準は総得点の65%以上です。

なお、技能試験とは別に日本語能力の証明も必要です。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格、または日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格が求められます。外食業・飲食料品製造業ともに、介護分野のような分野固有の日本語試験はありません。

試験の実施頻度と合格率

試験は国内外で年間を通じて複数回実施されています。日本国内では概ね毎月のように試験日が設定されており、海外でも主要な送出し国(ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、ネパール等)で定期的に開催されています。

合格率は時期や受験地によって変動しますが、外食業が概ね七割前後、飲食料品製造業が概ね六割から七割程度で推移しています。他の分野と比較すると合格率は比較的高い水準にありますが、日本語での出題に慣れていない受験者は不合格になるケースも少なくありません。

(受験申込みはOTAFFの専用サイトから行いますが、人気の試験日は定員に達して締め切られることがあります。特に海外会場では定員が少ないため、早めの申込みを外国人本人に案内しておくことが重要です。受入れ企業が「試験はいつでも受けられる」と思い込んでスケジュールが後ろ倒しになるケースを何度も見てきました)

外食分野で従事できる業務範囲は調理・接客・店舗管理が中心

外食業分野の特定技能外国人が従事できる業務は、飲食物の調理、接客、店舗管理の三つが中心です。具体的には以下のような業務が該当します。

  • 食材の仕込み、加熱調理、盛り付けなどの調理全般
  • 客席への案内、オーダー受付、配膳、会計対応などの接客業務
  • 店舗の清掃、食材の発注・在庫管理、従業員のシフト管理などの店舗管理業務
  • デリバリー・テイクアウトの対応

ポイントは、これらの業務に「主として」従事することが求められる点です。清掃だけ、皿洗いだけといった単純作業のみに従事させることは認められません。あくまで飲食店における一連の業務に幅広く携わることが前提です。

対象となる事業所は、日本標準産業分類における「飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「配達飲食サービス業」「給食事業」に該当する事業所です。居酒屋、ラーメン店、ファミリーレストラン、カフェ、弁当屋、社員食堂、病院や学校の給食センターなど、幅広い業態が対象になります。

飲食料品製造業は加工・安全衛生管理が中心業務

飲食料品製造業分野で従事できる業務は、外食業とは性質が異なります。飲食料品の製造・加工、安全衛生管理が中心であり、工場や加工場での作業が主な就労場所です。

  • 原料の処理(洗浄、皮むき、骨取り、カットなど)
  • 加熱、殺菌、成形、発酵などの製造・加工工程
  • 製品の包装、箱詰め、検品、出荷準備
  • 製造ラインの衛生管理、HACCPに沿った安全衛生の実施

飲食料品製造業の対象範囲は非常に広く、食肉加工、水産加工、野菜のカット加工、パン・菓子製造、惣菜製造、冷凍食品製造、清涼飲料水の製造、酒類の製造など、食品に関わる製造業全般が含まれます。スーパーマーケットや百貨店のバックヤードで惣菜を製造する部門も、一定の要件を満たせば対象になります。

(飲食料品製造業は対象範囲が広いだけに「うちの会社は対象に入るのか」という相談が多い分野です。実務上は、事業所の日本標準産業分類上の分類が判断基準になります。自社の分類がわからない場合は、管轄のハローワークや統計局のサイトで確認できます)

外食・飲食料品製造業で特定技能外国人を受入れる流れ

外食業・飲食料品製造業で特定技能外国人を受け入れる場合、海外からの呼び寄せと国内在住者の切替えで手順が異なりますが、大まかな流れは共通しています。

段階 内容 所要期間の目安
人材の募集・選定 海外の送出し機関や国内の人材紹介会社を通じて候補者を選定 1〜2か月
雇用契約の締結 特定技能雇用契約書を締結し、業務内容・報酬・労働条件を確定 1〜2週間
支援計画の策定 1号特定技能外国人支援計画を作成(自社支援または登録支援機関に委託) 1〜2週間
在留資格の申請 海外からの場合はCOE申請、国内の場合は在留資格変更許可申請を入管に提出 1〜3か月
許可後の対応 海外の場合はビザ取得・入国、国内の場合は在留カード交付。協議会への加入届出 2〜4週間
就労開始 生活オリエンテーションの実施後、業務開始。外国人雇用状況届出をハローワークに提出 即日

全体で海外からの呼び寄せの場合は4〜6か月、国内在住者の切替えの場合は2〜4か月が目安です。飲食業界は人材の入れ替わりが早い業界ですが、特定技能は準備から就労開始まで数か月かかる点を念頭に、早めの計画が重要です。

飲食業界で特定技能外国人を受入れる際の実務上の注意点

外食業・飲食料品製造業に共通する実務上の注意点を整理します。

まず、受入れ機関(企業)が食品産業特定技能協議会に加入する義務があります。初めて特定技能外国人を受け入れる場合、受入れ後4か月以内に農林水産省が設置する協議会への加入手続きを行わなければなりません。加入自体に費用はかかりませんが、届出を怠ると受入れの継続に支障が出る可能性があります。

次に、雇用形態の問題です。外食業・飲食料品製造業ともに、直接雇用が原則です。派遣形態での受入れは認められていません。飲食店や食品工場が人材派遣会社を通じて外国人労働者を受け入れるスキームは、特定技能では利用できません。

報酬額についても注意が必要です。日本人と同等額以上の報酬を支払うことが要件であり、最低賃金を上回っているだけでは不十分です。同じ事業所で同じ業務に従事する日本人がいる場合は、その日本人と同等以上の水準でなければ許可は下りません。

飲食業界ではアルバイトやパートの比率が高い事業所が多いですが、特定技能外国人はフルタイムの直接雇用が前提です。週28時間以内のアルバイト感覚で受入れることはできません。雇用契約書の作成段階で、所定労働時間、報酬額、業務内容を明確にしてください。

また、支援体制の構築も欠かせません。特定技能1号の外国人に対しては、受入れ企業自身または登録支援機関が「1号特定技能外国人支援計画」に基づく支援を実施する義務があります。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談・苦情対応、日本語学習の機会提供などが含まれます。中小規模の飲食店では自社支援の体制構築が難しいため、登録支援機関への委託が現実的な選択肢です。

(外食業では人の入れ替わりが激しい業界特性もあり、「特定技能の外国人も辞めたら次をすぐ入れればいい」と考える経営者がいます。しかし特定技能は採用から入国・就労開始まで数か月かかるのが通常です。計画的な人員確保が不可欠だという点を、最初の面談で必ずお伝えしています)

技能実習「医療・福祉施設給食製造」からの移行も可能

技能実習から特定技能への移行ルートは、飲食料品製造業では多くの職種で整備されています。技能実習2号を良好に修了した者は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。

飲食料品製造業に移行できる主な技能実習の職種・作業は以下の通りです。

  • 缶詰巻締(缶詰巻締)
  • 食鳥処理加工業(食鳥処理加工)
  • 加熱性水産加工食品製造業(節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造等)
  • 非加熱性水産加工食品製造業(塩蔵品製造、乾製品製造等)
  • 水産練り製品製造(かまぼこ製品製造)
  • 牛豚食肉処理加工業(牛豚部分肉製造)
  • ハム・ソーセージ・ベーコン製造(ハム・ソーセージ・ベーコン製造)
  • パン製造(パン製造)
  • 惣菜製造業(惣菜加工)
  • 医療・福祉施設給食製造(医療・福祉施設給食製造)

特に注目すべきは「医療・福祉施設給食製造」からの移行です。病院や介護施設で給食製造の技能実習を行っていた外国人が、技能実習2号修了後に飲食料品製造業の特定技能1号に移行できます。給食製造で培った衛生管理や大量調理の経験は、食品製造工場でも即戦力として活かせるため、実務上は非常にスムーズな移行パターンです。

一方、外食業については対応する技能実習の職種が「医療・福祉施設給食製造」のみとされており、移行ルートは限定的です。そのため、外食業分野で特定技能外国人を確保するには、技能試験の合格者を採用するルートが中心になります。

(技能実習から特定技能への移行を検討する際、「同じ会社で引き続き働いてもらえる」と考える企業が多いですが、特定技能は転職が可能な在留資格です。技能実習時代の待遇に不満があれば他社に移ることもできるため、待遇面での競争力を確保しておくことが、人材の定着には不可欠です)


最後に

外食業と飲食料品製造業は、特定技能制度の中でも受入れ需要が特に高い分野です。両分野は制度上別の分野として区分されており、技能試験も業務範囲も異なるため、正確な理解の上で申請を進める必要があります。試験の合格から在留資格の申請、協議会への加入、支援計画の策定まで、対応すべき手続きは多岐にわたります。

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