特定技能「製造業」の対象業務・要件・申請の流れを解説

この記事で解決できるお悩み
  • 製造業で特定技能の対象になる業務は?
  • 素形材・産業機械・電気電子の区分を整理したい
  • 製造業分野の申請の流れを確認したい

特定技能「製造業」は、正式には「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」という長い名称の分野です。2022年に旧3分野が統合されて現在の形になりましたが、統合後も業務区分は細かく分かれており、どの区分で申請するかの判断が実務上の最大のポイントになります。製造業分野は全16分野の中でも対象業種の幅が広く、金属加工から電子部品の組立てまで幅広い工場が活用できる制度です。この記事では、製造業分野の対象業務・技能試験・受入れの流れ・注意点を、申請実務の視点から解説します。

製造業分野は特定技能の対象業種が最も幅広い分野の一つ

特定技能の製造業分野は、対象となる日本標準産業分類の範囲が非常に広いのが特徴です。鋳造、鍛造、金属プレス、溶接、機械加工、塗装、電子機器組立てなど、日本の製造業の根幹を支える業種が幅広く含まれています。

出入国在留管理庁の統計によると、製造業分野の特定技能在留外国人数は増加を続けており、全16分野の中でも上位に位置しています(出典 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」)。2024年の閣議決定では、2024年度からの5年間の受入れ見込数が17万3,300人と設定されており、全分野の中でもトップクラスの枠が確保されています。

製造業分野が幅広い業種をカバーしている理由は明確です。日本の製造業は中小企業が圧倒的に多く、地方の工場を中心に深刻な人手不足が進行しています。特に溶接や鋳造といった熟練技能を要する工程では、若年層の日本人労働者が集まらず、事業継続そのものが危ぶまれている企業も少なくありません。

(実務上、製造業の企業から「うちの工場は特定技能の対象になるのか」という問い合わせを頻繁に受けます。対象業種が広い反面、日本標準産業分類のどの分類に該当するかの確認が必要であり、自社の産業分類コードを把握していない企業が大半です。まずは産業分類の確認から始めることを勧めています)

製造業分野の対象は「素形材・産業機械・電気電子情報関連」の三分野が統合されている

現在の「製造業」分野は、2022年4月に旧3分野が統合されて誕生した分野です。統合前は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」の三つが独立した分野として運用されていました。

統合の背景には、製造業の現場実態があります。一つの工場で素形材の加工と産業機械の組立てを同時に行っている企業は珍しくなく、旧制度では分野をまたぐ業務に従事させることができないという問題が生じていました。統合により、同一の製造業分野内であれば業務区分の範囲で柔軟な業務配置が可能になりました(出典 経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」)。

ただし、統合されたとはいえ、業務区分は細分化されたまま維持されています。申請時には、受け入れる外国人がどの業務区分に従事するかを明確にする必要があり、この判断を誤ると不許可になるリスクがあります。

統合前の三分野と統合後の業務区分の関係

統合後の製造業分野には、以下のような業務区分が設けられています。旧分野との対応関係を整理すると次の通りです。

旧分野 統合後の主な業務区分 具体的な作業内容の例
素形材産業 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、溶接、仕上げ、塗装など 金属の溶解・鋳込み、プレス機による成形、アーク溶接、表面研磨・バリ取りなど
産業機械製造業 機械加工、仕上げ、溶接、塗装、電気機器組立て、鉄工、工場板金など NC旋盤・マシニングセンタによる切削加工、産業用機械の組立て・調整など
電気・電子情報関連産業 機械加工、電気機器組立て、電子機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形など 電子部品の実装・はんだ付け、プリント基板の製造、射出成形機の操作など

上の表のとおり、「機械加工」「溶接」「仕上げ」「塗装」などは複数の旧分野に共通して存在する業務区分です。統合により、たとえば素形材の工場で溶接業務に従事していた外国人が、同一企業内の産業機械部門で溶接を行うことが制度上可能になりました。

(統合前に旧分野で在留資格を取得していた外国人は、統合後の製造業分野に自動的に移行されています。ただし、業務区分自体が変わったわけではないため、従事できる業務の範囲は従前と同じです。「統合されたから何でもできる」という誤解が一部の企業にありますが、あくまで業務区分の範囲内という制約は変わりません)

製造分野の技能試験は業務区分ごとに実施されている

製造業分野の特定技能1号を取得するためには、業務区分に対応した「製造分野特定技能1号評価試験」に合格する必要があります。試験は経済産業省の所管であり、業務区分ごとに異なる試験が実施されています。

試験の概要は以下の通りです。

  • 試験形式は学科試験と実技試験(いずれもCBT方式またはペーパー方式)
  • 業務区分ごとに出題範囲が異なり、各業務区分に必要な技能と知識が問われる
  • 合格基準は総得点の65%以上
  • 日本国内および海外(ベトナム、インドネシア、フィリピン、タイなど)で実施
  • 日本語能力については、JFT-BasicまたはJLPT N4以上の合格が別途必要

試験の実施スケジュールは業務区分によって異なります。受験者数が多い「溶接」「機械加工」「電気機器組立て」などは比較的頻繁に実施されていますが、受験者が少ない業務区分では年に数回しか実施されないこともあります。受入れ計画を立てる際は、該当する業務区分の試験スケジュールを事前に確認しておくことが不可欠です。

技能実習からの移行は同一業務区分であれば試験免除

技能実習2号を良好に修了した外国人は、対応する業務区分であれば技能試験と日本語試験の両方が免除されます。製造業分野は技能実習制度との親和性が高く、多くの技能実習の職種・作業から特定技能への移行が可能です。

移行可能な技能実習の職種・作業の例は以下の通りです。

  • 鋳造(鋳鉄鋳物鋳造、非鉄金属鋳物鋳造)→ 業務区分「鋳造」
  • 鍛造(ハンマ型鍛造、プレス型鍛造)→ 業務区分「鍛造」
  • 機械加工(旋盤、フライス盤)→ 業務区分「機械加工」
  • 金属プレス加工(金属プレス)→ 業務区分「金属プレス加工」
  • 溶接(手溶接、半自動溶接)→ 業務区分「溶接」
  • 電子機器組立て(電子機器組立て)→ 業務区分「電子機器組立て」
  • プリント配線板製造(プリント配線板製造)→ 業務区分「プリント配線板製造」

ただし、技能実習の職種と特定技能の業務区分が完全に一対一で対応していないケースもあります。自社の技能実習生がどの業務区分に移行できるかは、経済産業省が公表している対応表で個別に確認する必要があります。

技能実習2号の修了が「良好」であることが条件です。実習期間中の出勤状況や技能検定の合格実績が審査対象になります。技能検定3級の実技試験に合格していれば「良好な修了」として認められますが、不合格の場合でも実習実施者による評価調書で「良好」と判断されれば移行可能です。判断に迷う場合は事前に入管に相談することを勧めます。

製造業分野の受入れの流れと必要書類

製造業分野で特定技能外国人を受入れる流れを、海外から呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請)を中心に整理します。

  • 外国人が技能試験と日本語試験に合格する(技能実習からの移行の場合は免除)
  • 受入れ企業と外国人との間で雇用契約を締結する
  • 受入れ企業が「1号特定技能外国人支援計画」を策定する(自社支援または登録支援機関への委託)
  • 出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請(または在留資格変更許可申請)を行う
  • 許可後、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会に加入届出を行う

必要書類は多岐にわたりますが、主なものは以下の通りです。

書類の種類 内容
在留資格認定証明書交付申請書 入管所定の様式に記入
特定技能雇用契約書の写し 報酬額、業務内容、労働条件を明記したもの
1号特定技能外国人支援計画書 事前ガイダンス、生活支援、相談対応等の計画
技能試験の合格証明書 該当業務区分の試験合格を証明するもの
日本語試験の合格証明書 JFT-BasicまたはJLPT N4以上
受入れ企業の登記事項証明書 法人の場合
受入れ企業の決算書類 直近の事業年度の財務状況を示す書類
社会保険・労働保険の加入状況を示す書類 特定技能制度全般で共通して必要

(実務上、製造業分野は建設分野のようなJAC加入や受入計画の事前認定といった上乗せ要件がないため、手続きの流れ自体は比較的シンプルです。ただし、書類の量は決して少なくありません。特に初めて特定技能外国人を受入れる企業は、協議会への加入届出を忘れがちです。受入れ後4か月以内に届出が必要ですので、スケジュール管理は慎重に行ってください)

製造業分野で注意すべきポイントは業務区分と実際の作業内容の一致

製造業分野で最も多いトラブルは、申請時に選択した業務区分と、実際に従事させている作業内容が一致していないケースです。

たとえば、「機械加工」の業務区分で在留資格を取得した外国人を、実際には溶接作業に主として従事させているような場合、資格外活動に該当する可能性があります。製造業の現場では、一人の作業員が複数の工程を掛け持ちすることが珍しくありませんが、特定技能制度上は申請した業務区分の業務に「主として」従事することが求められます。

注意すべき具体的なパターンは以下の通りです。

  • 業務区分「溶接」で申請したが、実際には塗装作業が業務の大半を占めている
  • 業務区分「電子機器組立て」で申請したが、倉庫での梱包・出荷作業ばかりさせている
  • 業務区分「機械加工」で申請したが、製品の検査工程のみに従事させている
  • 複数の業務区分にまたがる業務をさせているが、一つの業務区分でしか申請していない

付随的な業務(原材料の運搬、製品の検査、清掃など)に従事させること自体は認められていますが、あくまで当該業務区分の業務が主たる業務であることが前提です。

(「うちの工場では色々な作業をやってもらいたい」という相談は本当に多いです。その場合、主たる業務がどの業務区分に該当するかを明確にした上で申請する必要があります。場合によっては複数の業務区分で複数人を受入れるという選択肢も検討すべきです。業務区分の選定を曖昧にしたまま申請すると、入管から追加説明を求められて審査が長期化するケースがあります)

入管の実地調査や届出内容の確認により、業務区分と実態の不一致が発覚した場合、在留資格の取消し処分を受けるおそれがあります。受入れ後も、業務内容に変更が生じた場合は速やかに届出を行い、必要に応じて在留資格変更の手続きを検討してください。

製造業は特定技能二号への移行対象であり長期雇用が可能

製造業分野は、特定技能2号の対象分野です。特定技能1号の在留期間は通算5年が上限ですが、2号に移行すれば在留期間の上限がなくなり、更新を続ける限り日本で就労し続けることができます。

特定技能2号への移行に必要な条件は以下の通りです。

  • 製造分野特定技能2号評価試験に合格すること
  • 実務経験として、製造業分野での一定期間以上の就労実績があること
  • 班長や管理職としての実務経験など、監督者としての能力を示す要件を満たすこと

2号に移行するメリットは、在留期間の上限撤廃だけではありません。家族(配偶者・子)の帯同が認められる点も大きなメリットです。1号では家族の帯同は原則として認められませんが、2号では在留資格「家族滞在」による呼び寄せが可能になります。外国人労働者にとって、家族と一緒に日本で暮らせるかどうかは就労先を選ぶ上で極めて重要な要素です。

企業側にとっても、2号への移行は大きな意味を持ちます。製造業の現場では、技能の習得に数年単位の時間がかかることが一般的であり、せっかく育てた人材が5年で帰国してしまうリスクを回避できるのは経営上の大きな利点です。特定技能2号の外国人は、将来的に永住許可の申請要件を満たす可能性もあり、長期的な人材戦略の中に位置付けることが可能です。

(2号試験はまだ実施回数が少なく、合格者も限定的ですが、今後は拡大が見込まれています。受入れ企業としては、1号の段階から「この人材を2号に育てる」という視点でキャリアパスを提示することが、優秀な人材の確保・定着につながります。実際に、2号への移行支援を打ち出している企業は、外国人からの応募が集まりやすい傾向があります)


最後に

製造業分野の特定技能は、対象業種が幅広く、技能実習からの移行ルートも多いため、多くの製造系企業にとって活用しやすい制度です。一方で、業務区分の選定を誤ると不許可や取消しのリスクがあるため、自社の作業内容と制度上の業務区分を正確に照合することが重要になります。

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