特定技能「航空」分野の対象業務・要件・受入れの流れ

この記事で解決できるお悩み
  • 航空分野の特定技能で働ける業務を知りたい
  • 航空分野の特定技能試験・要件を知りたい
  • 航空分野で特定技能外国人を受け入れる流れ・注意点を知りたい

特定技能「航空」は、空港の運営を支える人材を確保するための在留資格です。航空分野は他の特定技能分野と比べて受入れ人数の規模は小さいものの、空港という特殊な就労環境ゆえに固有の要件や注意点があります。対象業務は空港グランドハンドリングと航空機整備の二つに限定されており、受入れ企業も空港関連事業者に絞られます。実務上は、保安要件や業務範囲の整理で手間取る企業が多い分野です。この記事では、航空分野の特定技能について、業務区分・試験・受入れ要件・注意点まで実務で押さえるべきポイントを解説します。

航空分野は空港グランドハンドリングと航空機整備の二つの業務区分がある

特定技能「航空」の対象業務は、「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の二つの業務区分に分かれています。それぞれの業務内容は以下の通りです。

業務区分 主な業務内容
空港グランドハンドリング 航空機の誘導・けん引(マーシャリング・トーイング)、貨物・手荷物の搭降載、貨物の仕分け、手荷物の仕分け・引渡し、客室清掃 など
航空機整備 機体・装備品等の整備業務全般(ライン整備における機体の点検・修理作業、装備品・部品の点検・交換作業 など)

グランドハンドリングは、旅客が目にすることは少ないものの空港の定時運航を支える不可欠な業務です。航空機の到着から出発までの限られた時間内に、手荷物の搭降載や機内清掃を完了させなければならず、体力とチームワークが求められます。

航空機整備は、航空法に基づく厳格な安全基準のもとで行われる専門性の高い業務です。整備士の指示に基づいて点検・修理作業を行うため、技術的な知識に加えて整備マニュアルを読解する能力が必要になります。

(実務上、「グランドハンドリング」という言葉の範囲がどこまでなのかを正確に把握していない企業が少なくありません。たとえばチェックインカウンター業務や搭乗ゲート業務はグランドハンドリングに含まれず、特定技能の対象外です。受入れ前に業務範囲を明確にしておかないと、資格外活動の問題が生じます)

航空分野の受入れ見込数は、2024年度からの5年間で4,400人と設定されています(出典 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」)。他の分野と比べると規模は小さいですが、コロナ禍からの航空需要回復に伴い、空港の人手不足は深刻化しており、受入れニーズは確実に高まっています。

航空分野の技能試験は業務区分ごとに航空分野特定技能評価試験が実施されている

特定技能1号「航空」の在留資格を取得するためには、以下の試験に合格する必要があります。

試験の種類 試験名 実施主体
技能試験(グランドハンドリング) 航空分野特定技能評価試験(空港グランドハンドリング) 公益社団法人日本航空技術協会
技能試験(航空機整備) 航空分野特定技能評価試験(航空機整備) 公益社団法人日本航空技術協会
日本語試験 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)またはJLPT N4以上 国際交流基金 / 日本国際教育支援協会

技能試験は日本国内のほか、フィリピンなどの海外でも実施されています。試験はCBT方式(コンピュータベース)で行われ、学科試験と実技試験で構成されます(出典 公益社団法人日本航空技術協会「航空分野特定技能評価試験」)。

グランドハンドリングと航空機整備で試験内容が大きく異なる

二つの業務区分は求められる知識・技術がまったく異なるため、試験内容も別物です。

グランドハンドリングの試験では、航空機地上支援業務に関する基礎知識が問われます。具体的には、手荷物・貨物の取扱い方法、航空機のけん引やプッシュバックの手順、ランプエリアでの安全管理、危険物の識別といった内容が出題範囲です。実技試験では、実際の業務場面を想定した判断力が評価されます。

航空機整備の試験では、航空工学の基礎、機体構造、エンジン、電気・電子系統、油圧・空圧系統に関する知識が問われます。整備マニュアルの英語表記を理解できるレベルの専門知識が必要であり、グランドハンドリングと比べて技術的な難易度は高い傾向にあります。

なお、航空分野の技能実習2号を良好に修了した者は、対応する業務区分の技能試験と日本語試験の両方が免除されます。ただし、航空分野の技能実習自体がまだ実績として少ないため、現状では試験合格ルートで特定技能を取得するケースが中心です。

(航空機整備の試験は、他の特定技能分野の試験と比較してもかなり専門的です。航空業界未経験の外国人がいきなり合格するのは難しく、実務上は送出し国の教育機関で航空整備の基礎教育を受けた人材を採用するパターンが多いです)

航空分野の受入れ企業は空港関連事業者に限定される

航空分野で特定技能外国人を受け入れられるのは、空港管理者との契約等に基づき空港において業務を行う事業者に限定されています。具体的には、以下のような企業が該当します。

  • 航空運送事業者(航空会社)から地上支援業務を受託しているグランドハンドリング会社
  • 航空機整備を行う事業者(航空運送事業者の整備部門、MRO事業者など)
  • 空港において航空法に基づく業務を遂行する事業者

つまり、航空分野の特定技能は、受入れ企業の業種が明確に限定されている分野です。製造業や飲食業のように幅広い企業が対象となる分野とは性質が異なります。

受入れ企業は、航空分野の特定技能協議会に加入する義務があります。協議会は国土交通省が設置しており、受入れ企業の適正な運営確保、情報共有、制度運用の改善を目的としています。協議会への加入は特定技能外国人を初めて受け入れた日から4か月以内に行う必要があります(出典 国土交通省「航空分野における新たな外国人材の受入れ」)。

また、受入れ企業には以下の要件も課されます。

  • 特定技能外国人に対して日本人と同等以上の報酬を支払うこと
  • 1号特定技能外国人支援計画を策定し、適切に支援を実施すること
  • 空港の保安に関する教育・研修を実施すること
  • 過去5年以内に出入国管理法令や労働関係法令に違反していないこと

(航空分野は空港という閉鎖的な環境で業務が行われるため、受入れ企業の数自体が限られています。大手のグランドハンドリング会社や航空会社系列の整備会社が中心であり、中小企業が新規参入するハードルは他の分野よりも高いのが実情です)

航空分野は特定技能2号の対象で長期的なキャリア形成が可能

航空分野は、特定技能2号の対象分野です。2023年6月の閣議決定により特定技能2号の対象分野が大幅に拡大され、航空分野も2号の対象に追加されました。

特定技能1号は通算5年の在留期間上限がありますが、2号に移行すれば在留期間の上限がなくなり、更新を続ける限り日本で就労を続けることができます。また、2号では家族(配偶者・子)の帯同も認められます。

2号への移行要件は以下の通りです。

  • 航空分野特定技能2号評価試験に合格すること
  • 監督者としての実務経験があること(現場での指導・管理の経験が求められる)

2号の技能試験は1号よりも高い水準が求められ、単に作業ができるだけでなく、チームを指揮し後進を指導できる能力が評価されます。グランドハンドリングであれば、ランプエリアでの作業班のリーダーとして安全管理や進捗管理ができるレベル。航空機整備であれば、確認主任者の指示のもとで整備作業を自律的に遂行し、後輩の指導もできるレベルが目安です。

長期的なキャリア形成が可能という点は、外国人材の採用競争において大きなアドバンテージになります。「5年で帰国しなければならない」という制約がなくなることで、優秀な人材を長期的に確保しやすくなるだけでなく、技術の蓄積と継承にもつながります。

(2号への移行はまだ始まったばかりで、航空分野での2号取得者は多くありません。しかし、空港業務は経験を積むほど効率と安全性が向上する仕事であり、企業側にとっても長期雇用のメリットは大きいはずです。1号で受け入れる段階から2号への移行を見据えたキャリアパスを提示できると、採用活動でも有利に働きます)

航空分野で受入れ時に注意すべきポイントは保安要件と業務範囲

航空分野には、他の特定技能分野にはない空港特有の注意点がいくつかあります。

まず、保安要件です。空港の制限区域内で業務を行うためには、空港の保安規程に基づく身元確認やセキュリティ教育を受ける必要があります。特定技能外国人であっても、空港の制限区域に立ち入るためには空港保安に関する所定の手続きを経て制限区域立入承認を得なければなりません。この手続きには一定の期間がかかるため、在留資格を取得してもすぐに業務を開始できないケースがあります。

次に、業務範囲の問題です。特定技能「航空」で認められる業務は、業務区分ごとに明確に定められています。

認められる業務の例 認められない業務の例
手荷物・貨物の搭降載作業 チェックインカウンター業務
航空機のけん引・誘導 旅客対応・接客業務
客室清掃 航空券の販売業務
機体の点検・修理作業 運航管理業務(ディスパッチ)

業務範囲を逸脱して旅客対応や販売業務に従事させた場合、資格外活動に該当する可能性があります。グランドハンドリング会社の中には旅客サービス部門も持つ企業がありますが、特定技能外国人をそちらの業務に回すことはできません。人員配置を行う際は、業務区分に該当する作業のみに従事させるよう徹底してください。

さらに、航空分野では安全管理に関する社内教育の実施も重要です。ランプエリアでは航空機のエンジンやプロペラによる危険、車両の往来、騒音環境下での作業など、一般的な職場とは異なるリスクが存在します。受入れ企業は、特定技能外国人に対して日本語での安全教育を十分に行い、緊急時の対応手順も含めて理解させる必要があります。

(保安要件は航空分野ならではの論点です。制限区域への立入承認が下りるまでに時間がかかることを見越してスケジュールを組まないと、「在留資格は取れたのに働けない」という空白期間が発生します。入管申請と並行して空港の保安手続きも進めておくのが実務上のポイントです)


最後に

特定技能「航空」は、空港のグランドハンドリングと航空機整備という限定された業務区分を対象とする専門性の高い分野です。受入れ企業が空港関連事業者に限られること、保安要件への対応が必要なこと、業務範囲が厳格に定められていることなど、他の分野にはない固有の論点を正確に把握した上で手続きを進める必要があります。一方で、特定技能2号の対象分野であり、長期的なキャリア形成が可能な点は、外国人材にとっても企業にとっても大きなメリットです。

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