結婚して姓が変わった、本国で名前を変えた、国籍が変わった。こうしたときに必要になるのが在留カードの記載事項変更届出です。期限は変更が生じた日から14日以内、届出先は住居地を管轄する地方出入国在留管理局で、手数料はかかりません。引越しのときの住居地届出は市区町村窓口、転職のときは所属機関等に関する届出と、似た名前の手続きが並んでいて混乱しやすいところなので、この記事ではどの変更をどこに届け出るのかを整理した上で、必要書類と実務上の注意点まで解説します。
目次
氏名・生年月日・性別・国籍地域の変更は14日以内に入管へ届け出る
中長期在留者は、在留カードに記載された氏名、生年月日、性別、国籍・地域に変更が生じた場合、変更が生じた日から14日以内に、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署へ届け出なければなりません。これが「在留カード記載事項変更届出」です(出典 出入国在留管理庁「住居地以外の在留カード記載事項の変更届出」)。
届出が受理されると、変更後の内容が記載された新しい在留カードが交付されます。手数料は無料で、標準処理期間は原則として即日交付です。審査を伴う許可申請ではなく、あくまで「事実の届出」なので、書類さえそろっていれば窓口で完結します。
そもそも在留カードにどんな情報が記載されているのかを確認したい方は、在留カードの見方と記載内容を解説した記事もあわせて参照してください。カードの表面と裏面のどこに何が書かれているかを把握しておくと、この届出の対象になる項目かどうかの判断が早くなります。
住居地の変更だけは届出先が市区町村になる
実務で最も多い誤解がここです。引越しに伴う住居地の変更は、入管ではなく新住居地の市区町村窓口へ届け出ます。期限は新住居地に移転した日から14日以内で、転入届・転居届を出せば別途「住居地届出書」を提出する必要はありません(出典 出入国在留管理庁「住居地の変更届出(中長期在留者)」)。
住居地は在留カードの裏面に記載される項目で、市区町村窓口でその場で裏書きされます。一方、氏名・生年月日・性別・国籍地域はカードの表面に記載される項目であり、カード自体を作り直すため入管でなければ手続きできません。表面の記載事項は入管、裏面の住居地は市区町村と覚えておくと間違えません。
(申請の現場では「結婚して姓が変わり、同時に引越しもした」というケースがよくあります。この場合は市区町村で転居届を出し、別途入管で記載事項変更届出を行う必要があります。片方だけ済ませて安心してしまう方が本当に多いです)
届出義務を負うのは中長期在留者本人
届出義務者は中長期在留者本人です。ただし16歳未満の方や、疾病その他の事由により自ら届出ができない場合は、同居の親族が代わって届け出ます。勤務先の会社が代行することはできません(会社が行う届出は後述する所属機関による届出という別制度です)。
短期滞在や、3か月以下の在留期間しか与えられていない方は在留カードが交付されないため、この届出の対象外です。特別永住者の方についても、在留カードではなく特別永住者証明書が交付されるため、記載事項変更の届出先は市区町村窓口となります。
届出が必要になるのは国際結婚・本国での改名・国籍変更の3パターン
氏名や国籍が変わる場面は限られています。実務で持ち込まれる案件はほぼ次の3つに集約されます。
日本人と結婚して配偶者の姓に変更したケース
件数として圧倒的に多いのがこのパターンです。外国人が日本人と婚姻しても、日本の戸籍制度上は当然に姓が変わるわけではありませんが、本国の法律や手続きに従って配偶者の姓を名乗ることを選ぶ方が多くいます。
ここで重要なのは、在留カードの氏名はパスポートの表記に基づいて記載されるという点です。したがって「日本人配偶者の姓を名乗ることにした」だけでは足りず、本国の大使館・領事館でパスポートの氏名を書き換え、新しいパスポートの交付を受けてから入管に届け出るのが原則の流れになります。婚姻届を出した翌日に入管へ行っても、パスポートが旧姓のままでは手続きが進みません。
国際結婚の手続き全体の流れは国際結婚の手続きガイドで詳しく解説しています。婚姻の成立国によって必要書類も順序も変わるため、改姓を伴う場合は特に事前確認が重要です。
本国の法律で氏名を変更したケース
離婚により婚姻前の姓に戻した、宗教上の理由で改名した、本国の制度に基づいて名前を変更したといったケースです。この場合も本国が発行する氏名変更を証する公的書類と、変更後の氏名が記載された新しいパスポートを用意します。
国によっては改名の証明書が発行されず、新旧の氏名の同一性を証明する書類(同一人証明書)を大使館で取得する必要がある場合もあります。実務上は、この同一性の証明でつまずくケースが少なくありません。
国籍を変更したケース
婚姻や帰化以外の理由で本国の国籍を離脱し、第三国の国籍を取得した場合などが該当します。国籍・地域が変われば在留資格の要件そのものに影響することもあるため、単なる届出では済まないケースがあります。
たとえば「日本人の配偶者等」で在留している方の国籍が変わっても在留資格に影響はありませんが、二国間の協定や相互免除に基づく取扱いを受けていた場合は前提が崩れることがあります。国籍変更を予定している方は、届出の前に入管または専門家へ相談してください。
日本国籍を取得した場合(帰化が許可された場合)は、そもそも外国人ではなくなるため記載事項変更届出ではありません。帰化許可の告示日以降、速やかに在留カードを入管または市区町村に返納する必要があります。
必要書類は在留カード・パスポート・写真・変更を証する本国書類
届出時に必要なものは次のとおりです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 在留カード記載事項変更届出書 | 入管窓口で入手するか、出入国在留管理庁のサイトからPDF・Excel様式をダウンロードして作成 |
| 写真 | 1葉(縦4cm×横3cm、無帽・無背景、3か月以内に撮影したもの) |
| パスポート | 変更後の氏名が記載された新しいもの。提示できない場合は在留資格証明書 |
| 現在の在留カード | 変更前の記載内容のもの。窓口で回収され新カードと引換えになる |
| 変更を証する資料 | 婚姻証明書、戸籍謄本(日本人配偶者の場合)、改名証明書、国籍取得証明書など |
変更を証する資料は、変更の理由によって内容が異なります。婚姻による改姓であれば結婚証明書と新しいパスポート、国籍変更であれば新国籍のパスポートというように、「何がどう変わったか」を客観的に示せる公的書類が求められます。
外国語の証明書には日本語訳文の添付が必須
本国発行の婚姻証明書や改名証明書は当然ながら外国語で作成されています。入管に提出する際は日本語の訳文を添付する必要があり、訳文には翻訳者の氏名を記載します。翻訳会社に依頼しなくても、本人や配偶者が翻訳したもので受理されるのが実務上の一般的な取扱いです。
(訳文を忘れて出直しになる方が一定数います。原本と訳文はセットだと考えてください。なお、原本は返却を希望すれば返してもらえることが多いので、窓口でその旨を伝えるのを忘れずに)
写真の取扱いは2026年6月の新様式導入で変わった点がある
出入国在留管理庁は2026年6月14日から、マイナンバーカード機能を付加した特定在留カードおよび新様式の在留カードの交付を開始しました。新様式では券面から在留期間・許可の種類・許可年月日の記載が削除され、代わりに1歳以上の方に顔写真が表示される取扱いに変わっています(出典 出入国在留管理庁「在留カードとは?」)。
従来、記載事項変更届出の写真は16歳未満の方については不要とされてきました。お子様の氏名変更を届け出る場合は、写真が必要かどうかを事前に管轄の入管へ確認してから窓口に向かうのが確実です。
在留カードの様式変更に伴い、届出書の様式や添付資料の運用も見直されています。手続き前に出入国在留管理庁の公式ページで最新の様式を確認してください。
手数料は無料で新しい在留カードは原則として即日交付される
記載事項変更届出に手数料はかかりません。窓口の受付時間は平日の午前9時から正午まで、および午後1時から午後4時までです。標準処理期間は原則として即日交付とされており、書類に不備がなければその日のうちに新しい在留カードを受け取って帰れます。
手続きの流れは次のとおりです。
- 本国での氏名変更手続きを済ませ、新しいパスポートの交付を受ける
- 変更を証する書類と日本語訳文を準備する
- 在留カード記載事項変更届出書を作成し、写真を貼付する
- 住居地を管轄する地方出入国在留管理局・支局・出張所の窓口へ提出する
- その場で新しい在留カードの交付を受ける
注意したいのは、この届出は電子届出システムやオンライン申請の対象ではなく、原則として窓口で行う手続きだという点です。転職などの所属機関に関する届出はインターネットで24時間提出できますが、記載事項変更は新しいカードを交付する必要があるため、本人が窓口に出向くのが基本になります。
(東京入管は月曜日と連休明けが極端に混みます。届出自体は5分で終わる手続きでも、受付までに1時間以上待つのは珍しくありません。品川まで行かず、立川や横浜などの出張所を使うと待ち時間が大幅に短縮できるケースがあります)
在留カードそのものの有効期間更新や再交付を含めた各種手続きの全体像は、在留カードの更新手続きの記事で整理しています。
通称名は在留カードには記載されず住民票にのみ載る
「日本で通称名を使いたい」という相談は頻繁に受けますが、通称名が在留カードに記載されることはありません。在留カードの氏名欄はパスポートに記載された本名(原則としてローマ字表記)に基づいて記載されるためです。
一方、市区町村が作成する住民票には、社会生活上通用していると認められる通称を記載することができます。住民票には氏名に加えて通称が記載され、通称の記載および削除に関する事項も記録されます(出典 総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度」)。通称の記載を希望する場合は、その通称が日常的に使われていることを示す資料を添えて市区町村窓口に申し出ます。
ネットには「通称名を登録すれば在留カードの名前も変えられる」と書いているサイトがありますが、これは誤りです。通称の登録はあくまで住民票上の取扱いであり、在留カードとは制度が別です。そして通称を登録しても、それは在留カードの記載事項変更届出の対象にはなりません。
なお、漢字圏出身の方については、在留カードのローマ字氏名に加えて漢字氏名を併記することが可能です。これは「漢字氏名の併記申出書」を提出して行う手続きで、記載事項変更届出とはまた別の申出になります。併記した漢字表記を変更したい場合も、この申出書での対応となります。
住居地の届出・所属機関等に関する届出との違いを表で整理する
中長期在留者に課される届出義務は複数あり、名前が似ているため混同されがちです。届出先と期限を一覧にしました。
| 届出の種類 | 対象となる事由 | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 在留カード記載事項変更届出 | 氏名・生年月日・性別・国籍地域の変更 | 地方出入国在留管理官署 | 変更から14日以内 |
| 住居地の変更届出 | 引越しによる住所の変更 | 新住居地の市区町村窓口 | 移転から14日以内 |
| 新規上陸後の住居地届出 | 来日して住居地を定めたとき | 住居地の市区町村窓口 | 住居地を定めてから14日以内 |
| 所属機関等に関する届出 | 勤務先・学校の名称変更、移転、消滅、離脱、移籍、契約の終了・締結 | 地方出入国在留管理官署(電子届出システム可) | 事由発生から14日以内 |
| 配偶者に関する届出 | 配偶者との離婚または死別 | 地方出入国在留管理官署(電子届出システム可) | 事由発生から14日以内 |
転職したときに必要なのは所属機関の届出であって記載事項変更届出ではない
技術・人文知識・国際業務、特定技能、研究、介護、興行、技能、高度専門職1号イ・ロなどの在留資格を持つ方は、契約機関の名称変更・所在地変更・消滅、契約の終了や新たな契約の締結について、事由発生から14日以内に届け出る義務があります(出典 出入国在留管理庁「所属(契約)機関に関する届出」)。
一方、教授、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修の在留資格の方は、活動機関の名称変更・所在地変更・消滅、離脱、移籍について同じく14日以内の届出が必要です(出典 出入国在留管理庁「所属(活動)機関に関する届出」)。
これらは在留カードの記載を書き換える手続きではないため、新しいカードは交付されません。届出はインターネットの電子届出システム、窓口持参、郵送のいずれかで行えます。転職時に必要な手続きの全体像は外国人が転職する際のビザ手続きで解説しています。
(転職の届出をしていない方は驚くほど多いです。在留期間更新のタイミングで入管から「前職の退職はいつですか」と聞かれて発覚し、その場で慌てて届出を出すというパターンを何度も見てきました。届出漏れ自体が直ちに不許可につながるわけではありませんが、印象は確実に悪くなります)
離婚・死別は配偶者に関する届出で氏名変更とセットになりやすい
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」の在留資格で在留している方が離婚または死別した場合、14日以内に配偶者に関する届出が必要です。このとき婚姻時に配偶者の姓へ変更していた方が旧姓に戻すと、記載事項変更届出も同時に発生します。
離婚後は在留資格の該当性そのものが問題になるため、届出だけで終わらせず在留資格の変更を検討する必要があります。身分系の在留資格を維持できるかどうかはケースによりますので、配偶者ビザの更新手続きの記事も確認した上で、早めに専門家へ相談してください。
届出を怠ると20万円以下の罰金、虚偽の届出は在留資格取消しの対象になる
記載事項変更届出は努力義務ではなく法律上の義務です。正当な理由なく14日以内に届け出なかった場合、20万円以下の罰金に処せられることがあります。虚偽の届出をした場合はさらに重く、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金の対象となります。
加えて、在留カードの記載事項に虚偽があると認められた場合や、住居地の届出を90日以上行わなかった場合は、在留資格の取消事由に該当します。取消しに至るケースは決して多くありませんが、制度としては用意されているという点は押さえておいてください。
実務上より現実的なリスクは、将来の在留期間更新や永住許可申請で不利に働くことです。永住許可の審査では「素行が善良であること」が要件のひとつとされており、各種届出義務の履行状況は素行の評価に影響します。届出をしていなかったこと自体で即不許可になるわけではありませんが、他の要素と重なったときにマイナス材料として効いてきます。
14日を過ぎてしまった場合でも、放置せずできるだけ早く届け出てください。実務上、多少の遅れであれば窓口で事情を説明して受理されるのが一般的です。長期間放置するほど悪質と評価されやすくなります。
実務でつまずきやすいのは書類の翻訳と手続きの順番
この届出自体は難しい手続きではありません。それでも出直しになる方が一定数いるのは、次のような理由です。
- パスポートの氏名を書き換える前に入管へ行ってしまった
- 本国発行の証明書に日本語訳文を付けていなかった
- 婚姻証明書はあるが、新旧の氏名の同一性を示す書類がなかった
- 写真の撮影日が3か月以上前だった
- 住居地の変更を市区町村で済ませたつもりで、入管への氏名変更届出を忘れていた
特に順番の問題は根が深く、本国のパスポート更新に数週間から数か月かかる国もあります。14日の起算点は在留カードの記載事項に変更が生じた日ですので、パスポートの発給待ちで期限を超えそうな場合は、その旨を窓口で説明できるよう手続きの控えを保管しておいてください。
もうひとつ実務で頻繁に相談を受けるのが、在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請と時期が重なるパターンです。更新や変更が許可されれば新しい在留カードが交付されますから、氏名変更の届出も同時に処理してもらえないかと考える方が多いのですが、記載事項変更届出は独立した手続きであり、更新申請の中に吸収されるわけではありません。順序としては先に記載事項変更届出を済ませ、更新後の氏名で申請書を作成するのが混乱が少なくなります。
(申請書の氏名と在留カードの氏名、パスポートの氏名がバラバラの状態で更新申請を出すと、入管から確認の連絡が入って審査が止まります。急がば回れで、先に足元の届出を片付けてから申請に進むのが結局は早いです)
最後に
在留カードの記載事項変更届出は、氏名・生年月日・性別・国籍地域が変わったときに14日以内で行う手続きです。届出先は住居地を管轄する地方出入国在留管理局、手数料は無料、新しい在留カードは原則として即日交付されます。住居地の変更は市区町村窓口、転職は所属機関等に関する届出と、届出先と根拠が異なる制度が並んでいるため、自分に必要なのがどれなのかを正確に見極めることが重要です。届出を怠れば20万円以下の罰金の対象となり、将来の更新や永住申請にも影響します。
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