特定技能「建設」は、16分野の中で最も独自ルールが多い分野です。他の分野であれば入管への申請と協議会への加入だけで済むところが、建設分野ではJAC(建設技能人材機構)への加入、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録、受入れ人数の上限規制、国土交通大臣による建設特定技能受入計画の認定など、上乗せ要件が次々と課されます。建設業界は新川が日常的に扱っている分野ですが、初めて特定技能を受け入れる建設会社からの相談では、この上乗せ要件の多さに驚かれることがほとんどです。この記事では、建設分野の特定技能について、対象業務・固有要件・受入れ上限・トラブル事例まで実務目線で解説します。
目次
建設分野は特定技能の中で最も独自ルールが多い分野
特定技能の建設分野は、他の15分野と比較して制度上の独自ルールが圧倒的に多いのが特徴です。その背景には、建設業界特有の構造的な問題があります。
まず、建設業界は重層下請構造が一般的であり、元請・一次下請・二次下請と複数の企業が関与する中で、外国人労働者の就労管理が行き届かなくなるリスクが高い。技能実習制度では、建設分野で失踪や賃金未払いといった問題が他分野以上に多発していた経緯があり、特定技能制度の設計段階から建設分野には厳格な管理体制が求められました。
建設分野に課されている主な独自ルールは以下の通りです。
- JAC(一般社団法人建設技能人材機構)への加入が必須
- 国土交通大臣による「建設特定技能受入計画」の認定が必要
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への事業者登録・技能者登録が義務
- 受入れ人数に上限あり(常勤職員の総数まで)
- FITS(国際建設技能振興機構)による巡回訪問の受入れが必要
- 月給制での報酬支払いが原則
(実務上、建設会社の社長さんから「他の分野は簡単に受け入れられるのに、なぜ建設だけこんなに面倒なんだ」と言われることがあります。正直に言えば、過去の技能実習での問題が多すぎた結果です。制度を厳しくせざるを得なかった経緯を理解した上で、一つひとつ要件をクリアしていくしかありません)
なお、建設分野の特定技能外国人数は増加を続けており、出入国在留管理庁の統計によると主要分野の一角を占めています(出典 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」)。建設業界の人手不足の深刻さを反映して、独自ルールの多さにもかかわらず受入れニーズは高い状況が続いています。
建設分野の対象業務区分は「土木」「建築」「ライフライン・設備」の三区分に再編された
建設分野の対象業務は、制度創設当初は細かい職種別に区分されていましたが、2022年8月の告示改正により「土木」「建築」「ライフライン・設備」の三つの業務区分に再編されました。
| 業務区分 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 土木 | 掘削、路盤整正、敷均し・締固め、コンクリートの打込み、法面保護工、基礎工、建設機械の運転、測量・墨出し など |
| 建築 | 型枠施工、鉄筋施工、とび、屋根ふき、左官、内装仕上げ、コンクリート圧送、防水施工、塗装 など |
| ライフライン・設備 | 配管、電気通信、電気工事、保温保冷、建設機械施工 など |
この再編の意味は大きいです。旧区分では「鉄筋施工」の特定技能外国人は鉄筋の作業しかできませんでしたが、新区分では「建築」区分に統合されたことで、同じ区分内の他の業務にも従事できるようになりました。現場の実態として、建設作業員が一つの作業だけに専従することは少なく、状況に応じて複数の作業を行うのが通常です。業務区分の統合は、この現場実態に合わせた合理的な改正だったと言えます。
ただし、業務区分をまたいだ従事はできません。「土木」区分で受け入れた外国人が「建築」区分の作業に従事すれば、資格外活動に該当する可能性があります。自社の工事内容がどの業務区分に該当するかは、受入計画の認定申請の段階で正確に整理しておく必要があります。
(現場では「うちは土木も建築もやる」という会社が多いのですが、その場合は両方の区分で受入計画の認定を受ける必要があります。面倒に感じるかもしれませんが、ここを曖昧にしたまま受け入れると後々問題になります)
建設分野特有の要件はJAC(建設技能人材機構)への加入義務
建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには、JAC(一般社団法人建設技能人材機構)に加入することが必須です。JACは、建設分野の特定技能制度を適正に運営するために設立された団体であり、受入れ企業の管理・監督、技能試験の実施、外国人への転職支援などを担っています。
JACへの加入方法は二つあります。
- JACの正会員団体(建設業者団体)に所属する企業は、その団体を通じて間接的に加入できる
- 正会員団体に所属していない企業は、JACに賛助会員として直接加入する
どちらのルートで加入しても、特定技能外国人を受け入れるための要件は満たされます。ただし、正会員団体を通じた加入のほうが費用面で有利になるケースが多いため、自社が加入できる建設業者団体があるか事前に確認することをお勧めします。
JAC加入費用と手続きの流れ
JACに賛助会員として直接加入する場合の費用は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| JAC賛助会員年会費 | 24万円(令和6年度時点) |
| 受入負担金(特定技能1号) | 月額1万2,500円〜2万円/人 |
| 受入負担金(特定技能2号) | 月額程度/人(1号より低額) |
正会員団体経由の場合は、年会費が不要またはJACへの直接加入より安くなる場合があります。ただし、正会員団体への会費が別途発生するため、トータルコストで比較する必要があります(出典 一般社団法人建設技能人材機構「JACについて」)。
手続きの流れとしては、まずJACへの加入申請を行い、加入が承認された後に国土交通大臣への建設特定技能受入計画の認定申請を行います。受入計画の認定がなければ入管への在留資格申請ができないため、スケジュールには十分な余裕を持つ必要があります。
JAC加入から受入計画の認定、入管への在留資格申請、許可取得まで、建設分野は他の分野と比べて手続き期間が長くなります。海外から呼び寄せる場合は、着手から就労開始まで半年以上かかることも珍しくありません。特に年度末や繁忙期は国土交通省の審査にも時間がかかるため、早めの着手を強く推奨します。
建設分野の受入れ人数には企業ごとの上限がある(常勤職員数まで)
建設分野では、1号特定技能外国人の受入れ人数が「企業の常勤職員の総数」を超えてはならないというルールがあります。これは建設分野にのみ課されている独自の上限規制です。
たとえば、常勤の日本人職員(技能実習生を除く)が10人の建設会社であれば、特定技能1号の外国人も最大10人まで。常勤職員が3人の小規模事業者であれば、特定技能外国人は3人までとなります。
この上限は、建設現場における安全管理体制の確保が目的です。外国人労働者の割合が高くなりすぎると、安全指示の伝達や緊急時の対応に支障をきたすリスクがあるという判断に基づいています。
実務上、問題になりやすいのは「常勤職員」の定義です。常勤職員とは、社会保険に加入している雇用期間の定めのない従業員を指します。パート・アルバイト、日雇い労働者、技能実習生は常勤職員にカウントされません。建設業界では日雇いや期間雇用の作業員を多く抱えている企業も少なくありませんが、これらの労働者は常勤職員に含まれないため、想定よりも受入れ上限が少なくなるケースがあります。
(「うちは現場に30人いるから30人まで入れられる」と言われることがありますが、社会保険加入の常勤職員が5人しかいなければ上限は5人です。ここを正確に把握しないまま受入計画を申請すると、認定されません)
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が義務付けられている
建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に事業者登録を行い、受け入れる外国人を技能者として登録することが義務付けられています。
CCUSとは、建設技能者の資格・就業履歴・社会保険加入状況などを業界横断的に蓄積・管理するシステムです。ICカードを使って現場への入退場を記録し、技能者のキャリアを「見える化」することで、適正な処遇改善や能力評価につなげることを目的としています(出典 建設キャリアアップシステム公式サイト)。
登録に必要な手続きは以下の通りです。
- 事業者登録(建設会社自体の登録。資本金に応じた登録料が必要)
- 技能者登録(特定技能外国人個人の登録。顔写真付きICカードが発行される)
- 現場での就業履歴の蓄積(カードリーダーによる入退場記録)
CCUSの登録は、国土交通大臣の受入計画認定の要件にもなっています。つまり、CCUS未登録の状態では受入計画が認定されず、結果として在留資格の申請もできないという流れです。
費用面では、事業者登録料は資本金500万円未満の事業者で6,000円、資本金500万円以上1,000万円未満で12,000円といった形で資本金額に応じた設定がされています。技能者登録は1人あたり2,500円(簡略型)または4,900円(詳細型)です。
(CCUSは建設業界全体で普及が進んでいる途中ですが、特定技能の受入れにおいては「義務」です。「うちはまだCCUSに入っていない」という企業は、特定技能外国人を受け入れる前にまずCCUS登録から始める必要があります。登録自体はオンラインで完結しますが、初回は審査に数週間かかることもあるため、早めに対応してください)
建設分野で不許可・トラブルになりやすいパターン
建設分野は他の分野に比べて独自要件が多い分、手続き上のミスや要件の見落としによる不許可・トラブルが発生しやすい分野です。申請の現場で実際に目にするパターンを整理します。
- JACへの加入手続きが完了していない段階で入管に在留資格申請を行ってしまう
- 受入計画の認定を受けずに入管申請を進め、書類不備で返戻される
- 常勤職員数の算定を誤り、受入れ上限を超える計画で申請してしまう
- CCUSの事業者登録・技能者登録が未完了のまま受入計画の認定を申請する
- 月給制ではなく日給制・時給制で雇用契約を締結してしまう
- 建設業許可を受けていない企業が受入れを申請する
特に多いのが、手続きの順序を間違えるケースです。建設分野は「JAC加入→受入計画の認定→入管への在留資格申請」という順序が決まっており、この順番を飛ばすことはできません。他の分野では入管申請と協議会加入を並行して進められることもありますが、建設分野ではそのような柔軟な運用は認められていません。
また、報酬に関するルールも要注意です。建設分野では、特定技能外国人の報酬を月給制で支払うことが原則とされています。建設業界は日給月給制が一般的な業界ですが、特定技能外国人に対しては安定した収入を保障する観点から月給制が求められます。日給制や時給制の雇用契約では受入計画が認定されません。
一人親方への派遣や実態のない受入れは厳しく取り締まられている
建設分野で特に厳しく監視されているのが、実態のない受入れや不正な労働者供給です。
建設業界では、一人親方やペーパーカンパニーが外国人労働者を受け入れ、実際には別の現場に送り込むという手口が技能実習制度の時代から問題視されてきました。特定技能制度においても、このような不正を防止するため、国土交通省やFITS(国際建設技能振興機構)による巡回訪問が定期的に実施されています。
具体的に問題となるのは以下のようなケースです。
- 受入計画に記載された事業所とは異なる現場でのみ就労させている
- 受入れ企業に実態がなく、実質的に別の企業に労働者を供給している
- 建設業許可を持たない企業が特定技能外国人を受け入れている
- 安全衛生教育を実施せずに危険な作業に従事させている
不正が発覚した場合、受入計画の認定取消し、在留資格の取消し、さらには刑事罰の対象となる可能性もあります。FITSによる巡回訪問は抜き打ちで行われることもあり、「バレないだろう」という甘い認識は通用しません。建設分野の特定技能は、適正な受入れ体制を構築できる企業だけが活用すべき制度です。
技能実習から特定技能建設への移行は最も多い移行パターンの一つ
建設分野における特定技能外国人の多くは、技能実習2号または3号からの移行によって在留資格を取得しています。これは建設分野に限った話ではありませんが、建設分野では特にこの移行パターンが主流です。
技能実習2号を良好に修了した外国人は、対応する業務区分であれば技能試験と日本語試験の両方が免除されます。建設分野の場合、旧職種区分と新業務区分の対応関係は以下のようになっています。
| 旧技能実習の職種・作業 | 移行先の特定技能業務区分 |
|---|---|
| 型枠施工、鉄筋施工、とび、左官、屋根ふき、内装仕上げ施工 など | 建築 |
| 建設機械施工、さく井、コンクリート圧送施工 など | 土木 |
| 配管、電気通信、保温保冷 など | ライフライン・設備 |
移行の手続きとしては、技能実習の在留資格から特定技能1号への在留資格変更許可申請を行います。ただし建設分野の場合は、入管への変更申請の前にJACへの加入と受入計画の認定を済ませておく必要があるため、他分野の移行よりも準備期間が長くなります。
スケジュール感としては、技能実習の修了予定日から逆算して少なくとも4か月前には準備を開始すべきです。JAC加入、受入計画認定申請、CCUS登録、入管への在留資格変更申請と、工程が多いためギリギリの対応では間に合いません。
(技能実習3号の途中から特定技能1号に切り替えたいという相談も受けますが、技能実習3号は最低2年間の実習計画が前提のため、途中での切替えには実習実施者や監理団体との調整が必要です。スムーズにいかないケースも多いので、切替えのタイミングは慎重に検討してください)
なお、建設分野は特定技能2号の対象分野でもあります。特定技能1号で経験を積んだ後、2号の技能試験(建設分野特定技能2号評価試験)に合格すれば、在留期間の上限なく日本で就労を続けることが可能です。2号に移行すれば家族の帯同も認められるため、外国人材にとっても長期的なキャリアパスが開ける分野と言えます。
最後に
建設分野の特定技能は、JAC加入・受入計画の認定・CCUS登録・受入れ人数上限など、他の分野にはない独自ルールが多く、手続きの負担は決して軽くありません。しかし、建設業界の深刻な人手不足を考えれば、特定技能制度を正しく活用できるかどうかが企業の競争力に直結する時代になっています。
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