引越しをした外国人の方から最も多く受ける質問が「在留カードの住所変更はどこでするのか」というものです。結論から言うと、住所(住居地)の変更届出は入管ではなく、新しい住所を管轄する市区町村の窓口で行います。期限は新住所に移ってから14日以内で、これを過ぎると20万円以下の罰金の対象になるだけでなく、放置すれば在留資格の取消事由にもなります。この記事では、届出先・期限・必要書類・忘れた場合の対応まで、実務の流れに沿って整理します。
目次
在留カードの住所変更は入管ではなく市区町村の窓口で行う
在留カードに関する手続きは基本的に地方出入国在留管理局(入管)で行いますが、住居地の届出だけは例外で、市区町村の窓口が受付先です。入管の窓口に在留カードを持って行っても、住所変更の手続きはできません。
市区町村の窓口で在留カードを提示し、住民基本台帳法に基づく転入届または転居届を出せば、それをもって入管法上の住居地届出も済んだものとして扱われます。つまり、役所で住民票の異動手続きを1回行えば、住民票と在留カードの両方が同時に更新される仕組みです(出典 出入国在留管理庁「住居地の変更届出(中長期在留者)」)。
(申請の現場では、わざわざ入管まで足を運んで「住所変更に来ました」と言い、窓口で市役所に行くよう案内されて帰ってきた、という方が毎年います。入管の窓口は待ち時間が1〜2時間になることも珍しくないので、この往復は本当にもったいないです)
入管に届け出るのは氏名・国籍・生年月日・性別の変更
在留カードの記載事項のうち、氏名、国籍・地域、生年月日、性別に変更が生じた場合は、入管が届出先になります。結婚して姓が変わった、本国で国籍が変わったといったケースがこれに当たります。
住所と氏名の両方が同時に変わる引越しと結婚の重複ケースでは、市区町村と入管の2か所で別々に手続きが必要です。どちらか一方だけで完結すると考えている方が多いのですが、窓口が違う以上、2回動く必要があります。在留カードの記載事項変更や有効期間の更新については、在留カードの更新手続きの記事で詳しく解説しています。
届出期限は新住所に移ってから14日以内
住居地の変更届出は、新しい住居地に移転した日から14日以内に行わなければなりません。入管法第19条の9第1項に定められた法律上の義務で、努力義務ではありません。
起算日は「契約した日」でも「荷物を運び出した日」でもなく、実際に新住所に住み始めた日です。3月28日に引越したなら、4月11日までに届出を済ませる必要があります。
注意したいのが、引越し前に先回りして届出はできないという点です。住居地の届出は「そこに住んでいる」ことが前提なので、まだ移転していない段階で新住所を届け出ると、内容によっては虚偽の届出と評価されるおそれがあります。転出届だけは引越し前に出せますが、転入届は移転後です。
新規に入国して住居地を定めたときも14日以内
初めて日本に上陸した中長期在留者も、住居地を定めた日から14日以内に市区町村へ届け出る義務があります(出典 出入国在留管理庁「新規上陸後の住居地の届出(中長期在留者)」)。
成田・羽田・中部・関西などの主要空港で上陸許可を受けた場合、その場で在留カードが交付されます。この段階の在留カードは裏面の住居地欄が空欄で、市区町村で届出をして初めて住所が記載されます。それ以外の空港・港から入国した場合は、パスポートに「在留カード後日交付」と記載され、市区町村で届出をした後に在留カードが郵送で届きます。
(新入社員として来日した技能実習生や技人国の外国人が、会社の寮に入った後もこの届出をしていないケースは実際にあります。受入企業側が「本人がやるものだ」と考え、本人は「会社がやってくれる」と考えている、という典型的な行き違いです。企業の担当者は入国後2週間のスケジュールに必ず組み込んでください)
本人が窓口に行けない場合は同居の親族が代理で届け出られる
仕事や入院で本人が窓口に行けない場合、同居の親族が代理人として届出を行うことが認められています。この場合は届出人本人の在留カードを窓口で提示し、手続き後は在留カードの写しではなく現物を本人に返して携帯させる必要があります。
会社の人事担当者や日本人の同僚は「同居の親族」に当たらないため、代理人にはなれません。実務では、単身で来日した外国人が日本語に不安があるという理由で会社の担当者に同行してもらい、本人が窓口で手続きをするという形をとるのが確実です。窓口には多言語対応の職員や翻訳タブレットを置いている自治体も増えています。
同一市区町村内の転居と他市区町村への引越しで手続きの回数が変わる
引越しのパターンによって、窓口に行く回数と必要な届出の種類が変わります。
| 引越しのパターン | 必要な届出 | 窓口に行く回数 |
|---|---|---|
| 同じ市区町村内で引越し | 転居届のみ | 1回(新住所の市区町村) |
| 別の市区町村へ引越し | 転出届と転入届 | 2回(旧住所と新住所) |
| 新規入国して住居地を定めた | 転入届(住居地届出) | 1回(新住所の市区町村) |
| 日本から出国して住まなくなる | 転出届 | 1回(旧住所の市区町村) |
他市区町村への引越しでは、まず旧住所の市区町村で転出届を出して転出証明書の交付を受け、新住所の市区町村でその転出証明書を添えて転入届を出します。転出届は引越し予定日のおおむね14日前から提出できるため、旧住所を離れる前に済ませておくのが実務的です(出典 総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度 転入・転出」)。
転出届を出さずに引越してしまい、新住所で転入届を出そうとして「転出証明書がないと受け付けられない」と言われる方が一定数います。この場合、旧住所の市区町村に郵送で転出届を請求するか、再度出向くことになり、14日の期限を超えてしまうリスクが高まります。
届け出るのは生活の本拠となっている住所
住居地として届け出るべきなのは、生活の本拠、つまり実際に寝起きして生活している場所です。ホテルや友人宅への一時的な滞在、数週間の出張先は住居地に当たりません。逆に、会社の社宅やシェアハウス、学生寮であっても、そこが生活の拠点であれば住居地として届け出ます。
判断に迷いやすいのが単身赴任です。平日は赴任先、週末は家族のいる自宅という生活であれば、実務上は滞在日数の多い赴任先を住居地として届け出るのが原則になります。1年を超える長期の赴任であればなおさらです。留学生が長期休暇で数か月間帰国する場合は、日本の住居を引き払わない限り住居地の変更届出は不要です。
(「住民票を移さずに実際は別の場所に住んでいる」という状態は、日本人以上に外国人にとって危険です。後述する在留資格の取消事由に直結するうえ、入管の実態調査で発覚するケースもあります)
必要書類は在留カード・パスポート・転出証明書が基本
市区町村の窓口に持参するものは、パターンによって多少違いますが、基本は次の通りです。
- 在留カード(届け出る全員分)
- パスポート(在留カードが後日交付の場合は必須)
- 転出証明書(他市区町村から引越してきた場合)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類と印鑑(自治体により運用が異なる)
手数料は無料です。窓口での所要時間は混雑状況によりますが、書類が揃っていれば30分から1時間程度で完了します。
家族で引越すときは全員分の在留カードが必要
実務上、最もつまずくのがここです。世帯の一部だけでなく、住所が変わる家族全員分の在留カードを窓口に持参する必要があります。夫が代表して手続きに行き、自分の在留カードだけ持参して、妻と子どもの分を家に置いてきた、というパターンで出直しになる方が非常に多いです。
また、外国人が世帯主で、同じ世帯に外国人の家族がいる場合は、続柄を証明する書類(本国の政府機関が発行した出生証明書や婚姻証明書の原本)と日本語訳の提出を求められることがあります。本国から取り寄せる書類は入手に数週間かかることもあるため、引越しの予定が決まった段階で準備を始めてください。
マイナンバーカードや通知カードの住所変更は、在留カードとは別に手続きが必要です。同じ窓口で処理してもらえる自治体がほとんどですが、忘れると健康保険や税の通知が旧住所に届き続けることになります。
同じ日に済ませておきたい関連手続き
役所に出向いた日にまとめて処理しておくと、後の二度手間を防げます。転入届・転居届と同じフロアで完結するものが大半です。
- 国民健康保険の資格異動(他市区町村への引越しは旧住所で喪失、新住所で加入)
- 国民年金の住所変更(マイナンバーと基礎年金番号が結び付いていれば原則不要)
- マイナンバーカードの券面住所変更と電子証明書の更新
- 子どもの転校手続きや児童手当の受給事由消滅・認定請求
- 印鑑登録(他市区町村への転出で自動的に失効するため新住所で再登録)
役所以外では、銀行口座、携帯電話、勤務先への届出、運転免許証の住所変更が必要です。運転免許証の住所変更は新住所を管轄する警察署か運転免許センターで行い、在留カードや住民票の写しなど新住所を証明する書類を持参します。金融機関の住所変更を放置すると、口座の取引制限がかかることがあるため後回しにしないでください。
届出が完了すると在留カードの裏面に新住所が記載される
市区町村の窓口で届出が受理されると、在留カードの裏面にある「住居地記載欄」に、新しい住所と記載日、市区町村長の記載が印字されます。その場で処理されるため、原則として即日完了です。表面の住所が書き換わるわけではない点に注意してください。
在留カードの表面に印字されている住所は、カードが交付された時点の住所です。引越しをすると表面と裏面で住所が食い違う状態になりますが、有効なのは裏面の一番新しい記載です。金融機関や携帯電話会社の窓口で「表面の住所と違う」と指摘された場合は、裏面を提示して説明すれば問題ありません。在留カードの見方や記載内容の詳細は在留カードとは?見方・記載内容・番号の意味の記事にまとめています。
裏面には資格外活動許可の記載欄や在留期間更新等許可申請中の記載欄もあり、住居地の記載欄が引越しを重ねて埋まってしまった場合は、入管で在留カードの再交付を受けることになります。アルバイトの可否を左右する資格外活動許可の記載については、在留カードが「就労不可」でも働ける?資格外活動許可の取り方で解説しています。
(引越しの多い留学生の在留カードは、裏面の住居地欄がびっしり埋まっていることがあります。欄が足りなくなっても在留資格に影響はありませんので、慌てずに入管で再交付の相談をしてください)
届出を怠ると20万円以下の罰金と在留資格取消しの対象になる
住居地の届出義務に違反した場合の不利益は、想像以上に重いです。
| 違反の内容 | 想定される処分 |
|---|---|
| 14日以内に届出をしなかった | 20万円以下の罰金 |
| 転居から90日以内に届出をしなかった | 在留資格の取消し(正当な理由がある場合を除く) |
| 虚偽の住居地を届け出た | 在留資格の取消し |
| 在留カードの提出に応じない | 入管法上の罰則の対象 |
90日以内に届け出ないと在留資格取消しの対象になる
入管法第22条の4には在留資格の取消事由が列挙されており、その中に届け出た住居地から退去した日から90日以内に新しい住居地を届け出ないことが含まれています。正当な理由がある場合は除かれますが、「忙しかった」「知らなかった」は正当な理由として認められにくいのが実情です。
さらに、虚偽の住居地を届け出た場合も取消事由とされています。この規定は故意の有無を問わないため、「実際には住んでいない知人の家を住所として届け出た」といったケースは、悪意がなくても取消しのリスクを負います(出典 出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」)。
これらの事由で在留資格が取り消された場合、直ちに退去強制になるのではなく、30日を上限とする出国期間が指定されるのが原則です。ただし、その期間内に出国しなければ退去強制手続に移行します。取消しの全体像については在留資格が取り消される6つのケースと対処法で整理しています。
(住民票を実家や友人宅に置いたまま別の場所で暮らしている、という相談を受けることがあります。日本人であれば住民基本台帳法違反にとどまりますが、外国人の場合は在留資格そのものを失いかねません。リスクの重さがまったく違うということを、まず理解してください)
期限を過ぎた場合はすぐに市区町村へ行く
14日を過ぎてしまった場合でも、届出自体は受け付けてもらえます。実務上は、数日から数週間の遅れであれば、窓口で遅れた理由を説明して手続きが進むケースがほとんどです。罰金が実際に科されるかどうかはケースによりますが、放置期間が長くなるほど不利になります。
より現実的に効いてくるのは、在留期間更新や永住許可申請の審査での評価です。永住申請では公的義務の履行状況が審査されるため、届出義務違反の履歴は素行要件の判断でマイナスに働きます。気づいた時点で速やかに届け出て、以後の履歴をきれいにしておくことが最善の対応です。
転職や退学の届出は入管への別手続きで住所変更とは異なる
混同されやすいのが「所属機関等に関する届出」です。転職、退職、勤務先の名称変更、大学の退学や卒業などがあった場合、14日以内に入管へ届け出る義務があります。期限は住居地の届出と同じ14日ですが、届出先が市区町村ではなく入管である点が決定的に違います。
| 届出の種類 | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 住居地の届出(引越し) | 市区町村の窓口 | 移転から14日以内 |
| 所属機関等に関する届出(転職・退学) | 地方出入国在留管理局 | 事由発生から14日以内 |
| 配偶者に関する届出(離婚・死別) | 地方出入国在留管理局 | 事由発生から14日以内 |
| 氏名・国籍等の変更届出 | 地方出入国在留管理局 | 変更から14日以内 |
転職と引越しが同時に起きるケースは非常に多く、この場合は市区町村と入管の両方に届出が必要です。転職に伴う在留資格の手続き全般は外国人が転職する際のビザ手続きで解説していますので、あわせて確認してください。
(技人国で働く方が転職と同時に引越しをして、市役所での住所変更だけ済ませて安心してしまう、というのが最もよくあるパターンです。所属機関の届出漏れは次の更新申請の際に指摘され、その場で提出を求められます)
住居地の届出は窓口が原則だが転出届はマイナポータルで提出できる
出入国在留管理庁の電子届出システムでオンライン提出できるのは、所属(活動)機関に関する届出、所属(契約)機関に関する届出、配偶者に関する届出です。住居地の届出は電子届出システムの対象外で、市区町村の窓口での手続きが原則になります。
ただし、マイナンバーカードを持っていれば、デジタル庁の引越し手続オンラインサービス(引越しワンストップサービス)を使って転出届をマイナポータルからオンライン提出できます。同時に転入先の市区町村へ来庁予定の連絡も送られるため、旧住所の役所に行く手間が原則不要になります(出典 デジタル庁「引越し手続オンラインサービス」)。
一方で、転入届は新住所の市区町村の窓口に必ず出向く必要があります。在留カードの裏面に新住所を記載する処理も窓口でしか行えないため、外国人の場合は「窓口に行く回数が2回から1回に減る」という効果にとどまります。それでも、遠方への引越しでは十分に大きなメリットです。
(オンラインで完結すると誤解して、転入届を出さないまま何週間も経ってしまう方がいます。転出届のオンライン提出はあくまで前半分の手続きです。新住所の役所に行くまでが引越しの手続きだと考えてください)
最後に
在留カードの住所変更は、市区町村の窓口で14日以内という2点さえ押さえておけば難しい手続きではありません。ただ、同一市区町村内か他市区町村かで届出の種類が変わり、家族全員分の在留カードが必要で、転職を伴う場合は入管への別の届出も発生します。届出漏れは20万円以下の罰金だけでなく、90日を超えれば在留資格の取消事由となり、永住申請の審査にも影響します。引越しが決まったら、旧住所での転出届と新住所での転入届を、スケジュールに明記しておいてください。
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