特定技能「ビルクリーニング」の要件・試験内容・受入れ方法

この記事で解決できるお悩み
  • ビルクリーニング分野の要件・人数枠を知りたい
  • ビルクリーニングの特定技能試験の内容・合格率が知りたい
  • ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れる流れを知りたい

特定技能「ビルクリーニング」は、16分野の中でも制度上の要件がシンプルで、初めて特定技能外国人を受け入れる企業にとって取り組みやすい分野です。建設分野のような独自の上乗せ要件はなく、協議会への加入と入管への申請という基本的な流れで手続きが完結します。一方で、派遣が認められていない点や対象業務の範囲など、実務上押さえるべきポイントもあります。この記事では、ビルクリーニング分野の対象業務・技能試験・受入れの流れ・注意点を整理します。

ビルクリーニング分野は特定技能の中でも受入れ手続きがシンプルな分野

特定技能「ビルクリーニング」は、厚生労働省が所管する分野であり、他の分野と比較して受入れ手続きの負担が軽いのが特徴です。建設分野のようにJACへの加入義務や国土交通大臣の受入計画認定は不要ですし、介護分野のような分野固有の日本語試験もありません。

受入れに必要な主な手続きは以下の通りです。

  • 技能試験(ビルクリーニング分野特定技能評価試験)の合格、または技能実習2号の良好修了
  • 日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)の合格(技能実習2号良好修了者は免除)
  • 受入れ企業と外国人との直接雇用契約の締結
  • ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入(初回受入れ後)
  • 入管への在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請

協議会への加入については、初めて特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に手続きを行えば足ります。加入に費用はかかりません。厚生労働省が設置するビルクリーニング分野特定技能協議会は、制度の適正な運用や受入れ状況の把握を目的としたものであり、建設分野のJACのような厳格な事前加入義務とは性質が異なります(出典 厚生労働省「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れ」)。

(実務上は、ビルクリーニング分野の手続きは「特定技能の基本形」に近いと感じています。分野固有の上乗せ要件がほとんどないため、制度の仕組みを理解するための最初の一歩としても取り組みやすい分野です)

ビルクリーニング分野で従事できる業務は建築物内部の清掃作業全般

ビルクリーニング分野の特定技能外国人が従事できる業務は、建築物の内部を対象とした清掃作業全般です。具体的には以下のような業務が該当します。

  • 床面の清掃(日常清掃・定期清掃を含む)
  • ガラス面の清掃(建築物内部側のガラス面)
  • 壁面・天井面の清掃
  • トイレ・洗面所等の衛生設備の清掃
  • エレベーター・エスカレーター等の共用設備の清掃
  • 廃棄物の収集・運搬(建築物内部で発生するもの)

対象となる建築物は、オフィスビル、商業施設、ホテル、病院、学校、駅ビル、マンションの共用部分など多岐にわたります。ビル管法の対象となる建築物が主な就労場所ですが、法律上の特定建築物に限定されるわけではありません。

対象となる業務 対象外となる業務
建築物内部の床・壁・天井の清掃 建築物の外壁清掃(ゴンドラ作業等)
建築物内部のガラス清掃 一般住宅(個人宅)の清掃(ハウスクリーニング)
建築物内部の衛生設備清掃 道路や公園など屋外の清掃
建築物内部の廃棄物収集・運搬 害虫駆除・消毒作業(単独での従事)

(注意が必要なのは「ハウスクリーニング」との混同です。個人宅を対象とした清掃サービスはビルクリーニング分野の対象外です。「うちはハウスクリーニングの会社だけど特定技能で外国人を雇いたい」という相談を受けることがありますが、残念ながら対象にはなりません。あくまでも建築物内部の清掃が対象です)

清掃資機材の点検・管理、清掃計画の作成補助といった付随業務にも従事できますが、主たる業務が清掃であることが前提であり、事務作業のみに従事させることは認められません。

技能試験はビルクリーニング分野特定技能評価試験に合格する必要がある

ビルクリーニング分野で特定技能の在留資格を取得するためには、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験に合格する必要があります。この試験は、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施しています(出典 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「ビルクリーニング分野特定技能評価試験」)。

試験の概要は以下の通りです。

項目 内容
試験実施機関 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
試験形式 実技試験(写真・イラスト等を用いた判断問題を含む)
試験言語 日本語(ふりがな付き)
試験時間 実技試験は概ね20分程度
合格基準 得点率60%以上
受験料 国内受験は1万円程度
実施場所 日本国内(主要都市)および海外(フィリピン、ミャンマー、ネパール等)

試験内容は、ビルクリーニングの実務に即したものです。具体的には、床面の定期清掃の手順、資機材の名称と用途の選定、洗剤の種類と適切な使用方法、安全衛生に関する基本的な知識などが出題されます。

実技試験が中心で日本語のハードルは他分野より低め

ビルクリーニング分野の試験の大きな特徴は、実技試験が中心であるという点です。他の分野で一般的なCBT方式(コンピューター上での選択式問題)ではなく、実際の清掃用具を使った実技が含まれます。日本国内試験では実際の実技作業が課されることがあり、海外試験では写真やイラストを用いた判断形式で出題されます。

この試験形式は、日本語の読み書きに不安がある受験者にとっては有利に働きます。学科試験のように長文を読んで解答するタイプの問題が少なく、実務的な動作や判断力が問われるため、言語能力よりも実際の清掃スキルが合否を左右する傾向があります。

合格率は公式に公表されているデータによると概ね六割から七割台で推移しており、特定技能の技能試験の中では比較的合格しやすい水準です。ただし、試験対策を全くせずに合格できるほど簡単ではありません。全国ビルメンテナンス協会のウェブサイトで公開されている学習用テキストや過去問を活用した準備が推奨されます。

(受入れ企業からは「清掃の試験なんて簡単でしょ」と言われることがありますが、実技では資機材の選定や安全確認の手順も評価対象です。現場経験があっても、試験で求められる「正しい手順」を知らなければ不合格になります。海外から採用する場合は、事前に学習教材を送付して準備させることが大切です)

なお、技能実習2号「ビルクリーニング」を良好に修了した者は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。ビルクリーニングの技能実習から特定技能への移行は、試験免除というメリットがあるため、既に技能実習生を受け入れている企業にとっては最もスムーズな移行パターンです。

受入れ企業の要件と受入れの流れ

ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れるためには、受入れ企業側にもいくつかの要件が求められます。

  • 建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録を受けていること(都道府県知事登録)
  • 特定技能外国人と直接雇用契約を締結すること
  • 日本人と同等額以上の報酬を支払うこと
  • 1号特定技能外国人支援計画を策定し、適切に支援を実施すること(または登録支援機関に委託すること)
  • ビルクリーニング分野特定技能協議会に加入すること(初回受入れ後4か月以内)
  • 過去5年以内に出入国管理法令や労働関係法令に関する重大な違反がないこと

特に重要なのが、建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録です。これはビル管法に基づく都道府県知事への登録であり、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れるための前提条件となっています。登録を受けていない事業者は、まずこの登録手続きから始める必要があります。

受入れの流れを時系列で整理すると以下のようになります。

段階 手続き内容
準備段階 建築物清掃業等の登録確認、外国人の技能試験・日本語試験合格の確認
契約段階 雇用契約の締結、1号特定技能外国人支援計画の策定
申請段階 入管へ在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せ)または在留資格変更許可申請(国内切替え)
許可後 在留カードの受領、就労開始、協議会への加入届出

海外から呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書の交付から査証(ビザ)の発給、入国までを含めると、申請着手から就労開始まで概ね3か月から5か月程度かかるのが一般的です。国内で技能実習から特定技能に切り替える場合は、在留資格変更許可申請のみで済むため、もう少し短い期間で手続きが完了します。

支援計画の策定は、特定技能1号で受け入れるすべての企業に共通する義務です。事前ガイダンス、出入国時の送迎、生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応などが含まれます。自社で支援体制を構築できない場合は登録支援機関への委託が可能です。ビルメンテナンス業界では登録支援機関を活用するケースが大半です。

ビルクリーニング分野は特定技能2号の対象で長期雇用が可能

ビルクリーニング分野は、特定技能2号の対象分野に含まれています。2023年6月の閣議決定により、従来は建設と造船・舶用工業の2分野のみだった特定技能2号の対象が大幅に拡大され、ビルクリーニングを含む11分野が追加されました(出典 出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について」)。

特定技能1号と2号の違いを整理します。

項目 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 通算5年が上限 上限なし(更新可能)
家族の帯同 認められない 配偶者・子の帯同が可能
支援計画 必要 不要
永住許可の可能性 期間のカウント対象外とされる場合あり 要件を満たせば永住申請が可能

2号への移行には、ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験への合格が必要です。2号の技能試験は1号よりも高い技能水準が求められ、ビルクリーニングの現場における管理者・指導者としての能力が評価対象になります。作業計画の立案、品質管理、安全衛生管理、後輩への技術指導といった能力が問われます。

ビルメンテナンス業界にとって、2号の対象分野に含まれた意味は大きいです。1号では通算5年で帰国しなければなりませんが、2号に移行すれば在留期間の制限なく就労を続けられるため、長期的な人材育成が可能になります。現場を熟知した外国人材が長く働き続けられることは、企業にとっても大きなメリットです。

(「特定技能2号に移行できるなら、5年で終わりではないんですね」と安心される企業が増えています。実際にビルクリーニング分野で2号移行の実績はまだ多くありませんが、制度としての道筋が整ったことで、外国人材の採用に踏み切る企業のハードルは確実に下がっています)

ビルクリーニング分野で注意すべきポイントは「派遣」が認められていない点

特定技能制度において、ビルクリーニング分野では派遣形態での受入れが認められていません。特定技能で派遣が認められているのは農業と漁業の2分野のみであり、ビルクリーニングを含むその他の分野はすべて直接雇用が原則です。

ビルメンテナンス業界の実態として、清掃スタッフを派遣会社から受け入れて現場に配置するという運用は広く行われています。しかし、特定技能外国人についてはこの運用ができません。受入れ企業が直接雇用契約を締結し、自社の従業員として管理することが求められます。

この「直接雇用」の要件に関連して、実務上注意が必要なのは以下のパターンです。

  • 人材派遣会社が特定技能外国人を雇用し、ビルメンテナンス会社の現場に派遣する(不可)
  • ビルメンテナンスの元請企業が特定技能外国人を雇用し、下請企業の現場で作業させる(就労場所の確認が必要)
  • 請負契約の形式をとりながら、実態としては労働者派遣に該当する「偽装請負」(違法)

ビルメンテナンス業界は多重下請構造になっている場合があり、「自社で雇用しているが、実際に清掃を行う現場はクライアントのビル」という形態が一般的です。この場合、請負契約に基づいて自社の管理下で業務を行う形であれば問題ありませんが、クライアント企業から直接指揮命令を受ける形態になると労働者派遣に該当する可能性があります。自社の業務形態が適法であるか、事前に確認してください。

また、ビルクリーニング分野では受入れ人数の上限は設定されていません。建設分野や介護分野のように企業の常勤職員数に応じた人数制限はないため、雇用契約と支援体制が適切に整備されていれば、必要な人数を受け入れることが可能です。ただし、支援計画を適切に実施できる体制が前提となるため、大量採用する場合は支援体制の強化が必要です。

(ビルメンテナンス業界からの相談で意外と多いのが「派遣でいけると思っていた」というケースです。普段から派遣スタッフを活用している会社ほど、特定技能は直接雇用が必須という点に戸惑われます。自社で雇用管理をするための体制づくりから始める必要がある点は、最初にしっかりお伝えしています)


最後に

ビルクリーニング分野は、特定技能制度の中でも手続きがシンプルで、初めて外国人材の受入れに取り組む企業にも適した分野です。技能試験は実技中心で合格率も比較的高く、特定技能2号への道も開かれています。一方で、派遣が認められていない点や建築物清掃業等の登録が必要な点など、正確に理解すべきポイントもあります。

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